八話
「『構えろ』『思考を止めるな』『奴が来たぞ』」
突然、佐賀が口を開いた。
何故か、声が幾重にも重なって聞こえる。
「……え?」
「俺と同じ音遣いが今回の犯人だ」
「どういうことだ?」
「『名は名木凪咲』」
それを聞いて、突然思考が加速する。
「『聞き覚えがあるだろう?』『準備段階だと聞かされているはずだ』」
「な、なんのことだ……?」
困ったように大友が質問する。
「待て、待て……。いや、待つな!」
もしそうなら、ヤバい!
殺されるかもしれない!
…………。
「あたしって、大護ちゃんのこと嫌いなんすよね」
「どういうことだ?」
「いや、時々っすよ。大護ちゃんと一緒に話すのって楽しいっすよ。気遣い上手なんすよ、大護ちゃん。意外っすねー」
「そうだな。じゃあ、なんで嫌いなんだ?」
「だから、時々。大護ちゃん、短気っすから。怒ると見境なく暴れるんすよね。一回だけじゃなくて、何度もあたし、殺されかけちゃって……」
「た、大変なんだな……」
…………。
「あたしさー、時々思うんだ」
「口調変わってないか?」
「あ、失敗」
「で、なにをだ?」
「もしかしたら、この人殺しちゃうかも、って」
「…………」
「なんかさ、耐えらんないんだよね。我慢できないって言うか。まあ、七組になったのは自業自得なんだけどさ」
「まあ、ガラスを三十枚も割ればすぐに七組行きだよな」
「まあね。……だからさ、もし、もしだよ。もし、あたしが大護ちゃんを殺しちゃったらさ、助けてくれる?」
「…………」
…………。
「『思考を止めるな』『しかし』『離れるな』」
僕のせいかもしれない。
僕が、名木の助けを聞かなかったから、こんなことになったのかもしれない。
「僕が……」
「その時はあたし、ウサギ君が疑われないように頑張るっすからね!」
『疑われないように』、疑われないように!
だからって殺しにくるかよ普通!
「『来るぞ』」
佐賀の一言で教室の空気が一変した様な気がした。
次の瞬間。
足元がガラガラと崩れ始めた。
ん?念力のような能力を使う奴等、でしたね。
あー、どうしましょう、どうしましょう。
んー、んー?
先生の性格からして、わかりきったことは省いて言いそうですね。先生の言葉が足りなかったってことで!
先生仕事してくださいよ!
―――――
改稿
5月18日
屋上→教室