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実は…エリオットは言いにくそうに事情を話しだした。
時間は僕が鉱山に向かったところまでさかのぼる、バロンから報告を受けた女王は静かにしかし冷たい表情だったそうだ、その辺りはバロンから聞いた話らしいけど。
その時点では戦争の開始の話しは出ていなかったことと、戦争用に鉱石が必要であったことがあったためまだ良かったらしい、その後戦争の話が具体性を帯びてきたこと、サチが城づとめを止めたことで事情が一変、僕がそのまま帰ってこない可能性を考えたのか女王は孤児院に兵士を送り監視を始めたそうだ、それから中々戻らないことに焦ったのか、シスターを捕まえ僕と仲の良かったサチに戻るようにと命令を受けてきたそうだ。
『馬鹿なことを…何でも思い通りになると思っているんだな女王は…』
確かにサチの動揺も頷ける。どうしたものか、どうせ戻るつもりではあったけど…
『ハーン、どうしよう私のせいで、シスターが…みんなが…』
『サチ、帰ろう。ブラド達に事情を話してすぐ帰ろう』
サチは動揺しながらも力なく頷いた、女王め…
僕は手を握り締め怒りをかみ殺した。
『エリオット、悪いけどバロンに伝言を頼む』
僕はバロンからシスターの解放を条件に僕は戻ると伝えてくれと頼む。
『わかりました、団長に必ず伝えてそのように掛け合ってもらいます』
エリオットは鉱山の様子だけ見たらすぐ戻りますといって馬に乗って颯爽と去っていった。
『私のせいで、みんなに、それにハーンに迷惑を…私のわがままで…』
激しく落ち込むサチをガルツさんの家に入れてサポさんとカミラに頼んで僕はガルツさんと話を始めた。
『ハーンさん、とにかくブラド達が戻ったらみんなで話しをしましょう、あいつらもきっとわかってくれる』
確かに、一度に話しをしたほうが間違いないだろうと思った僕はブラド達の帰りを待った。
ブラド達が戻り、昨日の宴会のようにみんな集まったところで僕は事情を話した。
『女王蟻を倒したとなると、鉱山の中の蟻達がいなくなるのも時間の問題だな』
『ハーン、急いで帰ってやれよ、サチさんも心配だろうし、俺達はもう大丈夫だからな、な親父』
実質みんなのリーダーのガルツさんとブラドがそう言うと他のみんなも賛成のようだ。
『ハーン、サチ、いっちゃうの』
カミラだけは寂しそうに僕らに声をかけてくる。
『カミラ、サチさんの家族が大変なのよ、カミラだって私達が捕まってしまったりしたらどう思うかしら』
カミラは嫌々と首を振ってサチにしがみつき、心配そうに顔をみる。
『大丈夫、ハーンがいるからなんとかしてくれるわ、ハーンは強いもの、私が言うんだから間違いないわ』
サチはカミラを抱きしめ頭を優しく撫でて『そうね』といった。
『みなさん、ありがとうございました。僕らは明日朝にはこの町を出ようと思います。本当にありがとうございました』
みんなに深々と頭を下げる。
『礼を言うのはこちらです。ハーンさん頭を上げてください』
『ハーン、俺達仲間だろ。そういうのはいらねーんだよ』
ブラドはこちらを向かずにそういった、少し肩が震えているのが印象的だった。
『今日は、ハーン達のために夕食は豪華にみんなで騒ごうぜ、お前ら買出しだ行くぜ』
こちらを向かないまま鉱山隊を引き連れて外へ出て行った。
楽しい夜はあっという間に過ぎ去り、朝が来る…




