13. 正規ライセンス 2
駐車場に車を停め、僕と五郎おじさんはお菊を連れて本部事務所がある建物の中に入っていく。
「話を通してくるから、よし坊はお菊と一緒にここで座って待っていてくれ」
そうを僕に言うと、おじさんはインフォメーションカウンターへと赴き、受付嬢に用向きを伝えている。
すると程なく、後ろの扉が勢いよく開いたかと思えば、年配の職員が飛び出してきた。
五郎おじさんに対しペコペコ頭を下げている年配の職員。
この職員さんのおかげで、僕の正規ライセンスの交付手続きは瞬く間に終わってしまった。
その敏速な対応はお菊の方も然りで、
丁寧な扱いを受け連れていかれたお菊は、ものの10分ほどで僕たちの元へ帰ってきた。
僕がしていたことといえば、
案内された応接室で、五郎おじさんと二人コーヒーを飲んでいただけである。
日本ダンジョン協会の本部事務所においても、下に置かない対応を受けている五郎おじさん。
僕はそんな五郎おじさんが少し誇らしく思えた。
――帰りの車内――
「いや~、早かったな。運転免許の更新よりも早かったぞ。ライセンスも即日交付だったし、これで吉十も一人前の探索者だな」
「ありがとう五郎おじさん。僕、これからも頑張るよ」
「おう、がんばれ がんばれ!」
「うん!」
「それからコレ、忘れんうちに渡しておくぞ。俺からのお祝いだ!」
「これは?」
「鑑定の腕輪だ。手に触れた物の鑑定ができる。まあ、できると言っても初級鑑定だけなんだけどな」
「えっ、これってダンジョン産の装備品じゃないの?」
「お、流石に知ってるか。2個もってるから1個やるよ」
「…………」
1個やるよって、そんな気軽に渡せる物なの?
世界にダンジョンが広がりつつある今の現状で、
ダンジョン産の装備品なんかオークションに出したら、とんでもない値が付くと思うんだけど。
「それがあれば、お菊のステータスだって読むことができるぞ」
「ありがたく頂戴いたします」
車の後部座席から頭を下げ、両手で鑑定の腕輪を受け取った。
「それで、来る途中にした話になるんだけど、アメリカはどうして日本をねらっているの?」
「ん~、まあ、ここだけの話にしておいてくれよ」
「うん」
「日本のダンジョンには転移台座が付いているだろう」
「うん、あれって便利だよね。区切りのいいところまで進めば、上の階層であっても日帰りが可能になるからね」
「…………」
「もしかして、外国のダンジョンにはそれがないの?」
運転しながらコクリとうなずく五郎おじさん。
「それからなぁ、モンスターを倒してもあんなに多彩なドロップ品は出ないんだよ」
「ええ~、それじゃあポーションや単発魔法のスクロールとかも出ないの?」
「出ないな。日本じゃ1階層のモンスターから落ちるダンジョン・スチールですら未だに確認されていないそうだ」
「へ~、それは難儀なことだね」
「難儀どころの騒ぎじゃないぞ」
「んん~、でも、なんでそんなに違うのさ。同じダンジョンじゃないの?」
「おそらく、もともとは同じダンジョンだな」
「ならどうして?」
「うん、それはだな……」
「それは?」
「…………」
「???」
「俺や犬たちがなぜスキルや魔法が使えると思う?」
五郎おじさんは僕の質問に答えることなく、違う話を振ってきた。
「そ、それはダンジョンの恩恵でしょう。ダンジョンに初めて入った時にランダムにスキルが振られているんだよね。教本にもそう書いてあったけど」
「まあ、一般的にはそういうことになっているわな。実際にスキルを発現させるやつも多いから」
「魔法は違うの?」
「そうだ。魔法を使うためには3つのスキルが必要になるんだ」
「まずは、魔法適性のスキル。こいつは先天性で、生まれながらにして備わっていると言われている」
「次が魔力操作のスキル。これは努力次第で誰でも習得できるが、魔力を感知するまでが大変なんだ」
「そして最後が、行使する魔法自体のスキルだ。これは専門の魔法士に付いて訓練すれば、いずれスキルが発現する」
「ちょっと待ってよ! 僕のステータスにも魔法適性のスキルと魔力操作のスキルがあるんだけど。これってダンジョンに入ったからもらえたスキルじゃないの? それに特殊スキルってのもあるんだけど?」
「その魔法適性と特殊スキルは以前に聖獣様がくれたものだろうな」
「えっ、ええっ、聖獣様ってなに? 僕はいつ、その聖獣様に会ったの?」
「さ~て、いつだろうな。ダンジョンに入ってりゃ、そのうち中でばったりなんてこともあるかもしれんぞ」
「えっ、そこは教えてくれないんだ。じゃあ魔力操作の方はどうして? 最初からスキルレベルが3なんておかしいよね?」
「そりゃおめー、小さい頃からよくパンチとジョンに絡んで遊んでたからじゃねーか?」
「そういえば、昔よくお腹を押さえて何かを流し合ってたような……」
「それだな。何かじゃなくて、それが魔力だな」
「へぇー、あの感覚が魔力なのか……」
「その魔力を回しながら身体全体に行き渡らせることで『身体強化』のスキルも取れるぞ」
「どのくらい強化されるの?」
「うーん、強化比は身体レベルとの兼ね合いもあって一概には言えないんだが……。強化されるのは筋力、防御、魔防の三つだな。身体強化レベル1で10%、レベル2で20%、概ねそんな感じで上がっていくな。感覚としてはスーパーサイヤ人のあれだ」
スーパーサイヤ人……ね。もなかが聞いたら喜びそうだ。
「たぶんお菊も習得できると思うぞ。今晩からでも一緒に訓練してみたらどうだ」
「うん、そうだね。寝る前にでもやってみるよ」
「それでさ、五郎おじさん。コレなんだけど……」
「ん、なんだ。指輪か? !!!」
「おじさん?」
「ちょっと待て。車を止めるから」
五郎おじさんは適当な路地に車を入ると、100円パーキングを見つけてそこで車を止めた。
「すこし休憩しよう。コーヒーの微糖でいいか?」
「うん」
僕は自分の荷物から犬用の水筒を出し、お菊にも水を飲ませた。
「で、吉十はコレをどこで手に入れたんだ?」
「うん、信じられないと思うけど、それは犬からもらったんだ。うちの近くにある木場公園で」
「ポータルがあるところだな」
「うん、そう。お菊の散歩中に、よく出会う犬がいて。黒い柴犬なんだけど」
五郎おじさんは僕の話を聞きながら額に手を当て頭を抱えている。
「犬からもらった……か。それで吉十はこれがどういう物かわかっているのか?」
「それってダンジョンの装備品だよね。指にはめたらMPが20も跳ね上がるんだ!」
「はぁ~、だよな。俺も同じものを持っている」
五郎おじさんはボールチェーンでつないだリングを胸元から引き出し、僕に見せてくれた。
「五郎おじさんも犬からもらったの?」
「いいや、俺は人からだったけどな」
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黒まろがくれたマジック・リング
純ミスリル
●体内MP+20
●MPの回復量が5倍に上がる
●魔法の発動体になる
●訓練次第で無属性の魔力弾が撃てるようになる
お読み頂きましてありがとうございます。
次回をお楽しみに!




