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day12.色水

高校一年生の葵と理人の話。

昔好きだった人、今でもちょっと好きな人に、好きな人ができたとは言いづらい。

「理人、ファミレス行こう!」


 ホームルームが終わった瞬間、立ち上がった。前の方に座る理人に手を振ると、振り向いた彼は苦笑している。

 廊下に出て並んで歩いてたら、理人が小声で聞いてきた。


「菅野さん、今日の放課後補修は受けないんですか?」

「理人、補修必要?」

「……まあ、そうですね」


 今日の補修は自由参加だから、私たちには必要ない。

 でもそれ大声で言うと角が立つから、こそこそ話してる。

 そのせいで、入学してひと月くらいで付き合ってるって噂されてるけど、お互いの女避け・男除けで一緒にいるから問題なし。

 ファミレスで向かい合って、教科書をパラパラめくる。ドリンクバーで作ったモクテル飲みつつ、ケーキをつつく。


「……で、なにかあった?」


 理人が王子様みたいな顔を上げる。サラサラの前髪がふわっとなびいた。


「あのね、好きな人ができたの」

「じゃあ、男除けはもう不要?」

「ううん、それはお願い。警察官なの」

「……警察官?」


 好きな人の話をした。入学してすぐのトラブルと、それを助けてくれた警察官のこと。

 話し終えると、理人は困ってるような、笑い出しそうな、なんとも言えない変な顔した。


「……それ、藤乃さんに言った?」


 なんでそこで藤乃くんの名前出すのよ。


「言ってない」

「言わないの?」

「心配、かけたくないし」


 ちょっと不貞腐れた言い方になっちゃったら、理人が苦笑した。


「藤乃さんは、心配すらさせてもらえない方がよっぽど悲しいと思うけど」

「……わかってるよ」


 わかってるけど……言いたくないんだよ。藤乃くんの前じゃ、ずっと子どもでいたい。女っぽいとこなんて、絶対見せたくない。

 ……でも、そろそろ、潮時なのかも。


「言わなきゃ、ね」

「僕から言おうか」

「ダメ。自分で言う」


 モクテルを飲み干して、お代わり作りに行ったけど、失敗して変な味の色水みたいなのができた。理人に押し付けたのに、それすらおしゃれに見える理人、ほんとムカつく。

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