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灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う  作者: 夜詩榮


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第6話:王都での生活と初めての友人(クリスティン)

あらすじ

ヴァイスブルク家は王都の屋敷に居を移し、双子は10歳で王立魔法学園に入学するまでの準備期間をスタートさせる。リーゼロッテとアウローラは、王都の華やかな貴族社会の常識を学びつつ、その規格外の能力の片鱗を見せて周囲の注目を集め始める。そんな中、二人は王都の図書館で、気弱だが心優しい子爵令嬢、クリスティン・ノイマンと出会う。治癒魔法を志すクリスティンとの出会いは、双子にとって大きな影響を与えることになる。

本編


アースガルド王国の王都――『エルムガルド』。

地方貴族の小さな領都とは比べ物にならないほど、活気と華やかさに満ち溢れた巨大都市だった。王城を中心に、美しい石畳の道が広がり、豪華絢爛な貴族の屋敷が立ち並ぶ。

ヴァイスブルク家が新たに居を構えたのは、王都でも比較的静かな一角にある、こじんまりとした屋敷だった。

「わー! すごい! 領地とは全然違うね! 人も馬車もいっぱいだ!」

リーゼロッテは、王都の賑わいに目を輝かせていた。彼女の赤い金髪は、王都の貴族令嬢たちの中でも一際目立っている。

「本当に賑やかね。人の魔力や、様々な思惑が渦巻いているのがよく分かるわ」

アウローラは、静かに王都の空気を感じ取っていた。人々の魔力反応や、その視線の動きを分析するのは、彼女の得意とするところだ。彼女の銀色の髪は、王都の貴族令嬢の中でも、一種の神秘的な美しさとして際立っていた。

地方から出てきたヴァイスブルク子爵家だが、オスカーが王都に移り住む目的は、娘たちの学園入学という大義名分があったため、周囲も比較的友好的に迎え入れた。

しかし、幼い双子の規格外の才能は、すぐに貴族社会の噂の的となった。

ある日、リーゼロッテは、近所の貴族の子供たちと庭で遊んでいた際、勢い余って小さな噴水を誤って破壊しそうになった。

「あ、やばい!」

彼女が焦って魔力を抑え込もうとした瞬間、放出された風の魔力**『超速の体術』**の衝撃波だけで、噴水周りの大きな植木が根元からへし折れてしまったのだ。

「ひぃっ! 恐ろしい力だわ!」

「なんて野蛮な……あれがヴァイスブルクの娘か!」

その場にいた子供たちは悲鳴を上げ、大人たちはリーゼロッテを恐れるように遠巻きにした。

「もう! リーゼったら、また余計なことして!」

その場に居合わせたアウローラは、すぐに土の魔法で地面を修復し、氷の魔力で折れた植木の周りを冷却して鎮火したかのように見せかけたが、一度広まった噂を止めることは難しい。

「リーゼロッテ、アウローラ。君たちの力は、やはりこの王都でも目立ちすぎる。学園に入るまでは、極力、能力の使用は控えなさい」オスカーは、娘たちの才能が災いとならないか、常に頭を悩ませていた。

「わかってるけど、つい体が動いちゃうんだもん!」リーゼロッテは頬を膨らませる。

「リーゼの反射的な行動が、貴族社会で許されないことは理解しなさい。貴族社会で求められるのは**『優雅さ』と『理性』**よ」

アウローラは、貴族社会の慣習を本で学び、それを完璧にこなそうと努めていた。彼女の冷静沈着な態度と、銀髪の神秘的な美しさは、すぐに一部の貴族から「氷の才女」として注目され始めていた。

王都に移り住んで数ヶ月。双子は、主に家庭教師による基礎学問と、秘密の訓練場での能力訓練を続けていた。

ある晴れた日の午後、二人は王都最大の図書館を訪れていた。リーゼロッテは武術に関する古文書を、アウローラは魔法学やこの世界の歴史に関する書物を求めていた。

「ねえ、アウローラ。この**『古流体術の秘伝』**って本、なんだかうちの空手の型に似てる気がするんだよね!」

リーゼロッテが分厚い本を抱えてアウローラに話しかけようとしたその時、彼女は一人の少女の姿に気づいた。

その少女は、少し離れた棚の隅で、分厚い治癒魔法の専門書を読んでいた。栗色の髪をしたその少女は、周りの貴族の子供たちとは違い、どこか自信なさげで、本を持つ手がかすかに震えている。

少女が立ち上がろうとした瞬間、彼女の手に持っていた専門書がバランスを崩し、棚から雪崩のように落ちてきた。

「ああっ!」少女は小さな悲鳴を上げた。

ドササッ!

本が大量に落ち、少女の頭上を襲おうとした瞬間、リーゼロッテの体が動いた。

「危ない!」

リーゼロッテは考える間もなく、風の魔力を使わずに、純粋な体術の速さだけで少女の前に飛び込んだ。そして、落ちてくる大量の本を、卓越した反射神経と正確な手のひらの動きで、全て受け止め、元の棚に押し戻したのだ。

「はぁ、はぁ……間に合った。大丈夫?」

リーゼロッテの速すぎる動きと、子供にはありえない怪力に、周囲にいた人々は唖然としていた。

本を落とした少女は、驚きのあまり、リーゼロッテを呆然と見上げていた。

「あ……あ、あの……ありがとうございます!」

少女は真っ赤な顔になりながら、震える声でお礼を言った。

「ううん、大丈夫! びっくりしたね。危ないから、本はちゃんと抱えてね!」

リーゼロッテは屈託のない笑顔を向けた。

アウローラもすぐに駆けつけ、少女を静かに観察した。少女の魔力は穏やかで、優しく、確かに治癒魔法に適した性質を持っていた。

「ごきげんよう。姉が失礼いたしました。本は無事でしたか?」アウローラは優雅に挨拶をした。

「は、はい……私は、クリスティン・ノイマンと申します。子爵家の娘です……。あ、あなた方は……」

「私たちは、ヴァイスブルクの双子よ。姉のリーゼロッテと、妹のアウローラ」

クリスティン・ノイマン。それが、王都に来て、双子ができた初めての友人だった。

クリスティンは、気弱で内向的な性格だったが、その心は優しく、何よりも治癒師になることを強く願っていた。

「治癒魔法、ですか。すごいですね。リーゼロッテは攻撃魔法、私は防御と戦略が主ですから、あなたの力は私たちにはない、とても大切な力です」アウローラは、クリスティンの才能を素直に称賛した。

クリスティンは褒められたことに驚きながらも、嬉しそうに微笑んだ。

「ありがとう……ヴァイスブルク様たちみたいに、派手な魔法は使えないけれど、いつか、怪我で苦しんでいる人を助けられるようになりたいの」

リーゼロッテは、その優しい決意に心打たれた。

「クリスティン! 派手じゃなくてもいいじゃない! その気持ちが、一番強い魔法だよ! 私がもし怪我をしたら、クリスティンに治してもらうからね!」

リーゼロッテの裏表のない明るさに、クリスティンは少しずつ緊張を解き、微笑みを深めた。

王都の図書館での出会い。それは、規格外の力を持つ双子にとって、初めてできた、純粋な優しさを持つ友人の誕生の瞬間だった。この友情が、数年後の学園生活、そして世界の危機に立ち向かう二人の心を、強く支える柱となることを、まだ誰も知らなかった。

次回予告

第7話:規格外の身体能力と兄の努力

王都での生活が定着する中、リーゼロッテの規格外の身体能力が、王都の貴族たちの間で、さらに大きな噂となる。特に、貴族の子供たちが通う剣術道場で、リーゼロッテがアルフレッドの訓練を見て、無意識に驚異的な体術を披露してしまう。兄アルフレッドは、妹の才能に改めて打ちのめされながらも、己の努力を貫き、来る王立魔法学園の試験に向けて、さらなる猛特訓を開始する。

次回、リーゼロッテの体術が王都を驚愕させる!

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