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背中にどんと重みがかかる。
振り返るとそこには懐かしい顔があった。
『ハーン、会いたかった』
僕と目が合ったサチはその瞳を潤ませて抱きついてきた、そっと背中に手を回し抱きしめる…
『サチ…』僕は何か言おうとするが言葉が出てこない…
しばらく言葉も無く抱きしめあう。
カミラが痺れを切らしたのか僕らの間に割って入ってくる。
『ハーン、こちらのお姉さんは誰なの』
家に帰りながら僕はサチのことを話しながら、そしてサチにもカミラ達のことを紹介した。
ガルツさんとサポさんはサチのことも温かく迎え入れてくれた、帰り道に気があったのかカミラもお姉ちゃんは私の部屋に止めてあげると嬉しそうだ。
食事が終わり、ガルツさんたちは気を利かせて僕らを2人きりにしてくれた。
『ハーン、私お城務めを止めてきたの』
僕は驚きながら事情を聞く。
『シスターは孤児院の子供たちのことは何とかするからあなたの思うようにしなさいって』
それから、バロンさんを頼って、マルクと知り合い鉱山行きの馬車に乗せてもらったとのこと、どこに行けばいいのかわからなかったので商業組合の人と一緒に鉱山の入り口で待っていたそうだ。
『無茶なことを…』僕は嬉しい反面サチの行動に少し呆れていた。
僕はちゃんと説明できなかったことを謝り、それでもあの街に戻るつもりでいたことを話した、サチはそれでももう会えなくなるんじゃないかと不安で不安でしょうがなかったと涙をこぼした。
しばらく2人の間に沈黙が続く…
『お姉ちゃん、ハーンに泣かされたの』覗いていたのかカミラがそろーっと現れる。
サチを心配そうに見るカミラ。
サチはそんなこと無いよといいながらカミラを笑顔で抱きしめる。
『ハーン一緒に帰ってくれる』サチの問いにカミラは驚きいやいやと身体を震わせた。
そんな2人を見ながら僕はサチに向っていった。
『今はまだ帰れない…』
カミラは喜び、サチは不安そうな顔をした。
サチの様子を見て、カミラは『お姉ちゃんもここに住めばいいよ』という。
『ありがとうねカミラちゃん』
カミラがあくびをしているのをみて、サチはまた明日ねといってカミラと部屋に戻っていった。
しばらく1人で座っているとガルツさんとサポさんが部屋から出てくる、サポさんがお茶を入れてくれる。
『ハーンさん、もし私たちのことが原因なら気にしないでください』
ガルツさんは僕にゆっくりとした口調で話しかけてくる。
僕は首を横に振り、黙ってしまう。
『あの娘さんいい子ね。あなたは幸せだわ。あんなに思われて』
サポさんは笑顔でそう言ってくれる。大事にしてあげないとね、だって。
僕は2人におやすみなさいといってブラドの部屋に戻った。
横になるとブラドが声をかけてくる。
『なあ、ハーンどっか行っちゃうのか』
『まだ行かないよ、僕にはこの町でやり残したことがある、まだどこにも行けない』
『そっか、おやすみ』
僕はその夜なかなか眠ることが出来なかった。
1人、これからのことを思う僕は明け方にある決意をした。左手に力を込めて明るくなってきた空を眺めた。




