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日常2(謎の人2より)

あんまり更新しないのもアレなので

「謎の人2」より日常をUPいたします。


「で?どうなの最近」



いつのもメンバー、いつもの場所でいつも通り順調に終わった撮り。

次の現場向かうために見慣れた駅への道をたどりながら

この場所に通うようになってもう1年たつのか・・・早いもんだな

とか思っていたら突然かけられた言葉に一瞬思考が止まる。



「誠さん?」



台本が入った大きなバックを持ち直すように肩にかけ直しながら

にやりとした笑みでこっちを見てくる年上の先輩。

ひとあたりはいいし悪い人じゃないけれど、

時々謎かけみたいに唐突に話を振られるのは慣れたとはいえ

たまに困惑することもあって・・・で、今回はいったい何なんだ?



「だーかーらー!お前ってホントガード固いよな」



言ってる意味がわからないんですけど。


戸惑いが顔に出てたのか、誠さんはわざとらしくため息をつくと

がしっと肩に手を回してきて、耳元でヒソヒソと話し始める。



「真澄ちゃんだよ・・・食った?」


「はぁ!?」



いきなり何を言い出すんだこの人は!

酔ってるのか?

いや、さっきまで撮りをしてたからそれはない。

思わず誠さんの顔を凝視しているとニコニコと悪気のなさげな笑顔。



「だって槇ここんとこ機嫌良いしさ~。

なんてーの?前に比べて雰囲気も丸くなってきたって言うか。

それって確実にあの子のおかげじゃん?

そしたらさー、いろいろと気になるってもんでしょ?」


「いや、雰囲気が丸くなったかどうかはともかく

なんでそこであの台詞が出てくるんですか!」


「そりゃ男だから?」



あっけらかんと告げられた言葉に二の句が継げない。


あーそうだった。この人はこういう人だった。

自分が気になったことは抑えられないというか。

肩に入ってた力が抜けていくのがわかる。

悪気はないんだ、たぶん、きっと!

ただ好奇心が旺盛なだけだ!


たまにそれが裏目に出る場合もあって、それが今まさにそれで。



「それについては黙秘権を行使させてもらいます」


「は?なんでー!?」


「俺一人の問題じゃないからです」


「えー、俺誰にも喋らないよ?」



いや、だからですね?そういう問題じゃないわけです。


まだ何やら四の五の言ってる人をかわしていると

この人を手のひらで転がしているこの人と同じ名前の女性ひとの事がふと頭に浮かぶ。

尊敬できるよ まったく。

今度極意なんかを聞いてみようか・・・


答えない俺に見切りをつけたのか、すでに考えが別のことにうつったのか

鞄から手帳を取り出すとぺらぺらめくりはじめた。


視線は手帳に落ちているのに歩調はしっかりしていて

通い慣れた道とはいえ、そんなとこは器用だなと関心する。



「そういえばさ、槇 来週末京都でイベントだったよな?」


「そうですよ」



同じ事務所だからマネージャーに聞けばだいたいのスケジュールは把握できる。

でもまさか俺のスケジュールまでこの人手帳に書き込んでるのか!?


俺の返事に気が済んだのか「ふんふん」と言いながら何かを考え始めた人。


とっさにふられた話題に動揺が顔にも声にもでなかったらしい事に安堵する。

妙なところで勘が鋭いからな、誠さんは・・・


実はこのイベントには彼女も同行する予定なのだ。


偶然にもイベントの後に2日ほど空き日があって、ダメもとで誘ってみたらOKの返事。

下心はない!とは言い切れず、まぁたぶんそういうことになる可能性は高いわけで

できれば誰にも、特にこの人には絶対に知られたくない!


誠さんに知られた日には何が起こるか予想もつかない。

急に押しかけてくることはない!とは言えないほどの行動力の持ち主だから

本気で知られずに済むにこしたことはない。



「あのさ、ちょっと頼みがあるんだけど」



知らず安堵していると、思考の渦から復帰したのか

手帳を片づけながらなにやら言い始める。



「なんですか?」



何を言い出すのかわからないので内心身構えながら誠さんを見る。



「いやさ、前に槇にもらった漬け物。あれ京都のだったよな?」


「そうですけど?」



漬け物?そういや前にこの人に送った事あるな。

でもずいぶん昔の話だ。良く覚えてたな。

そんなに気に入ってたのか?



「内容は任せるからちょっと送ってほしいトコがあるんだけど」


「それくらいなら別にかまいませんよ」



それくらいなら全然たいした問題じゃない。

観光の途中にちょっと寄り道しても彼女もきっと何も言わないだろう。

いや、むしろ連れて行こうと考えていたからちょうどいい。

実は定期的に取り寄せるくらい気に入っている店なので紹介したいという思いもある。



「で、どこに送ればいいんですか?」



聞いた瞬間、なにやらもじもじし始めたその態度にピーンとくるものが。



「・・・駿河さんの所ですか」


「あ?え?なんでわかったの!?」



いや、バレバレですって。



「いや真琴ちゃん和食好きみたいだし、こういうの好きかなーって思ってさ。

もらった漬け物美味しかったし、美味しい物食べて欲しいし

一緒に食べれたら最高なんだけど、ちょっと口実になんないかなーとか

一切考えてないから!これマジだから!」


「考えてるんですね?」


「・・・ハイ。チョット カンガエテマシタ」



素直な答に笑みが浮かぶ。

駿河さんに出会って、恋をして、自分も変わったってこと。

この人は気づいているのかいないのか。


ニコニコした笑顔で駿河さんの事を話し始める。

その雰囲気からは以前の荒廃した雰囲気は一切感じられない。

今度こそ幸せになって欲しいな・・・

その為のハードルはちょっと、いやかなり高そうだけど

この人ならいつの間にかどうにかしてしまいそうな気がする。


いつの間にか俺の心の中にすっと入り込んできたように。



「了解です、ちゃんと誠さんの名前で送っておきます」


「俺はホントそれ以上の下心はないから!」


「はいはい、わかってますって」


「で、駿河さんの住所は?」


「・・・ワカリマセン」


「は?」



この人の言動から察するに何回も家を訪問というか、襲撃というかしてるはず。



「住所わからないところにどうやって送るんですか・・・」


「そうなんだよー どうしよう 槇!」



いや、どうしようはこっちの台詞です。


どうしたもんかと考えてるとふと頭にひらめくものが。



「真澄ちゃん・・・」


「ほ?」


「いや、真澄ちゃんなら知ってるかもしれません」


「本当!?」


「いや、確認した訳じゃないのではっきりとは断定できませんが・・・」


「いや、真澄ちゃんなら知ってる!きっと知ってる!知ってるに違いない!」



だからどうしてそう都合のいいように解釈するかな



「一応聞いてみて、知ってたら送っておきますよ」


「ん・・・・でさ」


「はい?」


「知ってたらその住所、俺にも教えてほしいなぁ・・・なんて」


「個人情報です」


「でもー」


「個人情報です」


「えー なんだよ 槇のけーち!けーち!」



拗ねたふりをしてケチを連呼しだす。

本当にこの人は年上なのか!?



「教えていいかも駿河さんに聞いてもらいますよ それでいいですか?」



とたんおさまる声とにっこりした笑顔に脱力感。


なんだかなぁ・・・

そう思いながら目の前に現れた自動改札機にSuicaを軽くタッチさせた。






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