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『あんた、いつまで騒いでるんだい』
酒場の入り口には腕を組んだ女性達が立っていた。女性達は僕をじろじろ見てから、床に倒れていたり机に突っ伏している男達をたたき起こしていた。
アルさんの首根っこを捕まえた女性がこちらに近づいてくる…
『あんたがハーンさんかい』そうですと僕が答えるといきなり女性達が集まってきて頭を下げる。
あっけに取られる僕をよそにアルさんを捕まえていた女性が話し出す。
『こんな人だけど、うちの大事な人なんだよ。よろしくお願いします』
女性達は一斉に僕に頭を下げた。
僕は何も言えずに立ち尽くし、しばらくして『僕のできる範囲で最善を尽くします』と僕は答えた。
女性達は皆ほっとした表情で男達を連れて行く。べろべろに酔っ払った男達は肩を借りながら、あるいは担がれながらひとり、またひとりと酒場を後にする。
最後にアルさんを引きづった女性はもう一度振り返り、『サチちゃんも頼んだよ』といい笑顔でマスターに支払をして帰っていった。
ふととなりを見ると机にもたれかかりながら『ハーン…もっと…つぎなさい…』といっているサチがいた。
サチを背負い酒場を後にする僕に後ろから『またおいで』とマスターが声をかけてくれた。
孤児院へ向う途中もサチは起きることなく僕の背で気持ちよさそうにしていた、リーチェ達もいつの間にかいなくなって肌寒い道を孤児院へ急ぐのだった。
シスターは背負われたサチを見て少し驚き『このこったら、いつもはこんなことないのに』と微笑み、よっぽどハーンさんが好きなのねっと言った。シスターにサチをお願いしますというと、こちらこそサチをお願いねっていわれてちょっと戸惑いながらも『はい』と答え城へ向けてひとり歩き出した。
がんばらないとな、アルさん達の思い、奥さん達の思い、シスターの思い、サチの思い。
今まで感じたことのない、人の思い…ちょっとむずがゆいけど嫌じゃないな。
城の手前で人の気配に気づく…嫌な感じ…囲まれてる。
月明かりの下、木の陰からひとりの男が進み出る。
『うらみは無いが、俺達のためにここで死んでくれや』
いきなり振り下ろされる刃に僕は鉤爪で刃を捕らえる。
『いきなり何のつもりだ』男は僕の問いかけに答える気は無いようで、懐から短剣を取り出し僕の胸を迷わず突いてくる。
遅い…バロン達の動きに比べれば遅すぎる…
僕は相手を突き飛ばしながら後ろへ飛ぶ、そこには待ち構えていたように違う人間が立って僕の首を狙ってくる…その人間の足元を転がるように抜け足を払う。
森の獣のほうがまだましな連携を取る…あたりを見渡すと5人ほどの人影、全員顔を隠しあやしいったらないな。
『目的は僕の命かい』そう問いかける僕に答えるものは無く、じりじりと間合いを詰めてくる。
僕は覚悟を決めた、力は今は使えない…人影の中心に飛び込む、訓練されているのか5人に動揺は無く、4人が僕を囲み、1人がまっすぐに突きを繰り出す、見え見えだ。
黒く塗られた刃も左目にはしっかり見えている、突きを逸らし相手の首もとに爪をたてる…声も出せないまま崩れ落ちる人間…僕は魂を取り込みながら残り4人を見る。1人の人間が出した合図で一斉にかかってくる、僕は相手に一太刀もかすらせること無く1人、また1人とその命を奪っていった。
まるで、作業のように。




