表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う  作者: 夜詩榮


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/21

第10話 クリスティンとの再会と最初の依頼

あらすじ

ローザ先生の特訓により、双子は貴族としての教養を深め、リーゼロッテは『神速の舞踏』という新たな特技を習得した。そんな中、双子は友人のクリスティン・ノイマンと再会する。クリスティンは、癒し手を目指す心優しい性格から、他の子爵令嬢からいじめを受けていることを双子に打ち明ける。友人の危機を知ったリーゼロッテとアウローラは、学園入学前の腕試しとして、貴族社会の裏側に介入することを決意。リーゼロッテの『神速の舞踏』とアウローラの『緻密な戦略』が、いじめを優雅に、かつ徹底的に解決する。

本編


ローザ先生による厳しい特訓を終え、リーゼロッテとアウローラは、貴族社会で通用する**「表の顔」と、秘密の訓練場で鍛えた「裏の力」**を高いレベルで両立させていた。

「ふう、ローザ先生の教養の授業は疲れるけど、あの『神速の舞踏』のおかげで、なんだか空手の型もさらにキレが増した気がするよ!」

リーゼロッテは、舞踏の訓練で使ったホールで、満足げに拳を握りしめた。

「あなたの場合、優雅な動作を意識することで、風の魔力の無駄な放出が減り、攻撃に回せる魔力が増えたのよ。これも、ローザ先生の知恵ね」

アウローラは冷静に分析した。

そんな双子は、ある日、王都の郊外にある静かな茶会で、初めての友人クリスティン・ノイマンと再会した。クリスティンは、治癒魔法を学ぶために、定期的に王都の集会に参加していたのだ。

再会を喜ぶ双子に対し、クリスティンの表情はどこか優れなかった。

「クリスティン、どうしたの? 顔色が優れないようだけど」リーゼロッテが心配そうに尋ねた。

クリスティンは俯きがちに、小さな声で話し始めた。

「実は……最近、少し、貴族の子たちから意地悪をされていて……。治癒師になりたい、なんて、地味で貴族らしくないって……」

クリスティンをいじめているのは、王都でも悪名高い子爵令嬢、セシリア・ブルックナーだった。セシリアは、魔力は凡庸だが、家柄を笠に着て、自分より格下と見なした貴族令嬢を徹底的に排除しようとする、陰湿な性格だった。

「セシリア様が、私の治癒魔法の練習の場にわざと汚物を投げ込んだり、私の母が平民出身だと言って、皆の前で罵倒したり……」

クリスティンは、涙をこらえながら、震える声で訴えた。

リーゼロッテの赤い瞳が、怒りに燃え上がった。前世で、いじめや理不尽を最も嫌っていた彼女の性格が爆発したのだ。

「なんだって!? そのセシリアって子、許せない! 今すぐ行って、灼熱の拳でこらしめてやる!」

リーゼロッテは立ち上がろうとしたが、アウローラが静かにその腕を掴んだ。

「待って、リーゼ。暴力はダメよ。私たちは今、貴族社会にいる。拳は、最後の手段にとっておくべきよ」

アウローラは、クリスティンの涙を優しく拭いながら、静かな闘志を燃やした。

「クリスティン。安心して。私たちの友人を侮辱することは、ヴァイスブルク家を侮辱することと同じよ。この問題、優雅に、そして完全に解決してあげる」

アウローラの頭脳は、即座に、セシリアに対する徹底的な戦略を練り始めた。

「リーゼ。暴力を使わず、セシリアに二度とクリスティンに手を出させないようにするには、彼女の地位とプライドを、公衆の面前で完全に打ち砕く必要があるわ。それも、**誰も文句を言えない『優雅な方法』**でね」

アウローラが考えたのは、数日後に開かれる、王都の若手貴族が集まる大規模な園遊会での、公開処刑だった。

園遊会当日。豪華な会場には、多くの貴族の子弟が集まっていた。セシリアは、クリスティンを遠巻きに嘲笑し、優越感に浸っている。

そこに、リーゼロッテとアウローラが現れた。二人はローザ先生に教わった通り、完璧な礼儀作法と優雅な装いで、たちまち会場の注目を集めた。

アウローラは、セシリアに気づかれないよう、会場の隅に設置されている大きな飾り石と、クリスティンが着席しているテーブルの足元の地面に、密かに土の魔力『地形操作』で細工を施した。

そして、アウローラはクリスティンの手を引き、セシリアの集団に近づいた。

「セシリア様。ごきげんよう。少しよろしいかしら」

アウローラは、優雅な微笑みで話しかけたが、その瞳は氷のように冷たかった。

セシリアは、噂の双子に話しかけられ、一瞬戸惑ったものの、すぐに傲慢な態度に戻った。

「ああ、ヴァイスブルク様方ね。地方から出てきた者が、しゃしゃり出てこないでいただきたいわ。特に、あの平民上がりの娘と親しくしているとは、ヴァイスブルク家の品位も知れたものね」

セシリアが侮蔑の言葉を吐いた瞬間、アウローラは作戦を開始した。

「品位、ですって? 貴女こそ、その口の悪さで、この園遊会の品位を下げているのではないかしら」

この挑発に、セシリアは激昂した。

「生意気な! 地方の田舎娘が、この私に説教する気!? 貴女たちのような粗野な者は、さっさとこの王都から消えなさい!」

セシリアが、テーブルに置いてあったクリスティンの紅茶のカップを、侮蔑を込めて床に叩きつけようとした、その時だった。

ゴトッ!

アウローラが、事前に細工していた飾り石に、極めて微細な土の魔力を流し、その重心をわずかに狂わせた。

飾り石は、バランスを失い、ゆっくりとセシリアの頭上へ倒れ始めた。

「きゃあ!」

会場に悲鳴が響き渡る。

セシリアはパニックになり、逃げようとしたが、アウローラが次に細工していた足元の地面が、土の魔力でわずかに隆起していたため、バランスを崩して転倒した。

その瞬間、リーゼロッテの体が動いた。

「神速の舞踏!」

リーゼロッテは、風の魔力を脚部に集中させながら、ローザ先生に教わった優雅なワルツのステップで、会場を横切った。その速度は、誰もがその動きを認識できないほどの残像しか残さなかった。

リーゼロッテは、倒れかかってきた重い飾り石を、誰にも見えない超速の動きで、手のひらの体術を使って、元の位置に押し戻した。

ガタン……

飾り石は、まるで最初から倒れていなかったかのように、静かに元の場所に戻った。

会場の誰もが、飾り石が倒れかけた錯覚を見たと思った。

しかし、リーゼロッテの動きの余波で、転倒していたセシリアの豪華なドレスの裾だけが、リーゼロッテの風の魔力と接触したことにより、一瞬で凍りつき、床に張り付いた。

パリッ!

セシリアは、優雅に立ち上がろうとしたが、ドレスが床に凍りついて動かない。無理やり立ち上がろうとしたため、ドレスの裾が破れてしまい、彼女の下品な下着が露わになってしまった。

セシリアは、大勢の貴族の前で、ドレスを破いた醜態を晒すことになった。

「ひ、ひどい……!」

リーゼロッテは、何事もなかったかのようにセシリアの前に優雅に立ち、微笑んだ。

「あら、セシリア様。お怪我はありませんか? 慌てて転倒なさったようですけど、ドレスを破いてしまうなんて……品位が疑われますわ」

アウローラは、トドメとばかりに、周囲に聞こえる声で静かに言った。

「それに、いくら慌てたとはいえ、友人の紅茶を叩きつけようとするのは、貴族としての礼儀に反しますわね。次からは、お気をつけ遊ばせ」

セシリアは、恥ずかしさと屈辱で顔を真っ赤にし、一言も反論できずに、その場を去るしかなかった。

クリスティンは、双子の優雅で、そして完璧な報復劇に、感極まって涙を流した。

「リーゼロッテ様……アウローラ様……ありがとう……」

「いいのよ、クリスティン。私たちは、卑劣な暴力は嫌いなの。だから、知恵と力を使って、正しく解決しただけよ」リーゼロッテは得意げに笑った。

こうして、双子のチート令嬢は、王都の貴族社会における最初の**「依頼」**を、見事な連携と戦略で解決したのだった。

次回予告

第11話:兄の旅立ちと王子の接近

双子の噂は、クリスティンの一件で、「優雅だが恐ろしいヴァイスブルクの双子」として王都に定着する。そんな中、兄アルフレッドが王立魔法学園の予備試験に合格し、寮生活に入るため、一足早く王都の屋敷を旅立つ。双子も、いよいよ学園入学への最終準備に入る。そして、噂を聞きつけたエドワード王子が、双子に初めて接触を図る。王子は、その傲慢さから、双子の能力を試すような行動に出る。

次回、エドワード王子、登場!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ