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翌朝、僕は昨日と同じ位置で目を覚ました。僕とヴァル少年、ベアには毛布がかかっていてとても温かかった。
子供達が僕らを起こしにくる。
『サチおねーちゃんがご飯だよって』
子供達におはようの挨拶をして、僕らは食堂に眠い目をこすりながら歩いていく。
『ほら、片付かないからさっさと食べてね』
『話しの途中で寝るなんて酷いわ、とっても酷いわハーン』
2人に急かされながら朝食をとる僕ら。そこにシスターが姿を見せる。
『ハーンさん、ベアさん、ヴァルさん本当にありがとうございました。おかげさまで子供達も酷いことをされずにすみました』
深々と頭を下げる姿になぜか僕らは席を立ち上がり頭を下げていた。
しばらくして顔を上げて顔を見合わせ笑いあう。
痛い、なぜかサチに腕をつねられる。
『そういえばシスターに相談があるんですけど』
僕は、ここの子供達みんなに防寒用の上着を買いたいことを伝えた。それと出来ればここに住まわせて欲しいと頼んだ。
サチは驚き、シスターは両手を組んで祈りだし、リーチェは腕を組みうんうんと嬉しそうに頷いた。ヴァル少年とベアは子供達に連れて行かれていた。
シスターの許可も出たので、みんなでぞろぞろと商業組合に向かう、子供達は久しぶりの外に大はしゃぎでヴァル少年とベアが上手く子供達を率いて街を歩く。
『そういえばサチ、女王がまた城づとめに戻って欲しいって言ってたけど』
サチは軽く驚いた後に難しい顔をして考え込んでしまう。
『それって、そうよね』
『そうだね、ある意味人質みたいなものだろうね』
さらに考え込むサチ、しばらくして僕をみる。
『私、またお城で働くわ、もうシスターやみんなを危ない目にあわせたくないもの』
そういって、少し寂しそうにうつむいた。
『僕は、一度前線に行かないといけないから、またしばらく一緒にいられない』
サチがそっと僕の腕に手を絡ませる。僕は何も言わずに身体を寄せる。
『いいわね、若いっていいわね、みんなで出かけているのに、うらやましくないわ、本当よ』
リーチェ…ちょっとそっとしておいて欲しいな今は…
気がつくとみんなの視線が僕らに集まっていた。気づくと商業組合についていたようだ…
『さあ、買い物行くぞ』僕は無理やり声を張り上げて商業組合にみんなを連れて乗り込んだ。
中に入るとマルクが飛ぶような勢いで現れる。
『ハーン様、ありがとうございます、鉱山での活躍、報告を聞いた私は涙が止まりませんでしたよ。さすがは私が見込んだ方。信じておりましたよ』
すごいテンションで感謝の言葉を浴びせてくるマルク。わけもわからず一緒にはしゃぐ小さな子供達とヴァル少年。
興奮するマルクを落ち着かせて今日の用件を話す。
『今日はここにいる全員に防寒用の上着が欲しいんだけど、お金は預けている分で足りるかな』
『それはそれは、お任せください。お金はかなりの金額をお預かりさせていただいてますので、十分すぎます』
マルクは周囲の者に声をかけ、それぞれの大きさを測り、商品の在庫等を手分けしてそろえてくれる。先ほどまでのマルクとは別人のようにさすが商売人と思わせる手際のよさ。
『サチも、シスターも好きなものを選んでくださいね』
2人は遠慮していたが、僕が是非にと進めると楽しそうに選び出した。
『ハーン、私達ももちろんいいわよね、いいに決まっているわ』
リーチェ達3人も服を選ぶみんなをうらやましそうに見ている。
『もちろん、3人とも何でも、服じゃなくても好きなもの選んでね。みんなを守ってくれたお礼だから遠慮はいらないから』
3人はマルクを捕まえて、あれやこれや注文をつけている。服限定だとベアがかわいそうだもんな…
みんなが色々選んでいる内に僕はある程度のお金を引き出してもらった。
最終的にはいくら使ったかわからないが、子供達は色とりどりの新しい服を着て走り回り、シスターとサチも控えめな色合いの温かそうな服を、リーチェはなぜか酒瓶とフリルをふんだんに使ったドレスを、ヴァル少年は体にあっていない大きな鎧を、ベアは体に綺麗な刺繍が施された絨毯を紐でくくりつけていた。
帰りにみんなでたくさんの食材を買いだして孤児院に意気揚々と戻っていった。
帰り道で僕はベアの独り言を聞いてしまった…
『これでわしも空飛ぶ絨毯じゃ』
喜んでくれたようでよかったよ…




