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男達は行動の奥から来る足音に気を取られている…
『ブラド、カミラを、みんなを頼む』
縛られたまま僕は周囲に激しい風を巻き起こしブラドと僕の縄をかき切る、魔法の調整がこんなところで役に立つとはな…
カミラを捕まえている男に近づき刃物を持っている腕ごと鉤爪で引き裂く…
ブラドにカミラを放り投げブラドはしっかりと受け止めてくれた。他の子供たちに刃物を向けていた男達へも空気の塊をぶつけて吹き飛ばす…
『ブラド、先に行け』ブラドは心得ているとばかりにみんなを連れて出口に向っていった。
鉱石を持たされてて良かったな、とか思っていると。
吹き飛ばされた男達が腕を引き裂かれた男を連れて逃げようとしているところだった。
『どこに行こうとしている…』僕は再度空気の塊を男達にぶつけ坑道のさらに奥へと弾き飛ばす…
男達はそれぞれ壁に激しく叩きつけられうめき声をもらしている…
足音がだいぶ大きくなってきたな。
散らばった男達を蹴り飛ばしながら足音のするほうへまとめていく。
『助けてくれ、もう、もうあんたには関らないから、頼む助けてくれ』
男達は泣き叫び近づく足音と僕に恐れ、がたがた震えながら懇願してくる。
『僕は一度言ったはずだ…子供に刃物を突きつけるような奴は殺す価値も無い』
その言葉に殺されないと思ったのか少しほっとする男達。
その顔を確認した僕は続けていう。
『僕は殺さない…そう僕はね』
何か言っている男達を無視して、坑道の奥を見据える…
僕は両手に激しく燃え盛る炎の槍を作り出す、姿が見えるところまで来た蟻を貫き、刻む…
男達は僕が蟻から助けたと思ったのか足元にすがり付いて口々にお礼を言ってくる。それを蹴って引き剥がし、次の蟻も焼き、刻む…
周囲には蟻が焼ける臭いが充満していた…頃合かな…
僕は手の槍を消し、左手を坑道の奥へ向ける…
『炎陣、収束、2門展開…旋回9式…解』
僕の掌から丸太のような大きさの炎が渦を巻きながら暗闇の中を飛んで行く。坑道の壁には結構な数の蟻が張り付いているのが見える。かなり先の岩壁が崩れる音がして炎は見えなくなった。
僕の左目には崩れた壁の向こうに見える無数の赤い光を確認した、僕は満足気に微笑み近くの死骸から魂を吸収しながら出口に向う。
男達は身体が痛いのかなかなか動けずに這いつくばっていた、何か言っているが僕は何も聞かずに進みだす。
僕は振り返り。
『その辺の蟻の鉱石はあげるよ。生きていられたらね』
13番坑道から出る頃、後ろから男達の悲鳴と叫び声が聞こえ、すぐに静かになった…
鉱山の入り口に着くと、カミラが僕に飛びついてきた。
『大丈夫だったかな、カミラ』僕は優しく髪を撫でる。
どうやらどうしても僕達に着いてきたくて、こっそりあとを付けてきたところ同じように僕らの後を付けてきた男に見つかってしまったらしい、よくみると首筋に刃物を当てられた跡がついていた。
僕は手に力を込め魔法を当ててみる、跡は綺麗に無くなった。
しかし、僕はガクッと両膝をついてしまうくらいの倦怠感に襲われた。小さな傷を治すだけでもかなりの負担があるようだ。
『ハーン大丈夫か』
ブラドが水を持ってきてくれる。僕は水を飲み一息つくと大丈夫と答えた。
安心したようなカミラが僕にまた抱きついてこようとするがブラドにつかまった。
『帰ったら親父とお袋にたっぷり叱ってもらうからな、覚悟しとけよ』
カミラは真っ青な顔をして落ち込んでしまった。
そんなカミラをみながら僕達はお互いの無事を喜びあい、笑いあった。
そんな僕に迫る人影に気づきもしないで…




