表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う  作者: 夜詩榮


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/21

第3話 武術と魔法の融合~リーゼロッテの『灼熱の型』~

あらすじ

秘密の訓練場で本格的な修行を始めた双子。リーゼロッテは、自身の空手の型を応用することで、炎と風の魔力を完全にコントロールする術を模索する。彼女の『灼熱の拳』と『超速の体術』は、型に魔力を乗せることで、この世界ではありえない、魔法と武術が融合したオリジナルな戦闘術へと進化を遂げる。しかし、その圧倒的な破壊力は訓練場を破壊寸前に追い込み、妹アウローラが緊急で介入する事態に発展する。

本編


ヴァイスブルク領地の奥深く、人里離れた森の中に、ひっそりと隠された秘密の訓練場があった。周囲には母イザベラが張ったシンプルな隠蔽結界が施されている。その内部で、リーゼロッテとアウローラは、チート能力を完全に制御し、異世界の戦闘術として昇華させるための修行に励んでいた。

「ふんっ! せいやっ!」

リーゼロッテは、裸足で地面を力強く蹴り、空手の基本的な型の一つである「正拳突き」を繰り出した。体はまだ5歳の幼い少女のものだが、その動きは、前世で黒帯を締めていた頃の、研ぎ澄まされた武人のそれだった。

「リーゼ、ただの突きじゃなくて、魔力を乗せて! ほら、丹田から放出する感覚を意識するの!」

アウローラは、訓練場の中央で、木の棒を竹刀に見立てて素振りをしながら、姉に鋭く指示を出す。彼女自身も、剣道の素振りに氷の魔力を乗せる訓練を並行して行っていた。

「わかってるけど、これが難しいんだよ! 力を抜きすぎると、ただのパンチになっちゃうし、力を入れすぎると……」

ボォン!

リーゼロッテが力の加減を誤った瞬間、彼女の拳の先に、小さな火の玉が出現し、爆ぜた。訓練場の土が、熱で黒く焦げる。

「ほら見なさい! 爆発は魔法じゃないわ、リーゼ! あれはただの魔力暴走よ!」アウローラはため息をついた。

リーゼロッテの能力の核は、空手という動的で爆発的な武術にある。魔法として具現化した『灼熱の拳』と『超速の体術』は、彼女の感情や動きと連動して発動する。静かに魔力を練るよりも、激しい動きの中で魔力を制御する方が、彼女には合っていた。

リーゼロッテはハッと閃いた。

(そうだ、型だ! 技の一つ一つに意味を持たせて、魔力の通り道を限定するんだ!)

空手には、流派ごとに定められた型がある。その一つ一つの動作には、攻撃と防御、体捌きの全てが凝縮されている。リーゼロッテは、その型の動作一つ一つに、魔力の流れを意味付けすることを試みた。

深呼吸をし、魔力を体内に巡らせる。彼女の体内で、炎の魔力が血管のように熱く脈動するのを感じた。

「型:炎ノ流・一ノ太刀いちのたち!」

リーゼロッテはそう叫ぶと、姿勢を低くし、一気に踏み込んだ。

ドッ!

地面を蹴る音は、もはや子供の踏み込みではない。風の魔法『超速の体術』の魔力が脚部に集中し、超高速の移動を可能にする。彼女の姿は、残像を残して消え、次の瞬間には、訓練場の端に移動していた。

そして、移動の勢いを乗せたまま、彼女は渾身の力を込めて中段突きを繰り出した。

ギュルルルッ! ゴウッ!

拳から発せられたのは、火の玉ではない。それは、拳の形を保ったまま、渦を巻きながら飛んでいく灼熱の風の塊だった。魔力は、彼女の型という**『枠』**によって完璧に制御され、拡散せずに、強力な一撃として昇華されていた。

炎と風の魔力が融合した、**『灼熱のイグニス・スタイル』**の誕生だった。

灼熱の風の塊が着弾したのは、訓練場の隅に立てられた、魔力耐性のある特殊な岩の的だった。

ドォオオオオン!

凄まじい轟音と共に、岩の的の表面は一瞬で溶け、深いクレーターができあがった。熱気と衝撃波が訓練場全体に広がり、周囲の木々は激しく揺れた。

リーゼロッテは、自分が放った力の大きさに、思わず息を呑んだ。

「やった……! 成功だ、アウローラ! 私の拳の型に、炎と風の魔力を乗せることができた!」

興奮気味に振り返ったリーゼロッテに対し、アウローラは表情を硬くしていた。

「成功……かもしれないけれど、リーゼ! 破壊力が大きすぎるわ! それに、今の反動で、あなたの右腕の魔力の流れが乱れている!」

アウローラはすぐに姉に駆け寄る。彼女の鋭い観察眼は、リーゼロッテの体内の微細な魔力異常を見逃さなかった。

「うっ……たしかに、ちょっと腕がジンジンする」

型に魔力を込めることには成功したが、その際に発生する反動と魔力のロスが大きすぎる。このままでは、数発で体が限界を迎えてしまう。

アウローラは、冷静な思考で状況を分析した。

(リーゼの能力は、武術による動作の正確性と、魔力の瞬間的な爆発力を両立している。でも、彼女は力任せに魔力を出す傾向があるわ。それを補うには……)

アウローラは、リーゼロッテの焦げた右腕にそっと触れた。同時に、自身の土の魔法の魔力を、姉の腕へと流し込む。

「『鉄壁の防御フォルティス・テラ』……土の魔力は、防御だけでなく、身体の安定と構造の強化にも使えるはずよ」

アウローラが土の魔力を流し込むと、リーゼロッテの腕の骨と筋肉が、まるで硬い鎧を纏ったかのように安定した。魔力経路の乱れが抑えられ、ジンジンする痛みも和らいでいく。

「わぁ! すごい、アウローラ! なんか、腕が硬くなった気がする!」

「これは一時的なものよ。リーゼは、自分の肉体の限界を理解し、魔法の力を体内で留める練習が必要だわ。私が土の魔法で、あなたの肉体を魔法に対する**『盾』**として強化し続けるから、あなたは、その限界を打ち破るまで、型を打ち続けなさい」

アウローラの提案は、姉の攻撃力を最大限に引き出し、妹の防御力でそれを支えるという、二人の能力を完璧に融合させた修行法だった。前世から培ってきた姉妹の信頼と連携が、異世界で最強のチート能力を形作ろうとしていた。

リーゼロッテは力強く頷いた。

「わかった! じゃあ、今度はもっと速く、もっと強く行くよ!」

再びリーゼロッテは、型を繰り出す。風の魔力で加速し、炎の魔力で拳を強化する。その動作の一つ一つを、アウローラの土の魔力による身体強化が支える。

ドッ! ゴウッ! ドンッ!

訓練場には、轟音と熱気が満ち溢れた。二人の規格外の修行は、人知れず、着実に進んでいった。

その頃、屋敷の庭では、兄アルフレッドが、父オスカーと共に剣術の猛特訓を続けていた。

「はぁ……はぁ……」

アルフレッドは疲労困憊で剣を支えるのがやっとだった。父の剣は、いつも彼の僅かな隙を正確に突いてくる。

「アルフレッド、集中しろ! 剣の道は、一瞬の気の緩みが命取りとなる。お前が目指す騎士の剣は、家族を守るためのものだろう!」

「はい、父上!」

アルフレッドの心の中には、二人の妹の存在が常にあった。彼には妹たちのチート能力はないが、彼が選んだ騎士の道を究めることで、いつか必ず、二人の力になれると信じていた。彼の真摯な努力は、着実に彼の剣を磨き上げていた。

ヴァイスブルク家は、それぞれが持つ力と志を研ぎ澄ませる、静かなる鍛錬の日々を送っていた。

次回予告

第4話:氷の剣術と精密な戦略~アウローラの『絶対零度』の覚醒~

今度は妹アウローラの修行ターン。彼女は剣道で培った精密な技術と戦略を応用し、氷/水の魔法『絶対零度の剣』と土の魔法『地形操作』の能力を融合させる。アウローラは、魔力を剣の先端一点に凝縮し、触れるものを凍結させる**『氷結の斬撃』**を生み出す。その精密な魔力操作は、姉リーゼロッテをも凌駕する。そして、双子は初めての実戦的な模擬戦を行うことになる。

次回、冷徹な戦略家、アウローラ覚醒!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ