二話
「お前の超能力はなんだ?」
僕を含めて、この教室には三人の生徒しかいない。たった三人だけの教室。一組や二組になると三十人以上はいるらしいのだが、数字が後ろになるにつれて少なくなっていくと説明された。一体それは、どういうことなのか。
「とりあえず、お前らは自己紹介から始めろ」
遅すぎる担任のフォロー。やる気がない証拠だろう。
「はいなー、あたしから。名木凪咲だよん。超能力は『大声』。どこまでも大きな声が出せるから、結構便利っすよー?」
「ちなみに名木は既に三十五枚窓ガラスを割っているから七組だ」
「いやはやー、おどろきもものきさんしょのき!」
変に興奮させない方が良い、という事だろう。
「大前田大護」
「大前田の超能力は『腕力強化』。通常の百倍の腕力を制限時間付きで使えるな。喧嘩の時に体育館を半分吹っ飛ばしたから七組だ」
「かっ!俺は悪くねえよ」
そっすか……。
札付きが集められるクラスなんですね。
了解しましたよ、先生。
「で、編入時から七組のお前はどんなやつだ?」
まるで七組が悪いやつの入れ物みたく言う。
「七組ってだけで避けられるっすよ!」
「転校生は七組だったー!」
悪い噂しか立たないよ!
思わず頭を抱えながら天を仰ぐ。
「いいから早く言えよ、ウサギ」
「はいはい……」
僕は気を取り直し、再び二人を見る。
「僕の超能力は『眼球破壊』。対象の眼を破裂させる能力だ」
「うぇ、趣味悪い能力っすね。『念力』と違うんすか?」
「つーか、一緒だろ」
「いや、石を動かせるかなー、って何度か試したこともあったけど、全くピクリともしなかった。そのかわりに、近くにいた鳩の眼が破裂したな」
二人とも嫌悪感を隠そうともしなかった。
「卯鷺は特に何も悪いことはしてないが、超能力自体が危険だから七組だ」
「僕はなにも悪くないじゃん!酷い!」
「遺伝なんだからしょうがないぜ、ウサギ」
まるで自嘲するかのように大前田は笑う。
「そうっすよ。元気出すっす」
「……ああ、そうだな」
この二人も、諦めてしまっているらしい。
しかし、この二人はいずれ七組ではなくなるだろう。使い方次第で人の役にたつ能力なのだ。僕なんかとは違い、どうにでもなるのだ。
だけど、僕は違う。
諦めたくても、認められない。何かの間違いであってほしいといつも願う。
なぜ、『念力』ではなかったのだろうか。
なぜ、母と同じ超能力ではなかったのだろうか。
それがいつも悔まれる。
「じゃ、自己紹介も終わったことだし、ホームルーム始めるぞー。席に着け」
担任の指示に従い、廊下側の席に座る。
教室は思った以上に綺麗であった。