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灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う  作者: 夜詩榮


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第4話 氷の剣術と精密な戦略~アウローラの『絶対零度』の覚醒~

あらすじ

秘密の訓練場で本格的な修行を始めた双子。リーゼロッテは、自身の空手の型を応用することで、炎と風の魔力を完全にコントロールする術を模索する。彼女の『灼熱の拳』と『超速の体術』は、型に魔力を乗せることで、この世界ではありえない、魔法と武術が融合したオリジナルな戦闘術へと進化を遂げる。しかし、その圧倒的な破壊力は訓練場を破壊寸前に追い込み、妹アウローラが緊急で介入する事態に発展する。

本編


灼熱の炎と凄まじい風の轟音が響き渡る訓練場の一角で、アウローラは静かに瞑想していた。姉リーゼロッテが荒々しい武術と魔法の融合を試みている傍らで、アウローラの修行は、静寂と精密さを極めるものだった。

「リーゼの炎は強力だけど、常に周囲に魔力を拡散させている。私の目指すは、一点集中よ」

アウローラは、前世で剣道に打ち込んでいた時のように、心身を研ぎ澄ませた。彼女の魔力は、氷(水)と土。いずれも、その性質上、静的で緻密な操作を必要とする。

彼女は、訓練場に落ちていた一本の木の枝を拾い上げ、それを竹刀に見立てた。

「……構え」

アウローラが構えをとると、周囲の空気が一瞬で澄み切ったように感じられた。彼女の銀色の髪が風に揺れるが、その瞳は微動だにしない。

次に、彼女は氷の魔力を枝に流し始めた。リーゼロッテが全身に魔力を纏うのとは対照的に、アウローラは魔力の流れを枝の先端、わずか数センチの領域に限定することに集中した。

キィン……

枝の先端が、まるで純粋なダイヤモンドのように透明に輝き始めた。それは、超高密度の氷の魔力が、一点に凝縮された証拠だった。周囲の湿度が一気に奪われ、地面には瞬時に霜が降りる。

「……面!」

アウローラは、前世で幾度となく打ち込んできた剣道の基本、面打ちの動作を、完璧な姿勢で繰り出した。

シュン!

鋭い音と共に枝が振り下ろされる。枝の先端は、目の前に置かれた小さな水瓶を正確に捉え――触れることもなく――一瞬で通り過ぎた。

リーゼロッテが音と衝撃波を伴う破壊だったのに対し、アウローラの技は、無音の侵蝕だった。

「成功ね」

アウローラが冷静に呟いた瞬間、水瓶は音を立てて砕け散った。中の水は、ガラスの破片が落ちる前に、すでに絶対零度に近い温度で凍りついていたのだ。

「す、すげー! 奏……じゃなくて、アウローラ! 触れてないのに、氷になっちゃった!」

リーゼロッテが驚嘆の声を上げた。彼女の『灼熱の型』が破壊の力であるなら、アウローラのこれは支配の力だ。

アウローラは静かに木の枝を下ろした。

「これが、魔力を一点に集中し、対象の分子運動を停止させる『絶対零度のグラキエス・ブレイド』の応用技、**『氷結の斬撃フリーズ・スラッシュ』**よ。この精密さは、私の剣道の技術があったからこそ実現できたわ」

彼女の魔力操作の精密さは、考えるより体が動くリーゼロッテの追随を許さないものだった。

さらにアウローラは、もう一つのチート能力である土の魔法の制御にも取り組んだ。

「そして、リーゼ。私の強みは、この頭脳と戦略にある。魔法は、単なる攻撃手段ではないわ」

アウローラは地面に手をかざした。

ガガッ……

訓練場の地面の数メートル先の土が、わずかに隆起し、高さ数十センチの小さな壁を形成した。それはただの壁ではない。その表面は岩のように固く、リーゼロッテの『灼熱の型』が当たっても耐えられるように、土の魔力で高度に強化されていた。

「『鉄壁の防御・地形操作フォルティス・テラ』の応用よ。相手の進路を限定し、足場を不安定にさせ、私が有利な戦場を作り出す。これもまた、剣道で相手の『間合い』と『動き』を読む訓練の応用」

リーゼロッテは感心しきりだ。

「すっげぇ……。私の超速の体術で避けても、その壁のせいで、逃げ道が限定されちゃうじゃん!」

アウローラは、冷静に姉の能力を分析し、それを封じる戦略を、既に土魔法によって形にしていた。彼女こそが、真の**戦略家タクティシャン**だった。

数週間の修行を経て、双子の能力は目覚ましい進化を遂げた。リーゼロッテは爆発力を、アウローラは精密な制御力を、それぞれ極めた。

「よし、リーゼロッテ。アウローラ。君たちの能力は、すでに並の騎士や魔術師を凌駕している。しかし、実戦でどれだけ応用できるか、試す必要がある」

父オスカーは、秘密の訓練場に姿を見せ、双子に提案した。

「君たち二人が、それぞれ持てる力の全てを出し合い、模擬戦を行え。これは、魔力制御の訓練と、実戦的な応用を学ぶための、大切なステップだ」

「模擬戦! やったー! アウローラ、手加減しないからね!」リーゼロッテは目を輝かせ、戦闘意欲を剥き出しにした。

「望むところよ、リーゼ。勝敗は、力の差だけでは決まらないことを教えてあげる」アウローラもまた、静かな闘志を燃やしていた。

オスカーが開始の合図を出すと、二人は互いに距離を取った。

ドォン!

先に動いたのは、リーゼロッテだった。風の魔力で肉体を強化した『超速の体術』により、彼女の姿は一瞬で霞んだ。時速数十キロに達するその突進は、5歳の少女が出せる速度ではない。

「型:炎ノ流・二ノ太刀にのたち!」

リーゼロッテは、一直線にアウローラへ向かい、灼熱の気を纏ったストレートを打ち込む!

しかし、アウローラは動じなかった。

「甘いわ、リーゼ。あなたの動きは速すぎる故に、**単純シンプル**よ」

アウローラは、事前に魔法で硬化させておいた地面を、片足で軽く蹴る。

ガリガリッ!

リーゼロッテの突進ルートのわずか数十センチ手前で、地面から小さな氷の杭が瞬時に生成され、彼女の進路を遮った。

「うわっ!」

超高速で走っていたリーゼロッテは、急激なストップを強いられる。風の魔力で無理やり軌道を逸らし、氷の杭を避けたが、その一瞬の減速が、アウローラに**『間合い』**を与えた。

「もらったわ! 氷結の斬撃フリーズ・スラッシュ!」

アウローラは木の枝を真横に薙ぎ払った。その瞬間、リーゼロッテの眼前を、目に見えない極冷の波動が通過する。

リーゼロッテは直感的に、その攻撃が危険だと察知した。彼女は全身の炎の魔力を解放し、熱のバリアを発生させて、冷気から身を守ろうとする。

シュー……

冷気と熱気が激突し、凄まじい水蒸気が発生する。訓練場全体が、白く濃い霧に包まれた。

姉の直感と、妹の戦略が激突する初めての模擬戦。二人のチート姉妹の戦いは、すでに、この世界の常識をはるかに超えたレベルに達していた。

次回予告

第5話:天才と努力の距離~兄アルフレッドの決意~

模擬戦の結末は、妹たちの連携と戦術によって決着を迎える。しかし、その圧倒的な力量差を目の当たりにした父オスカーは、娘たちの力をより有効活用するための**「次のステップ」を考え始める。一方、兄アルフレッドは、妹たちの規格外の力に打ちのめされながらも、己の道を究めることを決意。彼は、王都の王立魔法学園**への入学を目指し、その準備を始める。そして、双子もまた、学園入学へ向けた最初の準備を始めることに。

次回、ヴァイスブルク家、王都へ向かう!

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