―四日、後編―
あの後すぐに城に向かい、謁見を取り付けた。しかし、入る前にファイは門前払いされてしまった。どうやら機密保持の為らしい。しかし持っていかれる寸前。
『あったま来た!!ぜっっったいに突破するんだから!!!』
なんて威勢のいい声が聞こえた気がしたが、今は聞かなかったことにしよう。そして、
─謁見の間にて─
「おぉ、アルスよ。戻ったか。してどうなのじゃ?世界崩壊は止められそうか?」
「いや、それはまだ分からん。取り敢えず、今日までに分かったことを言う。周りの奴らも黙って聞け」
「うむ…」
国王が頷いたことを確認し、懐に入れといた本を取り出す。
「まず一つにこの本だ」
「ほう…。して、それには何が記してあったのじゃ?」
「この本は、シャームロの図書館にあったものだ。この本に書かれていたことは大まかに二つ。だが、どちらも切り離して考えてはならない。まず一つ。この世界は天使の裁きとやらで崩壊の危機に遭うこと。それに、あんたの読み通りだ。人類生誕の日にこの大陸──世界は魔界に呑み込まれることだ」
自然と騒めく兵士たち。その中の一人が隊から飛びだす。
「でまかせを!」
金属の冷たい音を立て、冷えた剣がアルスの首筋に触れる。当の本人のアルスはというと、大して怖じた様子も見せず、逆にギロリと兵士を睨み付ける。
「黙って聞け……そう言ったはずだが……?」
その瞬間兵士の動きが固まる。
「武器を収めろ!」
見兼ねた王の喝が飛ぶ。
「し…しかし」
戸惑いを見せる兵士。まさかアルスの味方をするとは思わなかったのだろう。狼狽える兵士に。
「聞こえなかったか?」
「…はっ」
再度の警告に憎々しげに剣を収め、元の位置に戻る兵士。その様子を見てアルスは話を続ける。
「オレは旅の途中に出会った女──ファイと共にこの事を確信に近付けるため、ビランチャに行った。その町のゴーンと言う者に予知をしてもらった。したらドンピシャだ。王都──この城の上で最後の戦いになるみたいだ。そこで、あんたにはやってもらいたいことがある」
「なんじゃ?」
訝しげな声で聞き返す国王。
「取り敢えず、民間人の安全だ。外出禁止令でも何でも出して少しでも安全の確保を頼む」
「ふむ……。一つ気に掛かったのじゃが、お主の言うその娘とは…」
ある意味今一番聞かれたく無いことを聞かれ思わず苦笑いを零して続ける。
「城門の辺りで兵士と格闘してたぜ。多分もうそろそろ……」
来るんじゃねぇか?と、続ける必要はなかった。何故なら威勢のいい音を立て扉が開いたからだ。
「アルス!置いてくなんて酷いじゃない!!」
「ほらな」
「……」
威勢良く入ってきたファイの姿に国王も思わず黙って頭を抱えてしまった。
「その娘が……そうなのか?」
呆然とした状態からなんとか持ちなおし問い掛ける国王。その様子に内心苦笑いを零し、ちらりと背後を見る。すると兵士に取り押さえられ揉めていた。それを見なかったことにして国王に再度問い掛ける。
「ま、さっき言ったのがあいつだ。それで、街の奴らの安全確保。してもらえるのか?」
是と言うならばある程度楽に戦える。そう思った矢先、国王の答えは予想外のものだった。
「……残念だが、それはできぬのじゃ」
その答えに反応し、声を荒げて問い詰める。
「何故だ!!たかだか避難……。その程度が出来ないっつーのはどういうことだ!!!」
「民に急にそのようなことを言ったら大混乱になる。若いお主には分からぬやも知れぬが、一国の主である以上、それは承諾できぬ」
食えない野郎だ……。内心毒づき、頭を掻き毟ってアルスは代わりのことを要求する。
「なら、四日後にはその戦いになる。その前日だけでいいから22時以降は外出禁止令を出してもらいたい。それと、さっきの本の写本を明日までに作っておいてくれ」
「わかった。我らに出来ることは全部やらせてもらう」
「その点に関しちゃ感謝する。じゃあな。行くぞ、ファイ」
言うだけ言ってさっさと撤収をするアルス。ファイはちょっと困ってから。
「それでは陛下、御前を失礼します」
そう言い一礼してからアルスの後を追った。靴の音がしなくなってから兵士の一人が声をかける。
「陛下、よろしいのですか?」
「構わぬ。どうせ奴らは捨て駒だ。それより、わしは我が娘の相手をしてくる。レイス、後は任せた」
「……御意にございます」
宿に向かう途中、ファイがアルスに声をかけた。
「王様には一応報告したんだよね?しばらく時間が余りそうだけど…どうする?」
「んー。取り敢えず一日休日に当てないか?体の方がもたねぇよ…」
欠伸を噛み殺して答えるアルス。あぁ…と賛同の意を示すファイ。
「そうね…。早く宿取ってシャワー浴びたいな…」
「へぇ。お前も女らしいこと言うんだ……イテ!」
茶化すつもりで言ったらどうやら逆鱗に触れたようだ。思いっきり足を踏まれた。
「ちょっとアルス…それどういう意味かなー?」
「やべ…。逃げろ」
「ちょっと!逃げるの!?待ちなさい!!」
脱兎の如く逃げ出すアルスとそれを追い掛けるファイ。そんなのも自分の住んでたとこではなかった掛け合い。それを肌で感じ、こんな日がずっと続けばいい、と心の中で思ったアルスだった。