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『ハーン街が見えてきたぞ』アルさんが寝ている僕に声をかけてくれる…
城まで戻り、みんなは何もなかったように今日も酒場に集合だと言って帰っていった。
しばらくしてバロンが現れる。
『疲れているだろうが、女王陛下がお呼びだ』
無言でバロンと共に女王の下へ向おうとする僕の後ろでアルさん達が絶対来いよと口々に声をかけてくれる。後ろを振り向かずに片手を上げて声にこたえる。
バロンは僕に気をつかってか一言も発しないまま横を歩いてくれる。
女王の間の前にはファミングの奴が不機嫌に待ち構えていた。
『ハーン殿早いお帰りで、なにがあったか女王陛下の前でお聞かせ願おう』
3人で女王の前に進み出る。
『ハーン、早い帰りじゃが成果はどうであった』
頭を下げるより早く女王は声をかけてくる。僕は首飾りを取り出し、遺跡での出来事を話した。
『これだけとは、本当に調査されたのですか』ファミングは僕の首飾りを取り上げようとする。
突然火花が散り、ファミングの奴は吹き飛ばされた…
ざわめく周囲、ファミングが何か騒いでいるが僕に聞かれても困る…
気がつくと目の前にはリーチェ、ベア、ヴァル少年が僕に頭を下げた形で現れた。
『ハーン、何をした、何者だその者たちは』ん、ファミングにも見えている…
動揺する僕。
『説明せよ、ハーンこれはいったい』
リーチェ達は女王へ向き直り。
『あなたはこの国の女王かしら、始めましてリーチェと申します』
『ベアと申します』
『ヴァルと申します』
3人は丁寧にしかし頭を下げずに挨拶をした。
ファミングが女王陛下に対してなんという態度と腹を立て、一番近いヴァル少年につかみかかろうとする…しかしその手はヴァル少年に届くことはなく、目にも映らない速さでファミングを地面に這いつくばらせた…
『女王…我々はこのハーン様を主とすることにしました、この首飾りはその証…あの遺跡の封印を解いたもののみ、その資格があります』
僕の理解が追いつくまもなく、話は進んでいく。
『我々はハーン様と共にあるもの、ご承知ください』ベアがリーチェに続く。
『ふむ、封印されていたものか…その力を私のために使うことは無いと…』
『理解が早くて助かります』ファミングを踏みつけながらヴァル少年が女王に言う。
『理解した、しかしどれほどの力を持つのか、気になるのじゃが、ハーンよ見せてもらえないか』
『ハーン様、女王はお疑いのようですね、我々の、そしてハーン様の力を』
リーチェは妖艶な笑みを浮かべ、僕のそばに寄ってくる。
『ハーン、いい機会だわ見せ付けてやりましょう』そっと耳打ちしてくるリーチェ、短い相談をして僕は頷いた。
『女王陛下、わかりました。この3人の力を、そして僕の力をお見せしましょう』
リーチェに言われたとおりの台詞を告げ、魔法に強い頑丈な的を用意してもらうことにした。
女王はファミングに指示を出し。ファミングは僕を睨みつけながら準備の為、退室した。
しばらくして、兵士が準備完了の知らせを届けに着た、みんなで城の広間に移動する。
女王が見守る中、広間には黒い鉄で覆われた大きな馬車とファミング率いる魔法兵団が待っていた。
『あいつめ、これを持ち出すとは…正気か…』
隣のバロンが僕に耳打ちする。
『あれは、女王や魔法兵団が戦場で魔法を防ぐ為の馬車だ、黒鉄による魔法防御に加えて、魔力を込めることで更に強度を増す…魔法兵団の奥の手だ』
厄介なものを引っ張り出してきおって、とバロンが愚痴をこぼす。
『女王、あんなおもちゃでよろしいのですか』
リーチェは楽しそうに笑いながら言う。
女王は顔色一つ変えずに、ファミングは顔を真っ赤にして部下に魔力を込めるように怒鳴る。
馬車は黒色から、濃い緑に色を変え淡く光り始める。
『では、お見せしましょう。ね、ハーン様』
リーチェは僕の頭の上に浮かんで周囲に宣言した。




