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うーん、眠い…眠すぎる…
眠い目をこすりながら、すでに勝手知ったる家の中をぼーっと歩く。
鼻をくすぐるいい香りに誘われながら、みんなのところに行くとサチとサポさんが朝食を用意してみんなが席についていた。
『ハーン、おそいよ。お姉ちゃん料理上手なの、とってもおいしそうなんだから』
カミラの機嫌は上々、昨日の今日なのにサチに慣れるの早いな…
サチの料理か…久しぶりだな…
『なんかとっても嬉しそうねハーン』カミラが僕の顔を覗き込みながら言う。
『サチの料理が食べれるからね』何気なくカミラに言う。
『もう、もう何言ってんのよハーン、みんなの前で、もう』なぜか激しく動揺するサチ…
ガルツさんとサポさんは微笑ましいものを見る目で、ブラドは既に食べだしていて気にしていない、カミラは両手で顔を隠してキャーキャー言っている。
僕はとりあえずブラドの隣でご飯を食べだす。うんうん、この味落ち着くな。
『サポさんの料理もおいしいけど、サチの味がしっくりくるな、おいしいよ』
サチは顔を真っ赤にして動きを止めている。
あっという間に食べきり、ブラドに向って『今日も稼ぎに行くか』と言うと、『おうよ』と返ってくる。
『カミラ、絶対付いて来るなよ』ブラドはしっかりと釘を刺し。
『サチ、行ってくるよ。カミラの相手よろしくね』と頼んで家を出た。
なんか、カミラが怒っている様子だったが、サチがいれば大丈夫だろう。
『昨日は大変だったけど、お前達今日も稼ぐぜ』ブラドの掛け声にみんな大声で返事をする。昨日の件で怖がっている者は1人もいなかった。蟻とのやり取りでみんな肝が据わったようだ、これも成長か…
意気揚々を鉱山を目指す僕らの話題はサチのことだった。
『結局どういう関係なんだよ』ブラドが代表して僕に聞いてくる。
僕はサチとの出会いのことなどを話しだした、みんな興味心身でいつもより歩みが遅い。
ブラドが今朝の朝食の話をするもんだからみんな食べてみたいと大騒ぎだ。
『だいぶ荒稼ぎしてるからな、親父に言ってパーッと飲み食いしようぜ、その為にもお前らわかってんな、今日も気合入れていくぜ』
みんなの士気を激しく上昇させているブラド、もう立派なリーダーだな。
そろそろ入り口に着くなと思っていると、なにやら入り口が騒がしい…
『ハーンさん大変なんです、とりあえずこっちへ来てください、早く早く』
ペーターが僕をぐいぐい引っ張る。ブラドにちょっと行ってくるといって商業組合のスペースに向う。
そこには現在鉱山で稼いでいる傭兵団の代表らしき者たちが集まっていた。
『あら、ハーンさん待ってたんですよ』ランさんがいつもどおりの微笑で声をかけてくる。
僕はあまり他の傭兵と係わり無くやってきたので誰が誰だかわからないがほぼ全員が僕を見ている…
昨日の男たちのことか…僕は表情に出ないようにと思っていると
『確か、お前は13番坑道辺りで狩りをしていたな』誰だったっけ、一緒の馬車で来た人だったかな。
『そうだけど、それがなにか』なんでもないように答える。
『それがハーンさん今日の朝方になって13番坑道の奥から結構な数の蟻が出てきていて、今緊急事態と言うことで入り口付近で柵を作って警戒している状態なんですよ、急なことでこれからどうなるのか…とりあえず蟻を外に出すわけには行かないので』
『ハーンさんあの辺りを狩場にしていたあなたなら原因に心当たりがあるのではないかと思って』
ランさんが微笑みながら聞いてくる。本当に読めないなこの人…
どうでるか…原因は間違いなく13番の奥の岩盤を打ち抜いたことだろうな、もし蟻が町に出たら大惨事…やりすぎたな…
黙っている僕にランさんは重ねてくる。
『どうやら、心当たりがあるようですね』表情は変えないが逃がさないという感じだ。下手に誤魔化すのは得策じゃないな。
僕は自分に都合の悪い部分を避けて知っていることを話すと言った。
『最近、僕らの稼ぎが多いのはみなさん知っていると思いますが、僕らは13番坑道から蟻の巣穴へ続く道を見つけ乗り込んでいっています』
周囲から驚きの声が上がる。ランさん以外はそんな方法があったかとざわざわしている。
『そこまで長い道ではないので13番坑道の比較的近い場所に蟻の巣が出来ていたのではないかと思います。昨日引き返すときに坑道の奥から蟻が数匹出てきました』
みんなざわつきも納まり僕に続きを促すように見つめてくる。
『13番坑道の奥と巣が繋がり、そこまで蟻が出てくるとなると、蟻にとって大事なものがその辺りにあるのではないかと』
鉱山組合の職員が鉱山の簡単な見取り図を取り出して確認する。
『たしかに、今まで蟻が多かった8番坑道は13番の上辺りだ。13番までは道は短いが深さがある、その予想は当たっているかもしれない、でも13番の奥はかなり固い岩盤だったはずだがな』
『女王ですかね…』ランさんの言葉に一同黙ってしまった。




