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森は暗さを増し、辺りは音が死んだように静かで僕も周囲を警戒しながら必死に薬草を探す。
思ったより薬草は無いみたいだ、時間は進み、気持ちは焦る、どうしようこのままじゃ足りない。
もう嫌だなんで僕ばかり、僕ばかりがこんな目に合うんだ僕が何をした、何か悪いことをしたか。みんなにバカにされ、殴られ蹴られ、それでもこの小さな体で村のために森に入って薬草集めて、僕は僕のできることを必死にやっているのに、この量じゃまた殴られる。
頭を抱える僕は、ハッと気づき辺りを見回す。
『もういいや、僕もこれで楽になれる』 返事などあるはずもないのにつぶやく。
気が付けば、音もなく近づいた獣の群れに囲まれていた。森の深くまで入りすぎたみたいだ。
最後の最後まで奪われる人生だったな、僕に力があれば、力があればこんな思いもしなくて済んだのに、嫌だ、嫌だ死にたくない、死にたくない、力があれば力さえあれば。
『チカラガホシイカ、チイサキモノヨ』
顔を上げると黒い板が浮いていた。
『チカラヲ』 黒い板からの声が終わると僕の体が真っ赤に染まる、状況が整理できないままに辺りを見回す。
僕を囲んでいたはずの獣たちは刻まれ、僕は真っ赤な水たまりに一人立っていた。
なんだ、なんなんだ怖くなってあわてて走り出す。ただひたすら走る、どこをどう走ったのかは覚えていない、自分の小屋の扉を開けたところで僕は意識を手放した。
どれくらい眠っていたのだろう、僕の眠りは扉を蹴破る音と共に終わりをつげた。
『きさま、薬草はどうした』 村長が僕を蹴りながら怒鳴りつける。
もう、ほっといてくれ、頭も痛いし、全身が悲鳴をあげてるのに、これ以上僕に痛みを与えないでくれ、お願いだから眠らせてくれ・・・
反応しない僕に怒り心頭の村長は一緒に連れてきた兵士と僕を村の広間に引きずり出した。雪の残る広場で頭から水をかけられる。
みんなが何か言っている・・・痛みも感じない・・・なんで・・・なんでこうなった・・・
気が付くと目の前には森で出会った少女と少年、それに黒い板がいた。それぞれが前振りもなく話し出す。
『あなた、死にたいの』
『ただ、消し去ればいい』
『チカラヲツカエ、オノレノタメニ』
痛い。時が動き出したように突然戻る感覚。痛い、痛い、もうやめてくれ。
心臓が強く、強く鼓動する、胸が張り裂けそうだ、苦しい。僕はうめき声のような雄叫びをあげた。
周囲の人間は突然のことに驚き、僕から離れた・・・
『あははははははは』
僕は今、この瞬間に生まれた。僕が僕であるために。




