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バロンの反対側に座り、酒を頼み、杯をこちらに向けて。
『今夜の出会いに乾杯』
ラスクは一気に杯を飲み干し、次の酒をマスターに頼む。
『流れの傭兵か、ずいぶんと腕が立つようだが』
『おっと、そう警戒しなさんなよ団長さん。腕には自信があるのは認めるがね』
バロンはラスクの腕前を見抜き警戒を強めているようだ。ラスクは持ち前の陽気さを隠しもせずバロン相手に堂々と対応していた。
『流れ者がなぜ私を騎士団長と知っている』
『傭兵を馬鹿にしていないかい団長さん、もし戦争になって雇われたとすれば、その国の軍の重要人物くらい確認するだろ』
『まあいい、私のことはバロンでいい、街の酒場で団長、団長と呼ばれるのもかなわんからな』
『じゃあ、遠慮なくバロンと呼ばせてもらうことにしよう。俺はラスク、そう呼んでくれ』
バロンはラスクに対して警戒は解かずに接するようだ。
『まあ、バロンもそんなに警戒しなくてもいいんじゃないか』
『そうだぜ、バロンここは酒場だ、楽しく飲む。これが大事じゃないか』
『悪いなハーン、私はどうにも奴が好きになれないようだ。先に失礼する』
『わかったよバロン、ここからは歩いて帰るから。また、一緒に飲もう』
バロンはそう言うとマスターと少し話してさっさと出て行った。
『ハーン、俺なんか悪いこと言ったか』
全然気にもしていない様子で新しい酒を飲み干すラスク。
『バロンがあそこまで警戒するのは珍しいと思うんだけどな』
『そういや、そろそろ戦争が始まる。ハーンはどうするんだ』
ラスクはいつもの軽い感じで聞いてくる。
『どうしようかな、色々考えさせられることが多くて、正直わかんないよ』
ふーんと言いながらまた杯を空にする。強いなラスク…
『そういうラスクはどうするんだよ』何気なく僕が聞くと。
『傭兵は命がけなんだからそこんとこは秘密だぜ』
口元に人差し指を立てて片目をつぶりながら言う。じゃあ僕にも聞くなよって思ったけど、まあいいや。僕はラスクにそろそろ帰るよといってマスターにお金を払おうとすると。
『バロン様から御代はいただいてる、そちらのお客様の分もね』とマスターが言った。
『ハーン、バロンに会ったらご馳走様と伝えておいてくれ』
ラスクはただ酒だと再度杯を空けて次を注文していた。ラスクにじゃあと手を振り酒場を後にする。
夜風が気持ちいいな、少しふらふらするけどたまにはいいなこんなのもいいな…
と思っていた時期がありました。
今僕は、床に正座して、サチとリーチェにお説教をされている…どうしてこうなった…
『ハーン、ベアとヴァルから聞いたわ、なにかっこいい感じで再会とかやってるのかしら、悲しいわ、私は悲しいわよ。一人シスターについてその身を守っていた私をほかって置いて』
『ハーン、また私に何も言わないで城に乗り込んでいくなんて、どれだけ心配したと思ってるのよ、シスターは帰ってきたけど待てど暮らせどあなたは帰ってこないし、なのにお酒飲んで帰ってくるなんて、信じられない』
2人肩越しにピクリとも動かないヴァル少年とベアが倒れている。2人とももうすぐ僕もそちらに行くよ…
『『ちゃんと聞いているの』』
この2人、気が合うのかな…そう思いながら僕は意識を手放した…




