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びしょ濡れでしょぼくれて、気がそこそこ立っていた。
隣を見るとカラッとした姿が目につき、思わず声を上げた。
「あーあ、いいよねぇ。カラカラしてスッキリできて」
「……それ、俺に向けて言ってる?」
相手はピリッとした声色で返す。
まさか返答が来るとも思っていなかったので、少し声が強張ってしまう。
「そう、ね。純粋にいいなと思ったのよ、晴天の中歩くのってすごく楽しそうじゃない」
「はぁ、そうやって見えているものでしか考えられないから退屈なんじゃないの?」
「はぁ⁉︎」
あまりのひねくれた返事に、つい声が出る。
「考えてもみろよ、ずっと炎天下にさらされるの気持ちを。太陽光が直に当たってみろ、触れたもんじゃない」
「確かに……そう言われればそうね」
「しかも、だ。黒は光を吸収するから余計になんだ」
「……考えれば考えるほど嫌ね」
改めて、置かれた状況を考えるとあまりいいとは思えなくなった。
しかしそれはこちらにも言えることだ。
「でもこうも毎回びしょ濡れになるのも考えものよ」
「確かにな」
「最近は特に。生乾きのままだとにおいも気になるし」
「あー……、こっちにはない悩みだな」
「でしょう?」
こうしてお互いがお互いの悩みを少し理解したところで、
「じゃあ、お先」
「うん、よかった。雨あがったみたい」
「曇りは紫外線を防ぐために使われるんだ」
「忙しいね」
バサッという音とともに、少女は傘立てにある黒い傘を取り出して拡げた。
先ほどまでの雨はもう上がっていて、鼠色の雲がどんよりとそこに満ちている。
まだ湿り気を残した花柄の傘も、水しぶきを飛ばしながらキュッと結ばれた。
明日は晴天らしい。




