12
『ハーンよ、お前の目的はなんだ、申してみよ』
女王は頭を下げない僕を気にもしない素振りで話しかけてくる。
ファミングは悔しそうに、しかし口を挟めない自分に苛立っているようで、その矛先を僕を睨むことで何とか収めているようであった。
バロンは静かに、僕を見つめただ次の言葉を待っていた。
『僕は魂が欲しいのです、女王様』
『魂とな、それでハーンよ何をする気か』
『答える必要はありませんよね、女王陛下。僕はこの広間にいる者のようにあなたに膝をついてご機嫌を取るつもりも、国のためにと使命感に駆られることもない、守るものも失うものもすでに無い…』
そこまで言うと僕は少しふらついた。
女王は心から楽しそうに笑いながら近くの侍女を呼んだ。
『あははははははは、ハーン、確かに私はお前の力を見た。目的がなんであれ私にとって有益であるかどうか。それが問題であったわ』
女王は近くに寄った侍女に小声で指示を出すと再度僕のほうを見た。
『ハーンよ、わが国は北の小国どもをすでに攻め滅ぼし南の大国ジルタを支配するために軍備を整えているところじゃ。魂が欲しいのであろう…どのように集めるかは知らんが戦場に立ってみる気はないか』
不意に頭に声が響く…
『戦場なら都合がいいんじゃないかしらハーン』
『ワシも賛成じゃな、死が渦巻く戦場は効率がいいと思うぞ』
『渦巻く恐怖と死の香り、燃えるぜ、ゴーだろ。行け行けだ』
リーチェ達は賛成か…
『それにハーン、魂もそうだけど、あなた人間だから食べなくても死ぬでしょ、当てでもあるの』
あ、そうだ僕はもう力以外何も無いじゃないか。選択肢は無いか…
リーチェ達は呆れたのか頭から声は消えた、ヴァル少年の笑い声の余韻だけを残して。
ぼーっと立っている僕に再度女王は問う。
『ハーン、戦場に立つなら私の客として扱うぞ』
周囲は驚き、小声で話し合う音が聞こえる。
『お待ちください、女王陛下、こやつは危険です。お考え直しを』
ファミングの奴が必死に女王に進言する。
『この私の決定に意見するのか、プラシィ』
女王は始めに僕に向けたような冷たい声で奴に声をかける。
『いえ、女王陛下に意見など』下を向いて奴は黙った。
『皆の者を聞け、今この場よりハーンは私の客。その意味がわかるな、心するように』
僕以外の者は皆女王に頭を下げる。
『ではハーンよ、部屋と侍女を一人つける、何かあればその者に言いつけるがよい』
先ほどの侍女が一人の娘を連れて戻ってきた。女王はそれを見ると娘を自分の近くに呼び寄せる。娘は女王の前で頭を下げて声を待っている。
『サチュリス、頭を上げよ。』サチュリスと呼ばれた娘は静かに頭を上げた。
『ハーンは私の客、お前なら大丈夫と思うがわかっているな』
『はい、女王陛下。失礼の無いようお仕え致します』
とても丁寧にすばらしい一礼を女王にすると、女王は満足そうにうなづいた。
『今日は疲れているだろう、必要なものは何でも用意させよう、ゆっくり休むがいい』
女王は優しく僕に語りかけ、サチュリスに顔を向け目で合図した。
『ハーン様、お部屋はこちらになります。ついてきてくださいませ』笑顔なのだけれど何か影を感じるサチュリスの後をついて広間を後にする。
無言で僕の前を歩くサチュリス、何の会話も無いままサチュリスは立派な扉の前で立ち止まる。
『こちらがハーン様にご利用いただくお部屋になります』
そういいながらサチュリスは扉を開けた。




