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その場は解散になり、僕は女性に頭をわしわし撫でられながら連れて行かれる。
『うちの相方紹介するわ坊ちゃん』豪快に笑いながら僕の頭から手を離さない。
『僕はハーンという名前があるのですけど』
『あんたの自己紹介はあとあと、まあうちらから名乗るわ』
僕の頭はもう鳥が巣を作れるくらいくしゃくしゃだ…
『うちはミヤルクス、ミヤでええよ。こっちが相方の』
『ラングレィと申します。ランとお呼びください』
『ハーンといいます、よろしくお願いします』
穏やかなランさんはミヤが色々失礼をと謝ってくれた。それに対してミヤは見たまんまいっただけで悪くないと大げさに主張した。
大げさな身振り手振りを加えて主張するミヤに対してランは主張を一つ一つ丁寧にかつ穏やかに潰していった。しばらく僕は1人取り残されたようにやり取りを見つめていた…
『ハーン、すまんかった』
最終的にランにしっかり説得された結果、ミヤは僕に謝るしかない立場に追い込まれたようだ。
『混ぜてもらえただけでありがたいので気にしないでください』
ランを見るミヤ…
ランは小さくうなづいてお互いの自己紹介は終了となった。
『そういや、ハーンは近接系か、立派な鉤爪つけて、高そうやなそれ』
『僕はこれと、魔法が使える』
と自分の鉤爪を見せながら答える。ほぉ~と2人から驚きの声が漏れる。
『こりゃ、意外といいひろいもんしたかな』とミヤ。
『失礼よ』とラン。
『うちの獲物はこの剣や』ミヤは腰の剣をさすりながら教えてくれる。
私は…とランさんは馬車の中からかなり重そうな金槌を取り出した。
『この子が私の武具になります』ランは軽々と大金槌を僕の前で振ってみせた。
ミヤは自分達の戦闘スタイルを説明してくれた、ランさんが大金槌で前に立ち、防御と攻撃を行い、ミヤは遊撃に入り数を減らしていくスタイルのようだ。
僕も遊撃で問題ないのではとランさんがいう、ミヤは少し考えた素振りをして僕に話しかける。
『ちょっと付き合ってもらおか』腰の長剣をすっと抜きこちらに向ける…思ったより細くて長いな…
ランさんが止めないってことは僕の腕前を確認したいのだろうな。僕は前かがみになり構えでそれに答える。
『面白そうやんか、ただの坊ちゃんじゃないみたいやね』
初動がぶれるほどの速さで繰り出されるミヤの突き、あの長さの剣を上手く使う…
僕は両手を使って剣を逸らしていく、ミヤは楽しそうにしているから本気じゃないな…
『魔法使ってもええよ』自分の間合いに入らせてもらえない僕にミヤがいう。
『私も見たいですわあなたの魔法』ランさんもにこにこしながら声をかけてくる。
『じゃあ、遠慮なく…』
正面に透明の玉を3つ発動する、ミヤの剣がそれを貫いた瞬間、強い風が起こる長い剣は外に弾かれその隙に僕は懐に滑り込む…
結果、鉤爪はミヤに届くことはなかった。
弾かれた剣の勢いを使いミヤは一回転しながら横なぎに剣を振るい、僕は右手の篭手で受け流す為十分に踏み込めなかった。
拍手をしながらランさんが『すばらしかったです』と近づいてきたことでこの手合わせは終わりを告げた。
『ハーン、坊ちゃん扱いすまんかったな、やるやないか、まだ本気じゃないやろ』
うちもやけどとミヤがまた僕の頭をくしゃくしゃにしながら頭を撫でる。
『ミヤさんとここまで渡り合えるなら文句なしですね』
『それはどうも、足引っ張る可能性はないと思ってもらえれば十分ですよ』
ここに即席チームが誕生した。




