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day20.包み紙

瑞希の父、由紀一葉の話。

前回の数年後くらいのイメージ。普段そういうことを言わないから、どちらも不器用。

「今日も桐子さんは、世界で一番きれいですね」

 隣で荷物を運ぶ友人――須藤小春が、やつの嫁さんに声をかけている。

 結婚して四十年以上になるのに、飽きもせず嫁さんを褒めるのは、どうやら須藤の血らしい。小春の息子・藤乃も、毎日花音に「かわいい」とか「きれい」とか言ってるらしい。

 藤乃は新婚だからまだわかる。でも須藤は、もう四十年だぞ? 息子が結婚して孫までいるのに、まだ嫁にそんなこと言えるってのは……正直、俺にはわからない。

 とはいえ、俺だってカミさんに、何も感じてないわけじゃない。

 見合いをして、やっぱり三十年以上連れ立って来て苦楽を共にした彼女。

 三十年も経てば、互いに見た目もそれなりに衰える。でも、ふとした時に、初めて会ったときの面影がふとよぎる。

 

 今日は地域の子供会の催しで、夏祭りのときに子供に配る菓子の詰め合わせを作りにきた。

 須藤の嫁とうちのカミさんは、並んで手際よく菓子を詰め合わせ、包み紙でくるっと巻いてテープを貼っている。

 詰め合わせるのはうちのカミさん。包むのは須藤の嫁さん。途中からカミさんがテープ貼りを手伝ってたけど、やけに下手で、テープがぐにゃっとよれていた。

「……替わろうか」

「いいわよ。あなたは片付けしてらっしゃいな」

「そんなの、須藤に任せときゃいいんだよ。桐子さんに褒められたら、あいつは何だってやるよ」

「なに言ってるのよ」

 吹き出すカミさんからテープを受け取る。

 須藤の嫁さんから受け取った菓子に、順にテープを貼っていく。カミさんには箱詰めを任せた。

「由紀、なに座り込んでんだよ」

 目ざとい須藤が、俺と嫁さんの間にさっと割り込んできた。

「うちのカミさんが不器用だから、代わっただけだっての」

「桐子さん、由紀から五メートル以上離れて」

「仕事にならないじゃない。もう、あなたたちでやりなさいよ」

 嫁さんは、うちのカミさんと箱詰めした菓子を台車に乗せて、運び出していった。

 結局、残りの菓子は俺と須藤で包むことになった。

 帰り際、ふと思い立って、車のエンジンをかける前にカミさんに声をかけた。

「……俺にとって、一番かわいいのはお前なんだけどな」

 カミさんはニコッと笑った。

「なにやらかしたの?」

「な、なんもしてねえってば!」

 ……どうにも、俺には須藤みたいな真似はできそうにない。

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