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灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う  作者: 夜詩榮


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第12話 嫉妬の芽生え(ゼノン・ハイゼンベルク)

あらすじ

慈善晩餐会でのエドワード王子との一件は、王都の貴族たちの間で大きな波紋を広げ、双子は王子の注目を浴びる存在となる。しかし、公爵家の嫡男であり、王子の取り巻きの一人であるゼノン・ハイゼンベルクは、双子の異質な力と、王子からの注目を奪われたことに激しく嫉妬する。ゼノンは、自らの高い魔力と家柄、そして陰湿な性格を武器に、双子を排除するための最初の策略を練り始める。双子にとって、初めての本格的な敵対者が現れる。

本編


慈善晩餐会での出来事は、王都の貴族社会における双子の地位を決定づけた。エドワード王子の傲慢な試練に対し、優雅に、そして完璧に応えた双子は、「単なる地方の天才」ではなく、**「王族をも手玉に取る知恵を持つ規格外の存在」**として認識された。

翌日、王宮では。

「エドワード殿下、昨夜のヴァイスブルクの双子に対する試練は、少々無礼に過ぎたかと……」

侍従が恐る恐る進言する中、エドワード王子は、双子から返されたフォークを弄びながら、面白そうに笑っていた。

「無礼? いいや、侍従。あれは試練だ。そして、彼女たちは見事に合格した。特にあの銀髪の妹、アウローラ。あの冷静さと、姉の力を見事に利用する知恵……実に興味深い。あの子たちこそ、私が望んでいた、真に使える駒だ」

王子は、双子を支配下に置くことを、新たな目標とし始めた。

しかし、王子の傍らに控えていた公爵家の嫡男、ゼノン・ハイゼンベルクは、冷たい怒りを胸に秘めていた。

ゼノンは、王子と同年代で、王都では誰もが認める高い魔力の持ち主だった。彼は常に王子の隣に立ち、王子の信頼を得ることに、自身の存在価値を見出していた。

(ヴァイスブルクの双子め……! 地方の小娘ごときが、殿下の関心を引くなど、許されることではない!)

ゼノンにとって、双子の存在は、自分自身の地位とプライドを脅かす、異物でしかなかった。特に、自分よりも優雅に、そして巧妙に王子の試練を乗り越えたアウローラの冷静さが、彼の神経を逆撫でしていた。

数日後、王都の貴族子弟が集まる図書館の一室。

リーゼロッテとアウローラは、クリスティンと共に静かに勉学に励んでいた。

そこに、ゼノンが、二人の取り巻きを連れて入ってきた。ゼノンの視線は、双子、特にアウローラに向けられ、露骨な敵意を放っていた。

「おお、ヴァイスブルクの双子。今日も熱心に勉学か。地方の小貴族は、教養を身につけるのに必死で結構なことだ」

ゼノンは、あからさまに双子を見下すような口調で言った。

リーゼロッテはカッとなったが、アウローラが冷静に返した。

「ごきげんよう、ハイゼンベルク様。私たちは、知識を身につけることが、貴族の義務であると心得ています。貴殿のような高貴な方も、熱心に学ぶべきではないでしょうか?」

アウローラの言葉は、ゼノンが勉学を疎かにし、ただ王子の威光に頼っていることを、皮肉を込めて指摘するものだった。

ゼノンの顔が、怒りで歪んだ。

「黙れ、銀髪! 地方の小娘が、公爵家の嫡男である私を侮辱するとは!」

ゼノンは、感情に任せて魔力を解放した。周囲の空気が振動し、彼が高い魔力を持っていることを示していた。

そして、彼は、双子が座っていたテーブルの上に置かれていた、アウローラの大切な魔導書を、手近な水差しで濡らそうとした。

「その薄っぺらな本など、水に濡れてしまえ!」

それは、公衆の面前で双子を辱める、陰湿な嫌がらせだった。

しかし、アウローラは一瞬で反応した。

「リーゼ!」

アウローラの合図で、リーゼロッテが動いた。彼女は、立ち上がることなく、座ったままの体勢で、風の魔力を右手に集中させた。

ヒュッ!

風の魔力は、水差しが傾くよりも早く、水差しから流れ出る水の雫だけを捉え、水滴がテーブルに落ちる前に、別の方向へと逸らした。

水滴は、寸前でテーブルを外れ、ゼノンの足元の、彼の高価な革靴に、正確に落ちていった。

「ちっ!」

ゼノンは、自身の靴に水滴が落ちたことに気づき、苛立ちの表情を浮かべた。しかし、誰も、双子が魔法を使ったとは気づかない。それは、リーゼロッテが座ったまま、無音で、空気の流れを操作しただけに見えたからだ。

「あら、ハイゼンベルク様。そんなに慌てて水を零してしまって。やはり、貴族の優雅さというものは、身につけるのが難しいようですね」アウローラは、優雅に微笑んだ。

ゼノンは、双子の巧妙な対応に、再び屈辱を味わった。

「くそっ……覚えていろ! お前たちの異様な力が、いつまでも通用すると思うなよ!」

ゼノンはそう吐き捨て、取り巻きを連れて、その場を立ち去った。

クリスティンは、双子の鮮やかな対応に、安堵のため息をついた。

「すごいよ、リーゼロッテ様、アウローラ様……。まるで、魔法を使ったとは思えない」

「魔法は使ったわ、クリスティン。ただ、使う場所とタイミングが重要なのよ」アウローラは、静かに答えた。

リーゼロッテは、窓の外を睨みながら、拳を握りしめた。

「あいつ、ムカつく! 今度、私の灼熱の拳で、あの傲慢な顔を焦がしてやりたい!」

「ダメよ、リーゼ。彼は、ただのいじめっ子ではない。公爵家の嫡男で、王子の側近。つまり、この王都における権力の象徴の一人よ」

アウローラは、静かに魔導書を閉じ、結論を述べた。

「彼は、私たちの最初の、そして最も厄介な敵対者となるわ。学園入学は目前。私たちは、彼の陰湿な策略に対し、知恵と力で立ち向かわなければならない」

双子の学園生活は、始まる前から、既に公爵家の嫡男という大きな障害によって、試練の場となることが確定したのだった。

次回予告

第13話:最終試練~ローザ先生の真意~

学園入学を目前に控え、ローザ先生は双子に最後の教養の試練を与える。それは、王都の貴族が通う、高難度の迷宮模擬試験場での、実戦的な知識と機知を問う試練だった。ローザ先生の真の目的は、双子がゼノンのような陰湿な敵意に対し、力を暴走させずに、貴族の知恵で対応できるかを見極めることだった。双子は、迷宮という未知の空間で、知識と能力の全てを駆使し、試練に挑む。

次回、知恵と勇気の迷宮チャレンジ!

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