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灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う  作者: 夜詩榮


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第9話 貴族礼儀と体術のギャップ

あらすじ

ローザ先生による、双子の規格外の能力と貴族の教養を両立させるための特訓が始まった。特に、リーゼロッテの**「考えるより体が動く」性質と、王都貴族の「優雅な礼儀作法」のギャップが、様々な騒動を引き起こす。ローザは、リーゼロッテの無意識の動きを制御するため、風の魔法『超速の体術』を「舞踏ダンス」**に応用させることを思いつく。一方、アウローラは持ち前の頭脳と集中力で完璧な礼儀作法を習得し、王都の貴族たちからさらに注目を集めていく。

本編


古代文書の難題を見事に解き明かした双子に対し、ローザ・ハーディネス先生の教育は、その後の数週間で劇的に変化した。彼女はもはや、双子の才能を抑圧しようとはしなかった。代わりに、**「その規格外の能力を、いかに貴族社会の中で、優雅に、そして効果的に隠すか」**という、実用的な教育にシフトした。

「リーゼロッテ様、アウローラ様。あなた方が将来王立魔法学園に入学し、貴族社会で生きるためには、この**『優雅さ』と『理性』**が、どんな強力な魔法よりも重要な武器となります」

ローザ先生は、双子に優雅なお辞儀の仕方、ティーカップの持ち方、そして何よりも**「常に冷静沈着であること」**を徹底的に教え込んだ。

しかし、リーゼロッテにとって、それは地獄の訓練だった。

「せーの、お辞儀……あっ、ダメ! また早すぎる!」

リーゼロッテが優雅なカーテシー(お辞儀)をしようとすると、つい風の魔力が足に集中し、一瞬で地面を蹴ってしまうため、優雅どころか残像を残して頭を下げるという、不可解な現象が起きてしまう。

「なぜ、体が勝手に動くんですか!?」ローザ先生は信じられないといった顔で叫んだ。

「うーん……体が、無駄な動作を嫌う、っていうか? お辞儀も、サッとやった方が速いし効率的だもん!」

リーゼロッテの体は、前世の空手の経験と、チート能力である『超速の体術』によって、「効率」と「速度」を最優先するようにプログラミングされてしまっていた。

ティーカップを優雅に持つ訓練でも、彼女はうっかり風の魔力を指先に集中させ、カップを一瞬で持ち上げるため、中の紅茶が波立つことすらなかった。

「リーゼ、そこは優雅に、ゆっくりなの! 力んでるわけじゃないのに、なんでそんなに速いのよ!」

アウローラは完璧な姿勢で紅茶を飲みながら、姉の破天荒ぶりに呆れた。アウローラは、前世の剣道で培った集中力と精密な動作の制御を、礼儀作法に完璧に応用していた。彼女の動作は、誰が見ても非の打ちどころのない、優雅な貴族令嬢そのものだった。

「アウローラ様の優雅さは素晴らしい。さすがです。しかし、リーゼロッテ様……あなたのその無意識の超速移動は、貴族社会では『野蛮』と見なされるか、『魔法的な異常』と恐れられるでしょう」

ローザ先生は頭を抱えながら、リーゼロッテの能力をどう制御させるか、真剣に考え始めた。

(あの速さは、もはや彼女の呼吸と同じ。止めることは不可能……ならば、その動き自体を、貴族が許容する形に変えてしまうしかない!)

ローザは、ある画期的なアイデアを思いついた。

「リーゼロッテ様。今日から、貴族の基本である**舞踏ダンス**の訓練を始めます」

「えーっ! ダンスなんて、私、踊りより組手の方がいい!」リーゼロッテは露骨に嫌な顔をした。

「いいえ。これは、普通の舞踏ではありません。あなたの**『超速の体術』を、『優雅な貴族の舞』**として、完全に制御するための特訓です」

ローザ先生の狙いはこうだった。舞踏とは、定められたリズムと型に則って、優雅に体を動かすこと。リーゼロッテの体が「速さ」と「効率」を求めるなら、その速さ自体を、**誰もが認める『芸術』**へと昇華させるのだ。

「あなたの風の魔法は、体を瞬時に移動させるだけでなく、足音を消し、軽やかな浮遊感を生み出すはず。それを、貴族のワルツやカドリールに応用するのです。あなたの風の体術を、**『神速の舞踏マッハ・ワルツ』**に変えるのよ!」

ローザ先生の指導は過酷だった。彼女は、リーゼロッテの動きに完璧な**『リズム』と『優雅な手の動き』**を付け加えることに専念した。

リーゼロッテは、舞踏の訓練中も、つい無意識に相手のリードを圧倒的な速度で受け流し、相手が気づかないうちに遠い場所へ移動して戻ってくるという、奇妙な現象を起こし続けた。

「ダメです! 相手が動く前に、あなたが次のステップに進んでしまっては、ダンスになりません!」

「だって、先生の足が遅いんだもん!」

指導は難航したが、アウローラの助言によって、リーゼロッテは解決の糸口を見つけた。

「リーゼ。舞踏は武術の型と同じよ。型には、次に起こる動作への**『予備動作』がある。その予備動作こそが、この世界でいう『優雅さ』。予備動作に、あなたの魔力の速度を分散させ、『ゆっくり動いているように見せる技術』**を身につけなさい」

アウローラは、リーゼロッテの能力を**『型』**として分析し、その制御方法を論理的に導き出したのだ。

リーゼロッテは、アウローラの助言に従い、動きの最中に魔力の速度を意図的に分散させる練習を始めた。

スッ……

次の瞬間、リーゼロッテは、誰の目にも完璧な、優雅なワルツのステップを踏んでいた。彼女の足は、地面を蹴っているはずなのに、微かな風の魔力で足音は完全に消え、まるで氷の上を滑るように、軽やかに動いていた。

「……あ、あれが、リーゼロッテ様?」

ローザ先生は、その神業的な制御技術に、感嘆の息を漏らした。リーゼロッテは、規格外の速度を、貴族の優雅さという**『型』**によって完全に制御したのだ。

リーゼロッテは、額の汗を拭い、照れくさそうに笑った。

「ふー、これで、舞踏会で騒ぎを起こさずに済むかな!」

こうして、リーゼロッテの『超速の体術』は、**『神速の舞踏』**という、貴族社会でも通用する新たな特技へと昇華したのだった。

次回予告

第10話:クリスティンとの再会と最初の依頼

双子の貴族としての教養も深まる中、初めての友人のクリスティン・ノイマンと再会する。クリスティンは、貴族の子弟の集まりで、ある子爵令嬢からいじめを受けていることを双子に打ち明ける。双子は、友人を守るため、学園入学前に、初めて貴族社会の裏側に介入することを決意。リーゼロッテの『神速の舞踏』とアウローラの『戦略』が、貴族令嬢のいじめを優雅に、そして徹底的に解決する。

次回、友のために立ち上がる、双子の正義の鉄槌!

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