エピローグ
「昨日の夕暮れ踊り出す、三途の河を平泳ぎ、振り返ればあの日の後悔。ただただ懺悔の雨に打たれる毎日。しかし俺は今を行く。明日が俺を待っている」
「……なにそれ」
「いや、決め台詞」
「聞いてる僕が恥ずかしいんだけど」
「いや、言ってる俺が一番恥ずかしいに決まってる」
「じゃあ言うなよ! っていうか、殺しに決め台詞は必要なのか?」
「さてね、暇だから作ってみただけだし」
「お前、忙しい、忙しいっていつも言ってなかったか?」
「今日は特別暇だったんだ」
「じゃあなんで遅れたんだよ」
「遅れてみたってのも、また風流」
「流行らねえよ」
…………
「おー、偶然偶然!」
「どうした? こんな夜中にしかも血塗れで」
「いやー、返り血だから安心しろって」
「なんだ残念」
「残念がるなよ! 悲しくなるでしょうが!」
「うわー嬉しいなー」
「言ってることが噛み合ってるんだか合ってないんだか! どの台詞に対しての嬉しいだよ!」
「え、お前が悲しいってところだろ」
「あ、やっぱりぃー?」
「で、どうしたんだよ、返り血なんて浴びて」
「ちょっと血のシャワーを浴びてみたい気分だったんでな。そこら辺の人をこう、ざくり?」
「疑問形かよ」
「じゃあ、す、と」
「軽いな! 随分と軽いな!」
「効果音で表せるかアホ!」
「自分で言っておいてそれかよ! ……で、血のシャワーを浴びた感想は?」
「気持ち悪かったな。温いし、生乾きだとベタベタするし。乾燥すると鬱陶しいったらありゃしない! お前、血のシャワーなんて浴びたいなんて思わない方がいいぜ」
「そうか、ありがとよ」
「ところで、お前は何してるんだ? 人殺し?」
「お前と一緒にするな。買い出しだよ」
「はー、大変だな。お疲れさん」
「お前はさっさと体洗え、臭うぞ。服洗っても意味無いと思うけど」
「はいはーい、っと」
…………
「人を殺すってことは、自分も殺されていいと言ってるのと同じなんだ」
「そう、だろうな。うん」
「だけど、他人を殺しておいて自分は死にたくないだとか、勝手に自殺すんのはよくねえな」
「そりゃまたどうして」
「前者は言うまでもなく、後者はまあ、俺の考えなんだけどな」
「ふーん、逃げるな、みたいな?」
「そうそう、殺されてもいいってんなら、殺されて死ねって話だ。殺されたくないから、自分から死ぬ。そう俺は捉えてる」
「まあそうなるだろうな。事故死はどうなるんだ? 勝手にいつの間にか死んじゃってるけど」
「そりゃ、どうしようもねえや。神様にでも殺されたんだろ」
「……適当なんだな」
「人の生を勝手に奪ったやつには、寿命でなんて死なせない。それが俺のポリシーだ」
「殺人鬼がよく言うよ」
「馬鹿野郎、俺は『鬼狩り』だ。あんな奴等と一緒にすんな」
「一緒だろうが! 殺しを楽しんでんじゃねえかよ!」
「まあ、俺は出来れば殺されて死にたいな」
「僕は誰も殺さないから、寿命かな」
「人間以外の動物も範囲に含まれてたら?」
「……心中、かな」
「自分勝手な奴だな」
「許可はちゃんととるに決まってんだろ!」
「そう言う意味じゃねえよ」
「……わかってるさ」
わかってる。
そんなことぐらい、わかってるさ。
これが僕の自分勝手だってことぐらい。
謎を残したまま終わらせる!
うん、好きに推理してくれて構いませんよー。
あ、できればで良いので、読むだけじゃなく批評なんかも、嬉しいなー、なんて。