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結局話し合いはお互いの主張が噛み合わないまま進み、町に蟻を出すわけにはいかないという一点のみが総意であった。
『では、今日のところは入り口付近に押し寄せている蟻を全員で撃退、鉱石等の稼ぎは分配と言うところでよろしいですかね皆さん』
ランさんの提案にほとんどの傭兵団は乗るようだ、僕はどうするかな。
『私は、マルク様に報告の早馬を出して騎士団に相談してもらうことにします、では失礼』
ペーターはそう言うと報告書を書き出した。
『ハーンさん、あなたはどうします。一緒に町のためにやっていただけますか』
嫌らしいな、町のためとか言われたら断りづらいじゃないか。力は隠しておきたいのに…
『ちょっとリーダーと相談してきますよ』
あら、あなたがリーダーじゃないのですねと驚いたような振りで僕を見る。
ブラドを呼び、2人で分配や配置を相談している場に戻る。傭兵たちから失笑が漏れる。
人数の多い傭兵団は人数に対して分配をするよう主張する、少数精鋭でやっているところは戦果で決めるべきだと主張する。
緊急事態じゃなかったのか、揉めてる時間あるのかな。さすがのランさんも正反対の主張に取りまとめできないでいるようだ。めんどくさい…
『ごちゃごちゃうるせいな、これだから大人はめんどくせいんだよ』ブラドが大声で言い放つ。
今までお互いの主張をぶつけて揉めていた者たちの矛先が一気に僕達に向う。
『うるせー、俺はこの町の人間だ。よそ者がごちゃごちゃうるせぇんだよ』
ブラド…よく考えれば俺もよそ者だけどな、とか思ったけど。
かっこいいこといってくれる…俺もたまにはこんな風にしてみるか…
『うちのリーダーがこう言っているので、今回の入り口掃除は俺達だけでやらせてもらいますよ。いつまでもそこで揉めていてください…その間に終わりますから』
その場の全員が固まる。おいおい、なんでブラドまで固まってるんだよ。
いち早く我に返ったランさんが珍しく厳しい表情で僕に向ってくる。
『ハーンさん、冗談ではすみませんよ。現在の入り口付近は50匹程度の蟻がいる状態です、
まだ外に出ていないとはいえバリケードを組んで警戒しているのですよ、それをあなたと子供だけでやると』
『ランさん、僕の力、気になっているのでしょう…蟻撃退に巻き込んで見ようとしたんじゃないですか。無言は図星でいいですか…勝手に見ればどうです。他の皆さんもよければどうぞ。皆さんの言う子供鉱山隊の実力をね』
ブラドを突き僕は外に出る。
『みんなに説明よろしく』
『俺が言うのかよ』
『ブラドがあいつらにかっこいいこと言うからこうなったんじゃないか』
『俺のせいにする気かよ、ハーンずるいぜ』
そういいながらも僕らは笑いあった。
ブラドはみんなに大量の蟻が来ていること、町に出ると危ないこと、傭兵達がごちゃごちゃ言っていたから言ってやったこと…そして最後に。
『稼ぎ時だ、ガンガン稼いで、今日はサチさんの料理をたっぷりいただくぜ。俺達の力を見せてやろうぜ、行くぞ』
みんなの気持ちは最高潮、町のため、飯の為、ブラドを中心に気合を入れて入り口を目指す。
僕は鉱山組合の場所によって、例の粉を大袋で買った。
バリケード越しに入り口を見るとうっすら明るい部分にも蟻が見えている。明るいところは苦手なのかそれでも目視できるだけで結構な数だな、50匹ばかりじゃないと思うぞ、さらに増えたのかな。
さすがに暗がりにうごめく蟻を目の前にしてブラド達も若干戸惑っているようだ。
観客も揃ったみたいだし、行くか…
僕はブラドに耳打ちして全身に力を強く巡ら柵を越えた。
僕の背後でブラド達の気合の入った声を聞きながら、つぶやく…
『狩りの時間だ…』




