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巨大な女王蟻は大きな体を少しづつ進めながら近づいてくる。動きは遅いな…
『格好の的だ』僕は女王蟻めがけ炎弾を叩きつけようとする、しかしそれは女王蟻には届かなかった…
他の蟻が自らの体を盾にして僕の攻撃から守っている、女王の前には火のついた蟻がもがいている、自分の身を守った蟻達をなぎ払いながら徐々に距離をつめていくる女王蟻。
その姿にブラド達も思うところがあるようだ、このままでは埒があかない…
『ブラド、僕は女王蟻に近づく。取り巻きがこっちにくるかもしれないけど大丈夫か』
『ハーン、俺達のことは気にすんな。自分達の面倒くらい自分でみるぜ。行け』
短期決戦だ、真っ直ぐに女王蟻に向かっていく…他の蟻には目もくれず突き進む。
女王蟻の目の前に飛び込む、体だを屈め一気に力を放出する針玉のようになった僕の周りの蟻は串刺し、女王の腹にも数本の針が刺さる。
耳がおかしくなるほどの叫び声、頭がくらくらする…
後ろでは数匹の蟻がブラド達を威嚇しながら距離を詰めている、時間が無い…
これ以上蟻を集められると面倒だな。
女王蟻の大きな足と顎をかわしながら、喉もとに左手を添えて力を解放する。さすがに大きいな、突き抜けない…でも喉は潰した。
女王蟻は叫ぼうとするが喉からは空気が漏れるばかり…着地と同時に両手をその大きな腹に添える…
『樹呪、寄生式、借り宿展開、突、解』
両手の中に種を作り出しその種からすごい勢いで根が女王蟻の腹を貫き枝葉が体を支配していく。地面にくくりつけられた女王蟻は静かにその動きを止め。貫いた植物には真っ赤な花が一輪咲きやがてそれも砂に返っていった…
ブラド達に迫っていた蟻もいつの間にか姿を消し、若干の負傷はあったがみんな無事の様子だ。
ブラド達がこちらに走ってくる。僕はブラド達に片手を上げてお互いの無事を喜び合おうとした。そんな僕の横を通り過ぎていくブラド達…
『お前ら、女王様にご挨拶だ。丁重に扱えよ』
僕を1人置いてきぼりにしてみんなは女王蟻の解体に夢中だ…ちょっと酷くないか…
呆然としているとブラドから声がかかる。
『ハーンなにぼさっとしてんだ。上のほうがとどかねーだろ、何とかしてくれ、時間がねーんだろ』
釈然としない気持ちが僕を支配するが時間が無いといったのは僕なので仕方がない。あっという間に金になりそうな上質の鉱石と女王蟻の素材をしっかりと手に入れて満足気な様子のブラド達。親の敵ともいえる相手だけに容赦ない剥ぎ取りだった。
帰り道には数匹の蟻がいたが問題なく沈め入り口まで戻ってくる。そこにはミヤやランさん達マリネットの面々が蟻を片付け終わっているところだった。
『おお、ハーン生きとったん、無事で何よりや』自慢の愛刀を磨きながら声をかけてくる。
『ハーンさん、ちょっといいでしょうか』ランさんが笑顔で近づいてくるので、僕はブラドに後のことを頼むといって逃げた。
僕は家で待ってるサチの元に急ぐ、家の前にはサチともう1人見覚えのある人物が立っていた。
『エリオットじゃないか。いったいどうしたんだこんなところで』僕が声をかけるがエリオットもサチも表情が硬い。サチも動揺しているようだ。
『ハーンさん、実は…』エリオットは言いにくそうに僕に事情を説明してくれた。
今まで小競り合いであった南の国との戦争が本格的に始まっていく様子になってきたこと、そんな時に女王蟻の騒ぎで団長は動けない為自分がこちらに様子を見に来たこと、それに加えて女王陛下よりハーンを連れ戻すようにと指示が出ていること。
『エリオット、女王蟻はもう俺達で倒したからあとは残りの蟻を掃除するだけだよ』
『女王蟻の件はそれでいいんですが…問題はハーンさんのことです』
『どういうことだよ』暗い表情のままのサチとエリオットに僕は再度聞き返した。




