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一の一乗  作者: 囲井 鯀
7/13

六話

「僕が来たときはまだ大前田の頭はありましたよ」

「どういうことだ?」

 状況説明。

 僕が登校したのが七時五十分。教室には五十三分に入った。途中、トイレに向かった名木と別れて1人で教室に入り、そこで、頭から血を流す大前田を発見した。

 その時、大前田は頭から血を大量に流しながら転がっていた。

「どういうことだ?大前田の頭は死んだ後に破壊されたという事か?」

「僕の目が正しかったらそうだと思いますけど、詳しくは国家公務員の皆さんに聞いてください」

 事件の真相なんて、探偵か警察かに任せておけば自ずとわかるんじゃないだろうか。

 なんて、現実逃避を繰り返す。

「お前が名木と合流したのはいつだ?」

「そのすぐ後です。名木が大声で叫んだの知ってますよね?」

「ああ、いつもの事だから放って置いたがな」

 この先生は……。

「だから僕がわざわざ職員室まで行く羽目になったんですね」

「名木はその場に残ってたんだな?」

「途中トイレ行ってたそうです」

 僕は名木を責める気にはなれない。

 人の死に直接触れてしまったのだ。

 しかも、仲の良かった、たった二人のうちのクラスメイトを一人、失ってしまったのだ。

 超能力を持っていたとしても、彼女は、そう、僕たちはまだ高校生なのだ。大人でさえ思わず目をそらしてしまうような『殺人』に、平気でいられるはずがない。

「トイレから帰ってきたら頭が無くなっていた、と。そういう事か」

「はい。教室中に肉片が飛び散ってたそうです」

「まあ、頭蓋骨の破片で窓ガラスにヒビが入っていたしな」

 男子生徒の一人が耐えられなくなったのか、青い顔をしてうずくまった。

 それにつられて、二人目、三人目とうずくまる。

「お前ら、大丈夫か?」

「…………なんで……平気なんですか……」

 メガネをかけた男子生徒が口元を抑えながら言った。

「こういう時こそ冷静に、が俺のモットーだ」

「…………」

 その生徒は青い顔をしながら、今度は僕の顔を見る。

「僕だって吐きたいよ。吐いて胸のつっかえを少しでも軽くしたい」

 でも、そんなことよりも、やらなければならないことがあるのだ。

「大前田を殺した犯人を。大前田を侮辱した犯人を。僕は一刻でも早く見つけ出したいんだ」

 そして言ってやりたい。

 『人を殺した気分はどうだい?』と。

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