【エッセイ】小説家になろうを愛する人より【壊す人、守る人、そして書く人 ――その言葉(能力)、本当に誰かを傷つけるために使いますか?】
※本作は、インターネット上の不正行為や、ウェブサービスを支える人たちについて考えたエッセイです。
最近、ウェブサイトの安全性や、利用者を不安にさせる偽の警告などについて考える機会がありました。
便利なサービスが、いつも当たり前に使えること。
安心して作品を投稿し、誰かの作品を読み、感想を届けられること。
その裏側には、システムを守り、問題に対応し、日々の運用を続けている人たちがいます。
だからこそ、誰かの信頼を壊す行為には、怒りを覚えます。
同時に、守るために働いている人たちへの感謝も、言葉にしておきたいと思いました。
少し真面目に、少し熱く。
そして最後は、いつもの物書きらしく……?
小説家になろうを愛する人より
【壊す人、守る人、そして書く人 ――その言葉、本当に誰かを傷つけるために使いますか?】
①はじめに――画面の向こう側にも、人がいる
インターネットは、あまりにも日常に溶け込んでいる。
小説を読む。作品を投稿する。感想を届ける。必要な情報を調べる。買い物をする。連絡を取り合う。
画面を開けば、そこにはいつもの場所があり、いつものように使える。
私たちは、その便利さをつい当たり前のものとして受け取ってしまう。
けれど、その場所は、勝手に動き続けているわけではない。
サービスを運営する人がいて、システムを管理する人がいて、不具合を調べ、攻撃や詐欺への対策を考え、利用者が安心して使えるように手を尽くしている。
画面の向こう側には、私たちと同じように働き、悩み、判断している人たちがいる。
そのことを、忘れたくないと思う。
その仕組みを壊すことは、画面の中だけで終わらない
一方で、インターネット上では、人の信頼やサービスの安全を踏みにじる行為が起きる。
偽の警告を表示して不安をあおる。正規の案内を装って、利用者を別の場所へ誘導する。アカウントや個人情報を狙う。相手が困ることを知りながら、混乱や被害を引き起こす。
そうした行為を、単なるいたずらや、ちょっとした技術自慢として片づけてほしくない。
画面に表示された言葉を信じてしまった人は、何が本当なのか分からず、不安になる。
大切なアカウントを失うかもしれない。
時間やお金を奪われるかもしれない。
被害を受けた本人だけでなく、家族や周囲の人まで巻き込まれることもある。
そして、被害が起きれば、原因を調べ、穴をふさぎ、利用者に説明し、再発を防ぐために動かなければならない人たちがいる。
誰かが軽い気持ちで起こしたことの後始末に、別の誰かが多くの時間と労力を費やすのだ。
壊す側にとっては一瞬でも、壊された側にとっては、長く残る傷になることがある。
だから、私は言いたい。
「あなたたちの行為は、画面の中だけで終わるものではない。」
人の安心を奪い、サービスを支える人たちの仕事を増やし、誰かが築いてきた信頼を傷つける。
人と人が安心してつながるための場所を、わざわざ危険な場所に変えてしまう。
それは、人間社会への冒涜であり、そこに暮らす人々の営みへの妨害ではないのか。
②『悪党たちのピザパーティー』
「よっしゃ! 今夜はピザパーティーだ!」
薄暗いアジトに、男の歓声が響いた。
連中は、他人のアカウントを狙い、偽の警告をばらまき、いくつものサービスを混乱させてきた。
手に入れた金で、今夜は豪勢に騒ぐつもりだった。
「ピザは特大を五枚! 飲み物も忘れるなよ!」
リーダーがスマートフォンを操作する。
……つながらない。
「おい、注文サイトが落ちてるぞ」
「別の店は?」
「そっちも駄目だ!」
仕方なく、仲間が買ってきたビールを一口のむ。
「なんだよ、冷えてねえじゃねえか!」
ところが、ビールは常温のままだった。
「いや、店の冷蔵システムも止まってるらしい。冷凍庫も溶けてるってさ」
「ふざけんな! 金ならあるんだぞ!」
男たちは、ぬるくなった缶ビールを睨んだ。
そのとき、アジトの室温がじわじわと上がり始めた。
エアコンのリモコンを押す。
反応がない。
「故障か?、こっちもかよ!?」
電力の供給そのものが止まったわけではない。
だが、通信や管理システムの障害が重なり、修理の手配も、いつもどおりにはいかなかった。
「暑い……。誰か、窓を開けろ!」
「窓なんか開けたって暑いもんは暑いだろ!」
ピザもない。冷えたビールもない。エアコンも動かない。
彼らが壊してきたのは、画面の中のデータだけだと思っていた。
けれど、画面の向こう側には、注文を受ける店があり、商品を運ぶ人がいて、商品を管理するシステムがあり、設備を動かす電気があり、それらをつなぐ通信があった。
便利さは、ひとつのボタンだけでできているわけではなかったのだ。
「くそっ……。明日は別の店に行ってやる!」
リーダーが吐き捨てた、そのときだった。
「おい……ちょっと、胸が……」
仲間のひとりが、テーブルに手をついた。
顔から血の気が引き、冷や汗が流れている。
「どうした?」
「胸が、裂けるみたいに……痛い……!」
男は床に崩れ落ちた。
突然の激しい胸の痛み。
大動脈解離の可能性がある、
命に関わる症状だった。
「救急車だ! 早く!」
スマートフォンを握った男が、画面を見つめる。
通信が不安定で、通報がすぐにつながらない。
ようやく助けを求めても、広域の交通システム障害で道路の状況は混乱し、救急車の到着にも遅れが出ていた。
病院でも、情報システムの障害が起きていた。
設備がすべて止まったわけではない。
それでも、患者情報の確認や検査の連携に支障が出て、いつもなら進むはずの対応が滞っていた。
「頼む……早く来てくれ!」
リーダーは、何度も画面を叩いた。
金ならある。
いくらでも払う。
だから、誰か助けてくれ。
だが、金を積んでも、壊れた通信がすぐ戻るわけではない。
混乱した道路が一瞬で空くわけでもない。
止まった連携が、願っただけで元どおりになるわけでもなかった。
男は床に横たわり、苦しそうに息をしている。
──さっきまで、彼らは笑っていた。
他人が困ることを、画面の向こうの出来事だと思っていた。
その画面の向こうに、自分たちの暮らしも、命も、つながっていたことを知らずに。
――いや、知らなかったのではない。
考えようとしなかったのだ。
自分たちが壊しているものが、誰かの仕事であり、誰かの生活であり、誰かの命を支える仕組みでもあることを。
「……誰か、助けてくれ」
その声に、もう笑う者はいなかった。
アジトには、ぬるいビールと、届かなかったピザの注文履歴だけが残っていた。
そして、彼らが初めて思い知った。
社会は、自分たち以外の誰かが、毎日、必死に動かしてくれているのだと。
壊すのは、一瞬だ。
けれど、守り、直し、つなぎ直すには、人の手と時間がいる。
そのことを知るのが、あまりにも遅すぎた。
─────
③技術があるなら、何に使うのか。
技術そのものが悪いわけではない。
知識も、言葉も、仕組みを理解する力も、本来は使い方によって人を助けることができる。
危険な弱点を見つけ、責任ある形で知らせる人がいる。
攻撃を防ぐために技術を磨く人がいる。
分かりにくい仕組みを説明し、被害に遭わないための知識を広める人がいる。
同じ知識や技術でも、誰かを困らせるために使うことも、誰かを守るために使うこともできる。
だからこそ、問いたいのだ。
できるから、やるのか。
相手が困ると分かっていても、やるのか。
自分の腕前や優位性を示すために、他人の安心を犠牲にしてよいのか。
己の利益だけを追求してよいのか。
知識があることと、それをどう使うかは別の話だ。
技術が高度であるほど、その力を向ける先には責任が伴うはずだ。
人の信頼を壊すことに頭を使うくらいなら、壊れにくい仕組みを考えてほしい。
人をだます言葉を考えるくらいなら、危険を知らせる言葉を考えてほしい。
その力を、傷つけるためではなく、守るために使ってほしい。
そんな中、この場所を守る人たちがいる。
サービスを運営する側には、説明する責任や、問題を改善していく責任がある。
利用者が不安を感じたときには、何が起きているのか、どうすればよいのかを、できる限り分かりやすく伝えてほしい。
けれど、その責任を求めることと、現場で守ろうとしている人たちの努力を忘れることは、同じではない。
不具合を調べる人。安全性を高めるために更新を行う人。攻撃や不正利用への対応に追われる人。利用者への影響を考えながら、難しい判断を重ねる人。
そうした仕事は、普段、利用者の目には見えにくい。
小説家になろうのように、誰かが物語を投稿し、誰かがそれを読み、感想を交わす場所も、そこにある仕組みが動いているからこそ成り立っている。
私たちの暮らしを支えるさまざまなウェブサイトやサービスも同じだ。
いつも使えること。いつもの場所に戻れること。
書いた言葉が届き、読みたい作品に出会えること。
その「当たり前」は、誰かが守り続けてくれているからこそ、当たり前でいられる。
問題が起きたときには、利用者として疑問を伝え、改善を求めることも必要だろう。
それでも、守るために働いている人たちまで、ひとまとめに責めたくはない。
誰かが壊そうとするものを、別の誰かが必死に守っている。
そのことを、私たちは忘れてはならない。
──サービスを支えてくださる皆様へ。
目に見えないところで、調査し、考え、修正し、運用を続けてくださっていることに感謝します。
どうか、守る側の人たちまで疲れ果ててしまいませんように。
利用者のひとりとして、私は、安心して使える場所を守ろうとする皆さんを応援しています。
壊すことに費やされる力より、守り、支え、つなぐための力が、これからも大きくありますように。
私は、これからも物語を書き、誰かの物語を読み、言葉を届けていきたい。
……と、ここまで真面目に書いてきましたが。
最後に――みんな、小説家にならないか?(笑)ヽ(=´▽`=)ノ
人の信頼を壊すために頭を使うくらいなら、物語を面白くするために頭を使いませんか?
人をだますために言葉を並べられる能力があるのなら、誰かを笑わせたり、泣かせたり、明日を少しだけ頑張れるような物語を書きませんか?
悪役なら、小説の中にいくらでも登場させられます。
しかも、現実の誰かに迷惑をかけなくても、思う存分ひどい目に遭わせられます!(笑)(*´∀`*)
もちろん、現実の悪意まで創作だけで解決できるわけではありません。
それでも、言葉を誰かを傷つけるためではなく、誰かに何かを届けるために使うことはできるはずです。
──というわけで。
そこのあなたも。
画面の向こうのあなたも。
みんな、小説家にならないか?(笑)ヽ(=´▽`=)ノ<はい!大事なことは繰り返し!w
悪意をまき散らす側ではなく、物語を生み出す側へ。
読む人も、書く人も、応援する人も。
そんな人たちが増えたら、とても素敵な世界になると思いませんか?
――さあ、次の物語を書くのは、あなたかもしれませんよ?
(了……?)
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
今回は少し真面目な話を書きました。
誰かを困らせたり、信頼を壊したりすることは、画面の向こう側にいる人の時間や気持ちまで傷つけることがあります。
その一方で、私たちが安心して使える場所を守ろうと、日々努力してくださっている人たちもいます。
小説家になろうの運営に携わる皆さんをはじめ、さまざまなウェブサービスを支えてくださる皆さんに、感謝を。
もちろん、利用者として疑問を伝えたり、改善を願ったりすることも大切です。
それでも、守ろうとしている人たちへの敬意は忘れずにいたいと思います。
……さて。
人をだますために言葉を考えるくらいなら、物語を書きませんか?
悪役なら、物語の中にいくらでも登場させられます。
なんなら、作者の権限で大変な目に遭わせることだってできます(笑)。
というわけで、そこのあなた。
読むだけでも、もちろん大歓迎。
感想を書くのも、立派な物語への参加です。
でも、もし心のどこかに「自分でも書いてみたい」という気持ちがあるのなら……。
みんな、小説家にならないか?(笑)
誰かを傷つける言葉ではなく、誰かの心に届く言葉を。
そんな言葉が、ひとつでも増えますように。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。ヽ(=´▽`=)ノ<小説家になろうラブ♡




