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日の暮れた森の中はまるで真夜中のような暗さ…左目が無かったら進むことも出来ないな。
『ハーン、本当に考えなんてあるの。うそつきね、うそつきはだめよ』
気づけば、リーチェが僕と並んで走っている。
『アルさん達を危ない目にあわせる訳にはいかないから…』
『あまいのー、どの道戦場に立てば死は隣り合わせじゃのに』
ベアも隣を飛んでいる。
『まあ、足手まといは、いねーほうがバーンってやってドーンとできるってことだろ』
ヴァル少年が木の上を飛び移っている。
『遺跡はこっちよ』といってリーチェ達は迷わず森の奥へ僕を先導していく。
森の切れ間に3人が立っている。私達はここからは入れないといい、頑張ってねといって消えていった。
目の前には月明かりに浮かび上がる青白い遺跡が、その遺跡の前には目を光らせた二足歩行の狼が群れを作ってこちらを威嚇している、白い毛並みが月の光に照らされ銀色の輝きを見せ付けていた。
僕は目を見開き、力を身体に巡らせる。
『さあ、始めようか…』
銀色の群れが波のように押し寄せる、あっという間に囲まれる、流れるように僕に迫る銀色を身動きひとつせずに待ち構える。
銀色の塊に僕の姿が隠れてしまった時、僕は力を解放する…
銀色の塊は無数の赤い針に貫かれ、すべてが動きを止める…そして時は動き出す…
巨大な火の玉のように銀色の一団は燃え上がり周囲を照らした。体に力が満ちてくる、左目には真っ白い煙が僕の胸にすごい勢いで吸い込まれているのが見える。今までに無い色の濃さ、より強い魂なのか、身体を通り抜ける力を感じながら歩き出す。
入り口は見上げるほど大きくまるで僕を丸呑みにしようとしているようにも見えた、左目に力を込めて奥を見通す、驚くほど静か。
足音だけが響く中、徐々に遺跡の多く深くに下っていく、驚くほど何も無い、命の気配すらない。しばらくして前方が薄明るくなってきている。とても広い場所に出る、ドーム状の広間は壁が淡く緑色に光り右目でも周囲が見えるほどには明るかった。
中央まで進むと前方に3体の像がある。
左側に杖を持ちローブを纏った初老の男性。
中央に胸の前で手を組んだ若い女性。
右側に剣を腰に下げ、盾を持っている若い男性。
近づいて見ると非常に精巧に作られておりまるで生きているかのよう…しかしその表情は暗く、悲しみに満ちていた。辺りを見渡すがここ以外にいける場所はなさそうだ…
何も無いのかな…僕はリーチェ達のことをなんとなく思い返していた。
この遺跡のことを知っている感じだったし、何かある、何かあるはずなんだ…
でもわからない、僕は3体の像を見ながら考え続けていた…
どれほど時間がたっただろう、物言わぬ像と一緒にただただ時間だけが過ぎていく。でもどうしても僕はその場を離れる気にはなれなかった。それにしても綺麗な像だな。
女性の像に触れようとした時、背後で砂が流れる音がした。
広間の中央の地面が盛り上がっている…砂山は徐々に大きくなる。その中から現れたのはさびた全身鎧。
『フウインヲヤブルモノニシヲ、テンニユミヒクモノニシヲ』
こんな錆びてて動くのかこれ…




