第14話 学園入学~三者三様の未来~
あらすじ
ついに、リーゼロッテとアウローラは10歳になり、兄アルフレッドと共に王立魔法学園に入学する。双子は、規格外の能力とローザ先生から受けた完璧な教養で、瞬く間に学園の注目を集める。アウローラは、その知性で魔法理論を深く理解し、リーゼロッテは、武術と魔法を融合させた**『灼熱の型』を披露して周囲を驚愕させる。一方、努力で道を切り開いた兄アルフレッドは、剣術科で頭角を現し始める。しかし、双子を待ち受けていたのは、公爵令息ゼノンと、彼らを駒と見なすエドワード王子**だった。
本編
アースガルド王立魔法学園。
王都の北側にそびえ立つ、荘厳な学び舎の正門を、リーゼロッテとアウローラ、そして兄アルフレッドがくぐった。アルフレッドは既に寮生活を送っており、この日が正式な妹たちの入学式だった。
「わあ、ここが王立魔法学園! 図書館よりも大きいぞ、アウローラ!」リーゼロッテは興奮を隠せない。
「冷静になりなさい、リーゼ。ここはただの学び舎ではないわ。王国の権力が集まる場所よ」アウローラは、学園の広大な敷地と、すれ違う生徒たちの魔力波動を静かに分析していた。
アルフレッドは、制服に身を包んだ妹たちを見て、誇らしげだった。
「二人とも、おめでとう。僕は騎士を目指す剣術科、君たちは魔術師を目指す魔法科だ。クラスは離れるけれど、何かあればすぐに頼ってくれ」
アルフレッドは、努力で得た自分の居場所を大切にしていた。妹たちの才能には遠く及ばないが、彼もまた、学園の剣術科ではトップクラスの実力者となっていた。
入学式の後、双子は魔法科の教室に案内された。クラス分けは、魔力の性質と才能によって分けられる。リーゼロッテは炎・風の適性、アウローラは氷・土の適性を持っていたが、その規格外の総魔力と優れた知識から、二人は特待生クラスである**『白銀組』**に配属された。
教室に入ると、周囲の生徒たちの視線が一斉に双子に集まった。皆、王都で噂になっていた**『ヴァイスブルクの双子』**に興味津々だ。
初日の授業は、魔法理論の基礎。しかし、教師が提示した古代語の魔法陣の解読問題に対し、アウローラは、手を挙げる。
「先生、その魔法陣は、古代の魔力効率化の理論に基づいていますが、中心部の水の魔力循環経路に構造的欠陥があります。その欠陥を解消するには、土の魔法で基盤を安定させる必要があります」
アウローラは、ローザ先生の特訓で培った知識と、自身の土の魔法の特性を組み合わせ、教師も気づかなかった魔法陣の欠陥を、瞬時に、論理的に指摘したのだ。
教室全体が静まり返った。教師は驚きで目を丸くし、自分の知識が、10歳の少女に凌駕されたことを知った。
「見事だ、アウローラ・ヴァイスブルク嬢! その洞察力と知識は、上級生をも凌駕している!」
アウローラの知性が、初日から学園のトップに立った瞬間だった。
一方、リーゼロッテは、実技の授業で本領を発揮した。
実技の課題は「基礎的な攻撃魔法の放出」。多くの生徒が、火の玉や風の刃を不完全に放出する中、リーゼロッテは静かに構えた。
(ただの火の玉じゃ、つまらない! ローザ先生に教わった『優雅さ』と、私の『型』で!)
リーゼロッテは、空手の**「型」**の動作をゆっくりと優雅に開始した。手のひらを返し、腰を落とすその動作は、まるで舞踏のように美しい。
そして、動作の終盤、**「正拳突き」**を繰り出した瞬間。
ドォン!
彼女の拳から放たれたのは、不完全な火の玉ではない。炎と風の魔力を完璧に融合させた、螺旋状の灼熱の波動だった。
それは、魔力の流れを緻密に制御し、**『灼熱の型』**として昇華させた、彼女のオリジナルの技だった。攻撃は、標的とされていた分厚い模擬障壁を、一瞬で貫通し、その後ろの訓練場奥の壁に、大きなクレーターを作った。
「な、なんだ、あの魔法は!? 10歳が出せる威力ではない!」
「しかも、あの動作……まるで、武術と魔法が融合しているようだ!」
教師たちは、リーゼロッテの規格外の才能と、その制御技術に衝撃を受けた。リーゼロッテの武の直感が、この世界の魔法の常識を、初日から打ち破ったのだ。
放課後、兄アルフレッドが、妹たちを迎えに来た。彼の剣術科でも、彼はその真摯な努力と、地道な訓練によって、既に上級生からも一目置かれる存在となっていた。
「リーゼ、アウローラ。君たちの噂は、もう剣術科にまで届いているよ。やっぱり君たちはすごい」アルフレッドは、妹たちの才能を素直に称賛した。
しかし、その時、二人の視界に、敵意を持った人物が入ってきた。
ゼノン・ハイゼンベルクと、彼の取り巻きたちだ。
ゼノンもまた、リーゼロッテたちと同じ『白銀組』に配属されていた。彼は、初日から双子に全ての注目を奪われたことに、激しい嫉妬を燃やしていた。
「おお、噂のヴァイスブルクの双子。そして、落ちこぼれの兄もいるとはな」
ゼノンは、あからさまにアルフレッドを侮辱した。アルフレッドは、妹たちの前で侮辱されたことに、悔しそうに顔を歪めた。
「ハイゼンベルク様。私の兄を侮辱することは、許しません」アウローラが静かに前に出た。
「許さない? 面白い。所詮は地方の子爵令嬢だ。学園に入ったからといって、立場が変わると思うなよ」
その時、ゼノンの後ろから、さらに威圧的なオーラを放つ人物が現れた。
第一王子、エドワード・アースガルドだ。
エドワード王子は、双子を品定めするような視線で見つめた。
「ヴァイスブルク令嬢たち。噂以上の才覚だ。アウローラ、君の知性は、私にとって非常に有用だ。リーゼロッテ、君の力も面白い」
王子は、双子の能力を称賛しながらも、その口調には、**「支配」**の意図が明確に含まれていた。
「君たち二人は、今日から私の直属の協力者となれ。そうすれば、ハイゼンベルクのような下賤な嫉妬に悩まされることもないだろう」
王子は、褒美を与えるかのように双子を誘惑した。
双子の学園生活は、初日から、公爵家の敵意と、王子の支配欲という、二つの大きな波乱に巻き込まれることになったのだった。
次回予告
第15話:王子の誘惑と双子の拒絶
エドワード王子は、双子を自分の協力者とするため、様々な豪華な誘惑を仕掛けるが、双子はこれを拒絶する。特に、アウローラは「私たちは、誰の駒にもなりません」と、王子の傲慢な提案を一蹴。この拒絶に激怒したゼノンは、双子に対する最初の実力行使に出る。ゼノンは、自身の得意とする闇魔法を使い、学園の訓練場で双子に挑戦を叩きつける。双子のチート能力は、初めて本格的な敵対魔法と対峙する。
次回、王子の支配を拒否!闇の魔法使い、ゼノンとの激突!




