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day26.悪夢

本編「day6.重ねる」(https://ncode.syosetu.com/n9028kr/6)の夜の藤乃の話。

「……っ!」


 嫌な夢で飛び起きた。

 いつもの伯父に怒鳴られたり突き飛ばされたりする夢だ。

 時計を見ると、夜中の二時。シャツは汗でベタベタ、エアコンの風音がやけに大きく響いている。あっという間に寒くなってきて、体がブルりと震えた。

 ベッドを出てシャツを脱ぎ、別のシャツに着替える。それでも震えは止まらなかった。

 机の上に、昼間行った鈴美の個展の目録が置きっぱなしになっていた。

 ああ、だから、あんな夢を見たのか。

 捨てようと手に取ったとき、本棚のチューリップがふと目に入った。

 花音ちゃんが育てて、瑞希がくれたチューリップをプリザーブドフラワーにして、ガラスのケースに入れたものだ。

 それを手に取って見つめる。花びらがフリルみたいに広がって、華やかで可愛らしいチューリップ。

 大好きなあの子みたいな花だった。


「……会いたいな」


 あの子が手を引いてくれたから、俺は悪夢に立ち向かえた。なのに、また負けそうになってた。ここで目録を捨てたらダメだ。向き合うって決めて、あの子にも同じものを渡したのは俺なのに。


 椅子に腰を下ろす。

 チューリップをお腹の前に抱えたまま、目録を開いた。最初の生け花を見たとき、あの子はなんて言ってたっけ。目を丸くして、ぽかんとした顔で。

 パラパラとページをめくる。花そのものより、花を見ていた花音ちゃんの顔を思い出していた。


 時計を見ると三時前。さっきまでうるさく感じていたエアコンは、静かに空気を吐き出していた。

 気づけば震えも止まり、悪夢のことなんてすっかり忘れていた。

 目録を閉じて、本棚にしまう。その手前にチューリップを飾っておく。

 目覚まし時計を止めて、部屋を出た。


 あの子がいれば、俺は悪夢だって乗り越えられる。


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