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灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う  作者: 夜詩榮


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第2話 初めての魔力暴走と修行開始

あらすじ

双子は5歳になり、チート能力である魔力の制御に本格的に取り組む。しかし、姉リーゼロッテの『灼熱の拳』が感情の昂ぶりとともに暴走し、屋敷の庭を焼失させる騒ぎを起こしてしまう。この規格外の力を隠し、正しく伸ばすため、母イザベラの提案で、二人は本格的な秘密修行を開始する。一方、兄アルフレッドも、妹たちに追いつこうと己の剣の道を究めようと決意する。

本編


リーゼロッテとアウローラが5歳になった春。ヴァイスブルク子爵家の庭は、目にも鮮やかな花々が咲き誇り、穏やかな時が流れていた。しかし、この一見平和な日常の裏で、二人の双子は自身の規格外の魔力と日々格闘していた。

「くっそー、なんで上手くいかないんだ!」

庭の奥にある誰も使わない小さな訓練場で、リーゼロッテが悔しそうに唸った。彼女の目の前には、魔力でできた小さな光の玉が浮遊している。これは、魔力のコントロールの初歩、魔力を体外に出して維持する訓練だ。

だが、リーゼロッテの光の玉は、すぐに熱を持ち、ボッという音と共に燃え上がり、消えてしまう。彼女の魔力は、あまりにも熱く、強大すぎるのだ。

「リーゼ、感情を落ち着かせて。あなたの魔力は『炎』と『風』。常に熱と動きを求めているわ。無理に静止させようとするのではなく、流れを最小限に抑えることを意識しなさい」

アウローラは冷静に助言する。彼女の前に浮かぶ光の玉は、姉のものとは対照的に、周囲の空気を冷やし、澄んだ水の膜のように安定していた。アウローラは前世の剣道で培った集中力と精密さを、魔力制御に完璧に活かしていた。

「それができたら苦労しないよ! 奏、じゃなくてアウローラは、いつも簡単にできてずるい!」

リーゼロッテは負けず嫌いの性格が顔を出し、頬を膨らませた。考えるより体が動く彼女にとって、静的な魔力制御は最も苦手な課題だった。

その時、訓練場に、二人の母、イザベラ・ヴァイスブルクが顔を出した。優しい微笑みを浮かべた彼女は、二人が無意識に魔法を使っていることに気づいているが、あえて何も言わずに見守っていた。

「あら、二人とも、そんなに一生懸命遊んで。熱中症にならないようにね」

「お母様!」

リーゼロッテは、無意識に魔力を解放していた。母の優しい声に安堵したせいか、あるいは、上手くいかない苛立ちが一気に爆発したせいか。

次の瞬間、リーゼロッテの体から、激しい熱波が放射された。

ゴオオッ!

小さな訓練場全体が、一瞬でオレンジ色に染まる。リーゼロッテの両拳から、不完全ながらも強大な『灼熱のイグニス・フィスト』の炎が噴き出したのだ。制御しきれない熱と風の魔力が混ざり合い、周囲の木々を激しく揺らし始めた。

「熱い!?」

リーゼロッテは驚愕し、慌てて魔力を抑え込もうとするが、体が熱暴走を起こしているかのように、炎は収まらない。乾燥した木の枝や、訓練場の木製の柵が、たちまち炎に包まれ始めた。

「リーゼ! ダメよ、落ち着いて!」

アウローラはすぐに反応した。冷静沈着な彼女の頭脳が、瞬時に最悪の事態――屋敷への延焼――を計算する。

「『絶対零度のグラキエス・ブレイド』!」

アウローラは両手を前に突き出し、渾身の魔力を放出した。彼女の体から、白い霧が発生し、炎に向かって吹き付ける。それは、超高密度の水の魔力と、極度の冷気を凝縮した魔法だった。

シューッ、ジュワワワッ!

激しい音を立てて、灼熱の炎と絶対零度の冷気が衝突する。大量の水蒸気が発生し、視界を遮るが、アウローラは炎が消えるまで魔力の放出を止めなかった。

数秒後、炎は完全に鎮火した。しかし、訓練場は水浸しになり、木製の柵は焼け焦げ、周囲の草木は、熱で焼かれた部分と、極冷で凍りついた部分が混在する、異様な光景と化していた。

「はぁ……はぁ……」

リーゼロッテは炎を抑え込んだ安堵と、魔力使用による疲労で、その場にへたり込んだ。

イザベラは、娘たちが起こした常識外れの現象を目の当たりにし、顔色一つ変えずに冷静だった。彼女は、治癒魔法で娘たちの疲労を回復させながら、静かに語り始めた。

「リーゼロッテ、アウローラ。あなたたちが持つ力は、普通の子供が持つ力ではないわ。そして、この国で、そんな規格外の力を見せれば、あなたたちを『異物』として恐れ、排除しようとする者が必ず現れるでしょう」

二人は、母の真剣な眼差しに、静かに頷いた。彼女たちは前世の記憶があるため、母の言葉の重みを理解できた。

「だから、この力は、誰にも知られてはいけない秘密よ。お父様も、お兄様も、あなたたちがどれほどの力を秘めているかは、まだ知らない。そして、あなたたちの能力を正しく制御しなければ、いつかあなたたち自身を傷つけることになるわ」

イザベラは、治癒魔法の腕は一流だが、戦闘魔法は不得手だ。しかし、彼女は元平民の治癒師として、多くの魔力使用者を見てきた経験がある。

「あの子たちの能力は、もはや家庭内で教えられるレベルを超えているわ。オスカー様」

その日の夜、イザベラは夫オスカーに、双子の能力の真実を明かし、訓練場の惨状を見せた。

「なんだ、これは……」オスカーは、焼けて凍りついた庭の光景に、言葉を失った。

「リーゼは、炎と風の魔法でこの規模の暴走を。アウローラは、水と氷の魔法で、それを完全に抑え込みました。二人の力は、並の騎士団員を凌駕しています。このままでは、隠しきれなくなる」

イザベラは提案した。

「私たちができるのは、基礎的な魔力制御まで。これからは、あなたたちの前世の知識と、そのチート能力を、この世界で応用するための実践的な修行が必要よ。人目を避けた、秘密の修行場を用意しましょう」

オスカーは、娘たちの命を守るため、そしてその才能を正しく伸ばすため、妻の提案を受け入れた。彼は、自分の知る限りの人脈を使い、人里離れた子爵家の領地の一角に、結界で守られた秘密の訓練施設を用意することにした。

一方、双子の兄、アルフレッド・ヴァイスブルクは、妹たちの持つ底知れない力に、大きな衝撃を受けていた。

訓練場が焼け焦げ、氷に覆われたことを知った彼は、母イザベラが「ちょっとした手違いがあっただけ」と誤魔化した言葉に納得できなかった。彼には、妹たちが何か特別なものを持っていることが、肌で感じ取れていたからだ。

(リーゼとアウローラは、あんなに小さいのに、僕の知らない力を持っている……)

アルフレッドは自室で、愛用の剣を磨きながら、深く考えていた。

彼は次期当主として、剣術の腕には自信があった。しかし、妹たちに秘められた強大な力が、彼の中で焦燥と、それ以上の向上心を生み出していた。

「僕は、ヴァイスブルク家を継ぐ者として、あの子たちを守れるだけの力を持たなければならない」

彼は、決して嫉妬したのではない。ただ、愛する妹たちが持つ規格外の力が、いつか災いを招いた時、彼自身がそれを跳ね除ける盾になりたいと願ったのだ。

アルフレッドは翌朝、父オスカーに頭を下げた。

「父上。僕は、今以上に剣術の訓練に励みたいのです。将来、妹たちを守れる、強靭な騎士になりたい」

オスカーは、長男の真っ直ぐな瞳を見て、深く頷いた。

「わかった。アルフレッド、お前のその心意気は立派だ。私も全力でお前を指導しよう。だが覚えておけ。力が全てではない。人を思いやる心こそが、騎士の剣を強くするのだ」

こうして、ヴァイスブルク家では、双子の秘密のチート修行と、兄アルフレッドの騎士としての猛特訓という、二つの秘密の訓練が並行して始まることになった。

リーゼロッテとアウローラは、力を制御するための静的な訓練から、空手の型や剣道の素振りを応用し、魔力を流しながら動く動的訓練へと移行していく。それは、前世の武術の感覚と、異世界の魔法の力を融合させる、二人だけのオリジナルな修行法だった。

「よーし! これで、暴走しないように、この力を完璧に使いこなしてやる!」

リーゼロッテは、炎のように燃える闘志を瞳に宿す。

「ええ。私たちの力は、必ず、この世界の平和のために使うわ」

アウローラは、冷静な決意を胸に、静かに頷いた。

次回予告

第3話:武術と魔法の融合~リーゼロッテの『灼熱の型』~

秘密の訓練場で修行を始めた双子。リーゼロッテは、空手の型を応用し、魔力を完璧にコントロールする術を模索する。彼女の『灼熱の拳』と『超速の体術』は、型に魔力を乗せることで、異世界の武術として新たな境地を開拓する。しかし、その圧倒的な力は、訓練場を破壊する寸前にまで達し、アウローラが必死にフォローする事態に。

次回、炎の体術が覚醒する!

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