一話
カラッと晴れた青い空。
何処かに行ってしまった白い雲。
残暑が残る通学路。
そう。
「暑い」
水でもかぶって頭を冷やした方が良いだろうか?
歩くのが嫌になってしまいそうだ。
それが他の人も同じだという事が、周りを見ればすぐわかる。
「…………」
すぐ、わかる、のだが……。
「誰もいねーよ」
あれれー?遅刻かなー?それとも日にちを間違えたかなー?と首を捻りながらとりあえず歩き続ける。歩くのが辛いのだが、しかし歩かなければならない。考え事をしながら歩けば、多少暑さを忘れられる気がするので思考することをやめないでいるのだが。しかし、最初に思いつくのは「暑い」だ。
暑いのだ。
「落ちつけ、ユウキ。もうすぐ、もうすぐなんだ……」
ぶつぶつと呟きながら僕は歩き続ける。
しばらくすると、曲がり角が見えてくる。ここを曲がればすぐに笠木高校だ。そう思うと、自然と足に力がはいり、先ほどより早足になった。
「っ」
角を曲がると、そこに見えたのは笠木高校の大きな校舎。左右対称になっていて、何故だかとても威圧的なぐらい大きかった。
僕は歩く足を止めた。
「僕は今日から……」
ここに通うのか。
通学用の革鞄を握り直し、再び僕は歩き始めた。
「えー、今日からこの一年七組で一緒に学ぶことになりました、卯鷺ユウキです。皆と一緒に学べるのはたった半年ですが、どうかよろしくお願いします」
僕が頭を下げると、ぱらぱらと拍手が上がった。
たった数人の拍手。
「と、いうわけで、今日からお前らと一緒に学ぶことになった卯鷺だ。仲良くしてやってくれ」
担任のなんとか先生が言うと、一人の女子が手を上げた。
「ウサギ君は何者ですかー?」
「高校生だ。……です」
「コーコーセー。かっ!知ってるよ、そんなこたあ」
ガラの悪い男子が椅子に寄り掛かりながら言った。
倒れてしまわないのだろうか?
「おい、兎とかいったな」
「卯鷺だよ。……ですよ」
「無理して敬語使わなくても良いっすよー」
先ほどの女子が笑いながら言う。
「お前は黙っとけ!」
「わーお、怖い怖い」
ガラの悪い男子に怒鳴られ、肩を竦めながらその女子は鼻歌を始める。
「おい、卯鷺」
「なんだよ」
「お前の超能力はなんだ?」