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一の一乗  作者: 囲井 鯀
5/13

四話

「……卯鷺、昨日の放課後何してた?」

「町中走りまわりながらしかも叫びまくってました」

 呆れた表情を先生は返してきた。

「まあ、一応苦情が数十件届いてたから信じるとしよう」

「『クリームシチュー』、『観覧車』、『金属バット』ですね」

「『有刺鉄線』、『赤信号』、『ロケットねずみ花火』もな」

 とりあえず、僕のアリバイはちゃんとある。

 昨日の放課後、小学生と一緒に色々な単語を叫びながら三時間以上、日が暮れるギリギリまで町中を走り回っていたのだ。

 何故そんなことをしたのかって?

 そんな気がしたからだとしか言いようがない。

「名木も一緒にまわってたそうだな」

「あたしも一緒に叫んでましたよー」

 こんな時なのに、名木は元気よく手を挙げながら返事をした。

「お前は事件が落ち着くまで謹慎処分だ」

「あ、やっぱりっすか?」

「お前の『大声』で笠木中学の校庭に大穴が出来たそうだ」

 ああ、あれ。あれは本当に驚いた。名木の怖さを知った気がしたけど、小学生は喜んでたんだよな。ちょっとフクザツな気分だ。

「さて、余談はこれぐらいにして。お前ら」

 先生はぐるりと教室にいる生徒たちを見渡す。

「大前田がなぜ殺されたのか、わかるやつはいるか?」

 しん、と音が消えた気がした。

 先生の言葉で、僕は改めて現実を突きつけられた。


 僕は今朝、名木と登校した。なんてことはない会話をしながら歩き、靴を履き替え、教室へ向かった。

 そして、見つけたのだ。

 大前田と思われる生徒の死体を。

「警察には既に連絡しておいた。少ししたらやってくるだろう。お前らが集められた理由は言う必要はないよな」

 体育館に集められた76名の生徒達。彼らは特に大前田と関わりが深い生徒達らしい。

 その中には当然僕や名木も含まれている。

「あの……」

 1人の女生徒が手を挙げた。

「どうした?」

「ど、どうして私が……?」

 ここからは見えないが、か細い感じの声だった。

「私も……」

「私も……です」

 さらに数人の女生徒が手を挙げる。

「ああ、お前らな。こっち来い」

 そう言って、7名の女生徒を一か所に集めた。

「先生何するんすかね」

(声でかいぞ)

(あ、失敗)

 しかし、大前田とあの女生徒たちは何の関係があるというのだろう。先生は彼女たちに向かって何か話しかけているようだが、全く聞き取れない。

 彼女、ではないみたいだし……。

 しばらくして、集められた女生徒たちは返された。

「よし、お前ら、移動するぞ。逃げた奴は問答無用で疑うからな」

 疑ってるから残されたんだろ。

 生徒たちのざわめきから、そんな気持ちが伝わってきた。

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