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運命の出逢いは囚われて

作者: 栗子。
掲載日:2026/05/24

こちらでは初投稿です。

ー運命の出逢いは囚われてー


この世界には、男女の性の他に、バース性というものがある。


α、β、Ωの三つの性があり、そ中でもαとΩは本能的に惹かれ会う“運命の番”という強い絆で結ばれているのだ。


そしてこれは“運命の番”を得たとある夫婦の物語である。






※※


朝、目が覚めると愛しい妻が可愛い寝息を立てて眠っている。

夫の名は樫森 優也、30歳。妻の名は葉月で26歳。

結婚してまだ半年の新婚夫婦だ。


二人の出会いは一年前に遡る。


優也は内科の医者であり、市内の病院に勤務している。

出会いは優也の勤める病院で、彼女は当初、患者としてやって来た。


「なんだか熱っぽくて……」


風邪を引いた彼女が診察室に来た瞬間、優也は運命的な縁を感じた。

今まで患者に対して誠実、平等な気持ちで接していたのだか、葉月の来訪により全ての感情が放棄された。


可愛い、愛らしい、好き。


三拍子のように彼の頭の中は彼女のことでいっぱいになる。


「……先生?」


不審に思った葉月が優也の前で手をひらひらとさせ、意識を戻させる。

我に返った彼は今は医者と患者、という線引きをし、治療にあたった。

そして彼女が診察を終えて帰る姿を発見すると、優也は急いで彼女の元へ駆けつける。


「あの!」


もちろん葉月は病人としてここへ(病院に)来ているので早くお薬を受け取り、帰りたそうな顔をしている。


「なんでしょうか?先生」


それでも律儀に自分の行動を咎めることなく対応してくれる彼女の寛大さに優也はこの上なく幸せな気持ちになる。


「あの……倉科さん」

「はい」

「お大事にしてください。それと、僕とお付き合いしてください!」

「は?」


労りの言葉からいきなりの告白。

葉月は開いた口が塞がらなかった。

この先生、この男は危ない人、それが葉月の中に生まれた優也への第一印象だった。








樫森 優也は産まれついてのα性だった。

両親の薦めもあり、自身も医療分野に携わりたいという思いもあったので、医大を卒業。そして研修医期間を経て内科のドクターになったのだ。

内科医として勤務して早二年。

ようやく医者として慣れてきた矢先の出会いだった。


倉科 葉月、彼女は先天性からのΩ性である。

両親はβ同士だったというのに自分だけがなぜΩなのか、思春期にはもしかして本当の両親ではないのかもと疑って喧嘩してしまったこともあった。

だが、彼女の祖母がΩだったことがわかり、覚醒遺伝でなったかも知れないと思うようになっていった。

思春期の時期に突入した際、もう一つ気をつけなければならないことがあった。

それはΩ性の発情期だった。


発情期に備えて薬をいつも持参していたものの、いざ発情してしまうと飲むタイミングがズレ、なかなかコントロールができなかった。

なのでα性の男子生徒を誘惑するフェロモンが出てしまい、襲われそうになったことがあった。

その経験から葉月は男性に対してあまり良い印象を持っていなかった。


時は流れ、彼女は大学を卒業し、一般企業へと就職する。

そこは学生時代と違い、同じΩ性の者やβ性の者、トップにはやはりα性の者が君臨していたが、それなりに働き安い職場であったので、良いところに入社できたなと思っていた。


勤め出して二年、体調不良で訪れた病院でまさかの告白を受けるとは、葉月自身、思いもしなかったであろう。




その後、二人は運命の番だったことが明らかになる。



最初は嘘だと思った葉月であったが話してみると優也はとても理解のある男性だと言うことに気づく。

学生時代の男子とは違うことに気づき、少しずつ、二人の距離は近づき、やがて付き合い出して一年が経とうとした頃だった。


その日は優也の仕事が長引き、待ち合わせ場所に2時間も遅刻してしまった。

連絡を入れていたとはいえ、葉月は機嫌が悪かった。


「ごめん、葉月。遅くなりすぎたよね……」


待ち合わせたレストランは閉店間近であり、結局何も食べずに出ることになる。


「ずっと待ってたのに……」


不機嫌な態度をとる葉月に、優也は申し訳ないと必死に謝ってくれる。

葉月も本当はわかっていた、彼の仕事は命を預かる大切なお仕事だ。

自分の気持ちだけで彼を振り回してはいけないことも。

葉月は頭を下げて謝罪する優也の頭を上げさせ、こちらこそごめんねと謝った。


「心の狭い彼女でごめん、優也」

「葉月!」


優也は立ち上がり、葉月を抱きしめた。

ここが道中の、公衆の面前だというのに彼は嬉しさのあまり抱擁してしまったのだ。


「ちょ、ちょっと優也!」


こんなど真ん中で抱きついたら恥ずかしいじゃない!の葉月の声は聞こえていないのか、しばらく抱きしめたのち優也は葉月から離れた。


「お腹、空いたね、近くのファミレスで何か食べよう」


さっきのレストランより豪華さは減っちゃうけどと優也は苦笑いする。


「しょうがない!食べに行ってあげるかな」


葉月も彼の話しに乗り、ファミレスに食事をしに行くのだった。



食事を終え、綺麗な星空の瞬く公園のベンチにて、改めて優也が遅くなった理由を教えてくれた。


「急患があって、その対応に追われていたんだ、でも、連絡ぐらい入れるべきだった」


本当にごめんねと葉月に再度謝罪の言葉を述べる。


「もういいよ、優也。私も、わかってるから」


彼の仕事は生命を扱う大切なお仕事だ。


優先度が自分ではないことはわかっている……つもりだ。

けれど、葉月にとってどうしても彼の一番隣にいたいと願ってしまう。

そんな葉月の気持ちが伝わったのか、優也は彼女をそっと抱きしめた。


「優也?」

「寂しい思いさせてごめん。我慢させてごめん。そして……」


優也は葉月の顔を見て話す。


「これから僕と一緒に過ごすことに、ごめん」

「え?」


(一緒に過ごす?ごめんって謝られて……)


「それって……」


葉月は目を瞬かせた。


優也は頷く。


「倉科 葉月さん、僕の隣に一生、いてください」


それはすなわち、愛の告白という名のプロポーズだった。


葉月は目を閉じ、そして開く。


「はい、私に囚われてください」

「な、なっ、囚わ……」


彼の返事を待たずに葉月は彼の唇にキスをした。

それは待たされたことへの仕返し、そしてプロポーズの答えだった。


「んんっ」


唇の間を割ってお互いの舌が絡む。

熱いくらいの接吻に、互いの温度は上がってゆく。


唇を離すと葉月は笑う。





これからどうぞよろしく、旦那さま。








おしまい。





お読みくださりありがとうございました。

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