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日本にとばされちゃった!?!?!?!?

ー魔界主要都市セメタリルー


「以上が我らが誇り高き魔王軍重要特殊部隊の今月の成果報告となります。続きまして、今後の方針についての会議が…。」


「そこまででいいわ、メンソル。」


「え?し、しかし早めに終わらせておいた方が…」


「だめよ、メンソル。あなた、今の時間を教えてみなさい。」


「じ、時間でございますか?えぇと、19時45分でございますが…。」


「そうよね。もう20時近いわ。魔王軍の定時は16時。もう3時間45分も過ぎてるわ。」


「し、しかしながら…!帝国軍が夜襲などさまざまな軍略を仕掛けてくる可能性が…!」


「大丈夫。今日の夜勤は特殊隠密部隊のヴァンパイアのカゴメさんよ。あの人は九大魔族にも数えられる実力者中の実力者。そして何より!有休消化率100%のホワイト社員よ!!!」


「ゆ、有休消化率、ひゃ100パーセントですって…!?!?」


「さて、メンソル。あなたの前期有給消化率は何%でしたっけ?」


「えぇっと…、たしか80%だったと思います。働きたい気持ちを抑えて、かなり休んだと思います。」


「ふっふっふっ…。甘いわ、メンソル。」


(!?!?)


「有休消化率は100%でなければならないのよ!!!」

その刹那、マルボロの背後には黒い稲妻が走った。

ちなみにこの稲妻があれば帝国軍の重要要塞を一瞬で破壊することが可能である。しかしながら、魔王様の方針により、魔王軍からの攻撃は禁止されている。


「ということで、メンソル。あなたには有休消化という重要任務を命ずるわ。しかも、それだけじゃないわ。この件を魔王様に言上したところ…、これを見なさい!」


「こ、これは…!!!」


そこには、『〜ひとときの安らぎ、いや永遠の睡眠〜スパリゾート死之國』と書かれた温泉利用券2枚が置かれていた。


説明しよう!!

スパリゾート死之國とは、魔界の温泉地ゲヴォにあるアミューズメント型温泉施設である。露天風呂や大型ジャグジーはもちろん、今話題のサウナや水着着用型の混浴風呂にはウォータースライダーも設置されている。お風呂から出た後には存分にリラックス出来るように魔族なら無料のアカスリやマッサージも利用でき、娯楽室においてある漫画およびドリンクバーもスパ利用者は自由に利用ができる。他にも卓球が楽しめたり、ゲームセンターもあり、子どもから大人の魔族まで朝から晩まで楽しむことができる。さらに、スパリゾートの隣には大きな旅館があり、そこで提供される”魔界すき焼き”は非常に絶品であると言われている。このすき焼きに使われている肉は罪人の人肉となっている。


「メ、メンソル様!どうしてこの様な物を持っておられるのでしょうか!!」


「あら、不思議かしら?」


「えぇ!いまスパリゾート死之國は、とんでもない人気でチケットの購入制限があり、予約をしても一年待ちと聞いていたのですが…。」


「そうね。今の季節、ちょうど魔王軍遠征部隊が誰一人欠けることなく無事に魔界に帰還したことで、従軍した魔族とその家族サービスによって無料招待された同族たちによって、スパリゾートは一時的に一般受付は受け付けていないわ。」


「それではなぜ…!?!?」


「魔王様よ。」


「ま、まさか魔王様権限で…!?!?」


「いいえ、魔王様なその様な職権濫用はしないわ。魔界商店街の福引で当たったみたいよ。そして、その当選券は当選者以外の利用も可能とのことで、こうしてメンソル、あなたに下賜されたのよ。」


「ま、魔王様自らでございますか…!?!?そ、そんな貴重な物、私が頂いてもよろしいのでしょうか…。」


「えぇ、魔王様はあなたに使って欲しくてお与えになったのよ。」


「し、しかし…。」


「ねぇ、メンソル。あなたがここ、魔族に来てからどれくらいになるのかしら。」


「えぇっと…。2年ほどでしょうか。」


「そうよね。でもあなた、ここで働き始めてから大きな休みは取っていないんじゃない?」


「えぇ…。ただ、私を救っていただいた魔王様にご奉仕するのは当然です故、何ならこのようなホワイトなお仕事をさせていただき、むしろ自分の忠義が足りているのかと…。」


「メンソル。あなたの働きは十分。いえ、むしろ素晴らしいくらいよ。だからこそ、魔王様はあなたにこの様な褒美をお与えになったのよ。それに、妹さんのこともあるでしょ?たまには一緒に楽しんできなさい。」



メンソル。彼女はかつて人間であった。人間界を支配する一つの勢力”帝国軍”。彼女はその帝国軍の支配領域である帝国領に生まれた。しかし、その出自は酷いものであった。帝国領では厳格な身分制が敷かれ、その中でメンソルの出自は身分制の最底辺であった。彼女の父は帝国の強制労働に従事、その過酷な環境に耐えきれず過労死。そして、父がいなくなったことにより母は身を売りながらも子どもたちのためにお金を稼いだが、その身を買った極悪な貴族により暴行され死亡してしまった。母が死んだことで、その貴族の標的はメンソルとその妹に移り、まさに襲われそうになった瞬間、魔王によって助けられたのである。その大恩に報いようとメンソルは魔界に勤めることにしたのである。魔界での生活はメンソルにとって天国そのものであった。衣食住何も不便なく、そして仕事内容も福利厚生充実のホワイトであった。であるから、メンソルは魔界に定住することを決心し、魔王に願い人間種から死神種へ変化した。ただ、仕事に熱心であるばかりホワイト思考の魔王やマルボロには、唯一生存している肉親である妹に今よりもっと構ってあげてほしいという意識があったのだ。



「魔王様…、マルボロ様…。」


「存分に楽しんできなさいよ。あ、あと今日の残業時間、んー、中途半端だし4時間分でいいわね。割り増し残業代を支給しておくわ。」


「はい!ありがとうございます!それでは有休消化頑張ります!!」


そう言い、笑顔で部隊長室を退出するメンソルの姿はまさに遊びに行く同年代の人間と同じようであった。可愛らしい、マルボロの顔には笑みが溢れた。


「さて、私もそろそろ退社しましょう。」



ーーーーーーーーーーーーー


ウィーン

「いらっしゃいませ〜」


「さて、今日は何にしようかしらね。」


ここは、魔界のコンビニ”ビッグストップ”。少しマイナーなコンビニであり、店舗数は他のコンビニ比べると少ないが、ここのコンビニが誇るのは何を隠そう”スイーツ”である。

コンビニスイーツ。もはや、そのクオリティは専門の菓子店と比べて遜色がなくなっている。魔族、その中でも上級魔族は甘い物が好物であるものが多い。それはもちろんマルボロも例外ではない。


(前回はこの、『とろ〜り人間の血液ジュレプリン』を食べましたわね。このプリンすごく美味しかったわ。やっぱり人間の血液っていいわね。なんか鉄みたいな味がするのがクセになるのよね。んん〜、今日もこれにしようかしら。でも、新作も気になるのよねぇ〜。新作コーナーはあっちね…。)


百番くじや化粧水などがおいてある美容コーナーとレジの間を抜けるとスイーツコーナーがある。しかし、そのスイーツコーナーの前にはアイスコーナーも設置されている。


「こ…、これは…!?!?」


ーーーーーーーーーーーーーーー


「ただいまぁ〜」


(って、誰も居ないんだけどね。)


マルボロはオートロックの2LDKのマンションで一人暮らしをしている。魔王軍の社宅も勿論あるのだが、魔王軍は住宅補助が支給されるため、賃貸でマンションを借りる魔族も少なくない。


(先にお風呂沸かしちゃおう)

ピピ、風呂自動を作動します。お風呂の栓のし忘れに注意してください。


(毎回思うのだけれど、一度お風呂の蓋を閉じてから本当にお風呂の栓をしたか心配で確かめちゃうのよね。)



「あっ、昨日の深夜アニメ録れてるかなぁ!」


マルボロは大のアニメ好きである。休みの日で外出しない日にはサブスクで一日中アニメを見ている。その中でも大好きな作品が今、リメイク版として深夜に放送しているのである。


「あった。やっぱこれよねこれ、おもしろいんだよなぁ『機動弁護士ガンヅメ』。機械化されたロボット弁護士である主人公のガンヅメが、裁判相手に負けそうになったら逆ギレしたり、ガン詰めしたりするんだよなぁ。でも、なんだかんだ言ってガンヅメは漢らしいし、何より依頼人からお金を取らない!本当に正義の味方だよなぁ!裁判で勝てたことはまだないんだけどね!」


「そしてぇ…、これ!さっき買った『バーゲンガッツ』。普段は高くてなかなか買えないんだけど、アプリを登録すると150円引きクーポンがあるから、実質50円で買えるんだよねぇ〜。ほんっと最高!あぁ〜関係ないけど魔王様万歳!!」


「んん、でもぉ今日はずいぶん疲れたなぁ…、最近はメンソルが張り切っちゃって残業続きだったしなぁ…。ね、ねむぅい…。」


コク

マルボロは眠ってしまった。



ーーーーーーーーーー



「んん〜魔王さまぁ…。ムニャムニャ。魔王軍ばんざぁ〜い。ムニャムニャ。」


「ボロよ…、マルボロよ…。」


「んにゃ?」


「マルボロよ…。もう朝だぞ。」


「んにゃぁ…魔王しゃまぁ…?やっぱり魔王しゃまは素敵でございます。愛しております。まおうしゃまぁ…。」


「そうかそうか、それは嬉しいことだ。ありがとうなマルボロよ。」


「私は魔王様にお仕えできて幸せでございますぅ…。」


「んん…。」


「うーん…。」


「うん?んん??んん!?!?」


「ま、魔王様!?」


マルボロが目を覚ますと、見慣れない天井があった。そしてその視界の脇には何よりも見慣れた魔王ドルーヴィスの姿がそこにはあった。


「えぇ…とこれは夢。夢。夢…でございますか…?」


マルボロがそう問うと、魔王は首を横に振った。


「え、えぇ!?!?な、なぜでございますか??」


「マルボロよ。まずは一度落ち着くのだ。急な出来事で驚いたであろう。」


「は、はい。魔王様。ここは一体、どこなのでしょうか。」


「うむ。ここは日本だ。」


「に、日本…?」


「あぁ。しかも時代は令和といったところか。」


「れ、令和でございますか?」


「うむ。」


「魔王様、一つよろしいでしょうか?」


「あぁ。」


「私たち帰れるのでしょうか…??」



ーマルボロの日本での日常がいま、始まる!!!ー



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