プロローグ
「はあ・・・」
今日も同じ日が同じように始まり、そして終わって行くと思っていた。ただただ時間が過ぎて、僕はなぜか生きている、そんなことが続くと思っていた。
今日もいつものように森へ向かう、村の人たちは森には近づかないのに僕は森に向かう、生きるために。
森は危険な獣が多く人を寄せ付けない、そのため良質な薬草が生えているからそれを取ってくるのが僕の村での役割、物心ついた時には一人だった僕が生きていくためにはこれしかなかった、体の小さい僕には小さな村での仕事なんてなかった。村においてもらうためにはやるしかなかった。
それでも森も悪いことばかりじゃない、今では危険な獣の動きもよくわかるから出会わないように回避もできるようになったし、森の小動物たちとも仲良くなった、それにここには僕をいたぶる人間はいない。
薬草を採取しながら、森を回りいつも休憩に使う泉でパンを食べる。自然と小鳥や動物たちが寄ってくるのでパンくずをおすそ分け、この時間だけが幸せだ。しかし幸せな時間は長くは続かない。暗くなる前に村長のところに薬草を持って行かないと。
『みんな、また明日ね』 僕は村に向けて重い足取りで帰る。
村長の家に行く途中、村の広場で声をかけられる。
『おい、まてよこの虫やろう』
今日もいたのか同じくらいの年なのにこいつらはどんだけ暇なんだろう、僕のことはそっとしといてくれればいいのに。
『ごめんね、早く村長さんに薬草届けないといけないから』
ああ、今日も同じ展開か・・・
『草しかとってこれない虫やろうがしゃべんじゃねーよ』
突き飛ばされて、踏みつけられる、それでも僕は薬草だけは守るために体を丸める。背中に感じる痛みといわれのない罵声・・・やがて気がすんだのか笑いながら去って行った。
僕は急いで立ち上がる、今は薬草を届けるのが先だから。
今日はいつもより遅くなったな、なんて考えながら村長の家につく。
あれ、入り口が空いてる、そっと近づくと中から村長さんの声が聞こえる。
『いやいや、あの薬草は希少価値の高いものですからな、そこまでたくさんは用意できませんな』
『しかし、あの女王陛下のご命令、断ればこの村も私もあなたもどうなるかわかりませんよ』
何の話だ、この薬草が希少価値が高いだって、そんなこと村長は一度も言ってなかったじゃないか。
『女王に逆らっては確かに無事ではいられないな、せっかくの金のなる木だが仕方がないか』
『そこにいるのはだれだ』
僕が姿をみせると、つまらないようなものをみるような目をした村長、話をしていた商人風の男は僕の持っている薬草をじっと見ている。
『僕です、いつもの薬草をもってきました』
『なんだお前か、薬草をそこにおいてさっさと帰れ、わしは忙しいのだ』
僕はいつもの場所に薬草を置いて頭を下げて村長の家を後にした。
去り際に何か聞こえたような気がしたが僕には関係ない、薬草が希少だろうが、高く売れようが僕の毎日が変わるわけじゃない。
早く明日になってまた森のみんなのところに行きたい。誰もいない小屋の中で一人横になる。
『寒くなってきたな』
季節は徐々に冬に近づいてきていた。




