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第5話 闇の精霊 僕はオロン。

それはリアナが7歳を過ぎる頃、夜をまだ両親と兄の4人で同じ部屋で寝ていた頃のことだ。

ここポネルの町があるフォード領はグイオッド国の南東領とはいえ、北の大陸だから一年を通して寒く、そして夏も涼しめだ。

北風がビュービューと強く吹き付け、窓をガタガタと揺らす。

両親が寝室に来るまでは、兄と一緒に布団に入っておき、それでも眠れない夜は父が本を読んで寝かしつけてくれる。

父ギュストが読んでくれる本は様々だが、実用的なものを好んで買ってくるため歴史や魔術に関する本が主だった。

子供に読ませるものとしては退屈だが、幸いにも子供たちは賢く、よく分かっていないふりをしているが何気に本の内容を覚えており、2、3度読めば諳んじて言える程度になる。

すぐに読む本も尽き、ギュストは毎度困っていた。彼はフォード侯爵領で任される仕事も多く忙しい。ついつい本を買うのを忘れ、子供たちに新しい本をせびられるのを嫌い、布団に入るのが遅くなっていく。

リアナ「父様まだお布団に来ないね…。」

クムサス「リアナがすぐに本の内容を覚えてしまうから、父様が嫌がるんだよ。黙っていればいいのに、つい先に言っちゃうから。」

リアナ「お兄ちゃんだってすぐに言うじゃない。」

クムサス「リアナほどじゃないよ。」

リアナ「ご本読んでもらわないと眠れないの。」

クムサス「だったら僕がお話を聞かせてやろうか?」

リアナ「嫌だってば、すぐに怖がらせようとするからお兄ちゃんのお話は嫌い。」

中々寝付けないリアナのためにクムサスも最初は真面目に話を考えて聞かせていたが、生意気を言われる度に腹を立て、近頃は寝付けない度に怖い話を聞かせるようになっていた。

クムサス「お前、すぐに“つまんない”って言うから、話を考えるのが嫌なんだ。」

リアナ「そんなことない。ねぇ、怖くない話をしてよ。」

クムサス「ニレの木があるだろ?」

リアナ「まじょ美さんのステッキになったんでしょ?」

クムサス「ほら、勝手に茶々入れるから、話にすらならなくなって来たんだぞ。」

リアナ「もう、ちゃんとだまってるってば。」

リアナはクムサスが怖がらせて来るのが嫌で茶化していたが、クムサスはそれに腹を立てて怖い話をするようになっていたから実のところはどっちもどっちだ。

クムサス「楡の木はな、樹齢が100年を超えるとしゃべるようになるらしいんだぞ。その声は低くまるでお化けのようらしい。」

リアナ「ほら!やっぱり怖い話にするじゃない。」

クムサス「うるさいな。僕はトイレに行くから一人で待ってろよ。」

リアナ「嫌だってば、私も行く。」

クムサス「父様のところにでも行っていろよ。」

リアナ「まだ寝てないのって怒られるからだめだよ。」

クムサス「いいから、ここで待ってろよ、すぐに戻ってくるから。」

泣きべそをかきそうになるリアナを放っておき、兄はスタスタと部屋を出ていく。

昔は暗いところも平気だったリアナだったが、兄から毎晩のように怖い話を聞かされるようになり少し怖がるようになった。

リアナ「もうおにいちゃんのせいで怖くなっちゃった…父様の本の呪文でも思い出そう。確か闇の精霊の名前はオロンだったかしら。出てこい出てこいオロンちゃん…。」

リアナはこうやって時々父ギュストに聞かせてもらった本の呪文を唱えることがある。火の精霊を選ばないのはギュストから硬く禁じられていたからである。

闇・水などはまだしも、氷や火となると命に係わる。まして子供が呼び出すとなると大事に至る事があるため、召喚術自体を禁止されていたが、リアナもクムサスもかなりのいたずらっ子だったから時折、光の精霊などを呼び出しては遊んでいた。

リアナ「そうだ!お兄ちゃんを怖がらせてやろう。」

ふふふっと布団の中で笑いながら、闇の精霊を呼び出すリアナ。するとポンッ!と言う音と共に闇の精霊オロンが出て来た。暗くてよく見えないが黒い毛玉の様な影が見える。

オロン「ねぇ、僕の事を呼んだ?」

リアナ「うん。ちょっとだけ協力して欲しいの。」

オロン「どんな事?」

リアナ「私のお兄ちゃんがね、いつも夜に怖い話をするのよ。だからお返しに少しだけ怖がらせてあげようと思っているの。」

オロン「そんなことしちゃダメだよ。精霊は悪いことに使っちゃダメなんだから。」

リアナ「どうして?」

オロン「だって精霊を悪いことに使うと精霊は精霊じゃなくなるんだから。悪魔になっちゃうでしょ?」

リアナ「悪魔ってなに?」

悪魔もこの世界にはいるにはいるが、禁忌とされ呪術を扱う者以外には知らされていない。また悪魔は契約することがタブーとされ、自らが使役出来ないものは通常召喚されない。

言わば召喚できる程度のものが精霊であり、また悪魔でもある。それ以上の上級霊は守護神などの神の領域の存在となり、悪事にはやはり使役できない。

オロン「あ、知らないんだね。…ごめん、さっきのは忘れて。代わりに少しだけ手伝ってあげる。」

リアナ「うん、忘れるのはいいけど、どうやってお兄ちゃんを怖がらせるの?」

オロン「ぼくが得意な呪文はテラー(恐怖)だから、少しだけお兄ちゃんを不安な気持ちにさせてあげる。」

リアナ「今日だけじゃ意味ないもの。お兄ちゃんは毎晩怖い話を聞かせてくるのよ?」

オロン「うーん、じゃあ夜に僕の名前を読んだら、お兄ちゃんを不安な気持ちにさせてあげる。」

リアナ「今日も?」

オロン「うん。今はどこにいるの?」

リアナ「今はトイレに行っているのよ。もうすぐ帰ってくるかなぁ。」

オロン「ちょっと待ってて。」

ギシッギシッという階段が軋む音が聞こえ、兄が戻ってきていることに安堵するリアナ。

対して兄クムサスはオロンの術により、普段は何て事のない階段なのにやけに今晩はゾクリとする様に感じた。

テラー(恐怖)は低位の呪文であり、唱えると周囲の精霊がひやりとした冷たい空気を送ったり、冷たい手で首の後ろを触るなど怖がらせる呪文である。

子供だましな呪文だがこれらは悪用すればパニック状態になり恐ろしい呪文にもなるため、これらの呪文を乱用することはやはり禁じられている。

今回の場合だとオロンが自分で唱え、自分でひやりとした手でクムサスに少しだけ触り怖がらせているようなものだ。

オロン「今日はここで終わりだよ。」

律儀に任務を終えたことをリアナに報告しに来るオロン。

リアナ「分かった。ありがとう、オロン。またね。」

精霊は本来使役され、あまり礼を言われることはない。生活として火を付けたり風を送ったり、唱術の中にその敬意や謝意が含まれており形式的になっている。

またオロンという名前もあくまで闇の精霊として名づけられているだけの事で、誰がオロンをやるかは周囲にいる精霊の属性で決まるだけで個人的な名称など持たない。

今回現れた闇の精霊オロンは、はるか昔の人と精霊がもっと近かった頃を少しだけ懐かしみ、またお礼を言われたことに嬉しくなってしまった。

オロン「数日だけだよ。手伝ってあげる。」

リアナ「分かったってば。お兄ちゃんが部屋に入ってきちゃう。」

ポンッ!と言う音がまた聞こえ、オロンはどこかへ消えていった。

ドアノブを回す音が聞こえ、兄クムサスが部屋に戻ってくる。

クムサス「今日はなんだか冷えるな…。」

一年の中で一番暑いのは炎の月だが、その前の月にあたる現在はこの北の大陸ではまだ暖かい方だ。クムサスは背筋がゾクリとしていたことを思い出し、身震いしていた。

寝たふりをしつつ兄のそんな様子をみてリアナは内心笑っていた。

精霊は生前、人や動物の霊などが死した後、昇格してなることが多い。

今回現れたオロンは生きていた頃は人の子供で、また、律儀な性格であったためいつ止めるという話をしていなかったことが原因だが、しばらく兄クムサスに付きまとってしまう。

リアナも覚えていられれば良かったが、翌日にはすっかり忘れ、時折兄がトイレに行き帰ってくる度に身震いしている事も終わったことだと思っていた。



ある日を境に暗がりで背筋が凍るようになったクムサス。

てっきり寒さのせいだとばかり考えていたが、炎の月を迎えてもゾクリとするようになってしまっていた。

トイレに行くたびに怖い思いをするため、暗くて見えづらい階段が苦手なのだろうと考えていたが、徐々に暗闇事態が怖くなってきた。

リアナに夜の話をねだられても無視し、会話自体をあまりしなくなっていったのはこのころからだった。この時でクムサスはまだ8歳。リアナと大して歳が変わらないのだ。

リアナ「お兄ちゃん、もう寝た?」

クムサス「………。」

リアナ「おにいちゃん!もう寝た?!」

クムサス「うるさいな…。聞こえているよ。」

暗闇で2人は言え、無言でいると不安になるリアナ。対してクムサスは誰かといるとあの背筋が凍る感覚がないため平気だ。

クムサスはこの頃までは両親やリアナともよく会話をしていたが、徐々に話さなくなっていった。

リアナには格好が悪くて言えなかったが、暗闇を怖がっていることを知られたくなかったためだ。

クムサス「早く寝ろよ。」

クムサスは布団をかぶりなおしながら言う。リアナは夕飯の時に大好きなミートパイが出たことに興奮し、まだ眠れないようだ。

リアナ「おにいちゃん、美味しかったね。」

クムサス「そうだな…。よかったな。」

はしゃぎながら言うリアナに対して、クムサスはこの頃からあまり夜がよく眠れなくなっていっていた。

昨晩も何度も目が覚め、眠れていない。うとうとすると思うと必ずヒヤリと背筋が凍るのだった。

クムサス(……眠たい。だけど眠れない。どうしてなんだろう。)

うとうとしながらクムサスは考える。考えても考えても答えは出ないのに、眠れないから毎晩考えてしまうのだった。

そういう時は両親の顔を見て、寝ているリアナの手をそっと握り安心しながら眠る。明け方近くになるとまた目が覚め、日が昇り始めてからまた寝るため、両親からは寝坊助だと言われていた。


実はオロンとリアナの結んだ召喚術は、召喚術と言うより呪術に近く、契約をしているような状態だった。

一度召喚し、履行した後、通常であればオロンは元のフリーの精霊に戻る。ところが数日間はと言う約束をして、しかもこの時のオロンが律儀な性格だったため、辞め時が分からなかったのだ。

更に悪かったのが翌日になるとリアナがすっかり忘れており、話しかけてもオロンの存在に全く気付かなかったことだ。

対してクムサスは怖がりはするものの、オロンの存在に気づいてくれる。オロンは帰ったものか困り果て、クムサスに気づいて欲しく付きまとうようになっていたのだ。

状態としては悪く言えば悪霊のようなものである。

ただ、オロンはクムサスの側にいることが増えたため、彼が徐々に無口になり笑わなくなったことに気付いていた。

なんとか謝りたい。ただ、精霊であると伝えたいがいきなりの話をするとただの悪霊と勘違いされかねない。

どうしたものかと考えている内にオロオロとキャロス家の周囲で困り果てていた。

なぜ闇の精霊がオロンと名付けられたかというと、闇の精霊はこういったオロオロとした性格=性質のものが多い。父ギュストにもむやみに精霊を呼び出すなと言われていたのはこういう細かなことまでは子供では考えないからだ。

もっと言うと、通常の子供では精霊を呼び出す召喚術など覚えきれない。父ギュストも幼少期には全文など覚えきれなかった。

だから大丈夫だろうと考えていたのだが、キャロス家の兄妹2人は賢く、すぐに諳んじて言える子供たちだったのだ。


父ギュストはこの頃から忙しさが緩和し、また本を読んでくれるようになっていた。

ギュスト「どうした?クムサス。最近あまりしゃべらなくなったな。なにか悩みでもあるのか?」

クムサスはパクパクと何かを言いかけるように口を動かすものの、リアナがいるとなんとなく罰が悪いため言い出せない。

クムサスは「なんでもないよ…。眠たいだけ。」

ギュスト「そうか…?」

ギュストは少し気にしつつも、本をまた読み始める。

カチャリと寝室のドアノブが回される音がすると母メリルが入ってきた。

メリル「さぁ!そろそろ寝ましょう!」

大体は母のその一声で本を読むのを止め、家族みんなで眠りにつくのだった。

メリルは少し前からクムサスが夜中にうなされるようになっていたことには気づいていた。

うなされる度にクムサスの背中をさすり、「大丈夫、大丈夫」と声をかけるのだった。


異変が強くなったのは炎の月の中月。精霊オロンがどうしても帰りたくなり、また謝りたくなってクムサスに近づいた時だった。

クムサスはオロンが近づくたびに暗闇でなくても嫌がるようになっており、すぐに気配に気づいて振り返ってしまう。

闇の精霊は、じっと見つめられるのが苦手でである。振り向かれると散ってしまいたくなるのだ。

この日も夜中、眠る前にトイレに行くクムサス。みんなが寝静まってからではトイレにも行きたくない。

いつしかオロンの居るいないにか拘わらず、暗闇は苦手になっていた。

精霊オロン「ねぇ!クムサス!」

今まではヒヤリとかゾクリで済んでいたものがいきなり自分の名前を呼ぶのだから、クムサスはパニックを起こした。

クムサス「うわぁーーっ!!」

精霊オロン「驚かないでっ!クムサス、僕は闇の精霊オロンなんだっ!」

上りかけた階段をいっきに駆け下り、両親のところまで走るクムサス。

また、うとうとしかけていたリアナも兄クムサスの叫び声を聞いて目が覚め、驚いて階段を下り両親の元へいくのだった。

ギュスト「どうしたクムサス。」

クムサス「階段を上ろうとしたら声がしたんだ!」

メリル「どういう事なの?」

クムサス「だってアイツ、僕の名前を呼んだんだ!」

ギュスト「アイツって言うのは一体誰なんだ?」

クムサス「分からない。けど最近僕の周りをよくウロウロしているんだ。」

リアナ「どうしたのお兄ちゃん。父様、母様…。」

メリル「リアナはどうもないの?」

リアナ「なんのこと?」

ギュスト「クムサスが何か気配を感じるし、さっき名前を呼ばれたって。」

リアナ「気配って?何も感じないよ。」

そんな家族のやりとりに焦れたオロンが苦手な火の光の側へ出てくる。

オロン「あ、あのぅ…。怖がらせてしまってごめんなさい。ぼくは……。」

暖炉の側に黒い小さな影が出てくる。大きさは毛玉1つ分程度だろうか。黒い毛玉に小さな蝙蝠の羽が生えている。

メリル「あら……あなた、これは…。」

ギュスト「おっと!こう言う事か!」

すぐに察した両親は布を軽くかぶせ、少しオロンの周辺を暗くしてくれる。

オロン「ぼくはオロン…。あの、その、怖がらせてごめんなさい。ぼくはどうしてもクムサスに謝りたかったんだ。」

ギュスト「とすると、呼び出したのは…。」

リアナはオロンを見て「わ!可愛い!」なんて思っていたのは束の間、両親ににらまれ肩を縮こませる。

リアナ「………私が呼んだの…。少し前に。」

すぐに泣きそうになるリアナを両親はあまり叱ることが出来ない。

メリル「ギュスト、だからあれほど魔術書物は寝る前に読んではダメって言ったじゃない。」

ギュスト「しかし俺はこれで小さい頃勉強させてもらってたんだ。」

メリル「でもこれじゃぁ精霊も可哀そうよ。」

ギュスト「じゃぁたまには君が本の読み聞かせをしてやればいい。子供たちの知能の高さに嫌気がさすから!」

メリル「何を言っているのよ、もう!」

両親とリアナだけは話に合点がいっている様子だったが、説明が何もないクムサスには訳が分からない。

恐怖を植え付けられた上に、両親の変な喧嘩を聞かされているのだから。

クムサス「つまり精霊オロン。君は僕に何をしたんだ…?」

オロン「実はね…。」

リアナに呼び出されたこと、戻るにいつ戻っていいか分からなくなっていたこと、気づいてほしかったこと、誤りたかったことすべてをオロンはたどたどしく説明してくれた。

クムサス「なんだ……どうりで暗闇でいつもひやりとすると思った。リアナのせいだったのか。」

リアナ「違うの、こんなことになると思ってなかったの。」

メリル「リアナッ!お父さんがいつも甘いと思ってあなたは甘えてばかりではいけませんよ!クムサスにちゃんと誤りなさいっ!」

リアナ「だっておにいちゃんが怖い話をするから…!」

この話の原因の元を正していくと、父ギュストが読む本を買う時間が無かったこと、そして代わりにクムサスが話をするもののリアナが茶化して、それをクムサスが面倒くさがりリアナを怖がらせたことだ。

母メリルはこの話を聞いて頭を抱えることになる。

ギュスト「すまなかったな精霊オロン。もう帰っていいぞ。子供たちには私達から言っておく。」

メリル「それと、本の読み聞かせは私がやります。」

オロンはしばらくオロオロしていたが、クムサスが「もう怒ってないよ。ごめんな気づいてあげられなくて…。」と言うと嬉しそうに精霊たちの世界に帰っていったのだった。

「私にだってできます!ふんっ!」と鼻をならし本を読むと息巻く母メリルだったが、クムサスは知っている。母が本を読むとすぐ先に寝てしまい、話が進まないことを。

そしてそれに焦れたリアナが母メリルを起こすと、早く寝なさいと必ず怒られるのだった。

クムサス「だからちゃんと父様の本の話を聞いていれば良かったのに。人の話をちゃんと聞かないんだから、ばかだなぁリアナは。」

リアナ「だって、私は母様に本を読んでもらったことあまりないから…!」

泣きべそをかき始めるリアナ。そんなリアナにクムサスは言う。

クムサス「母様はすぐに本を読むのを飽きるんだ。だから父様がまた読み始めるよ。それまでの辛抱かな…。」

クムサスが言った通り、母メリルは片付けや掃除で忙しく、数週間で本を読まなくなる。

父ギュストが本を読むにあたり、リアナは今度はちゃんという事を聞くと言い、そして魔法を諳んじることは二度としないと両親に誓わされるのだった。



11歳の夜、クムサスが一人で寝ると言い出した。

大人になれば自立し、家も出る。いつまでも家族と一緒にとはいかない。クムサスもそれを察しての事だった。

両親は心配そうにしていたが、徐々に慣れないとと思っていたし、彼の考えを尊重したかった。

11歳ともなれば子供でも一人で夜眠る。

時折苦しそうにうなされるクムサスを見て、ひとりで寝るのはまだいいかと両親も思っていた。

そのクムサスが一人で眠ると言い始めたのだ。寂しくなったらいつでも布団に入ってきなさいと言ってはいた。

クムサスが我慢強いのはリアナも知っていた。だから、数日してから気づく。

先に部屋に行っていた兄が寝苦しそうにうなされている声がするのだ。

両親はまだ寝室に来ていない。リアナは一人でいるのも寂しかったが、兄が自分のせいで暗がりを怖がるようになったことに後悔をしていた。

だから兄の寝る部屋にしのびこみ、一緒の布団へもぐりこむ。そうして朝まで眠るのだ。

クムサスは最初の頃は両親の部屋にリアナを追い返していた。懲りずに何度も来るリアナに次第に諦め始めると、今度はギュストとメリルが気づきリアナを両親の寝室に運ぶ。

だけど気づけば朝にはクムサスの布団に潜り込んでいるリアナに、誰も何も言わなくなっていった。

リアナが自分がしたことを後悔していることが分かっていたからだ。


時はまた戻り、13歳のリアナがクムサスに言う。

リアナ「おにいちゃん、まだ夜が怖い?」

クムサス「夜が怖いのはお前だろ?」

リアナは知っている。暗がりで手をつないで歩く時、兄の手がじんわりと冷たい汗をかくことを。

リアナ「ごめんなさい…お兄ちゃん。」

クムサス「お前、僕の体になってから謝るのやめろよ。」

リアナ「だよね…。」

ふふっと顔を見合わせ笑う兄妹。そこへ懐かしい気配がする。

オロン「こんばんは、僕は精霊オロン!お久しぶりだね!あれ?なんだろう通りがかったから来てみたんだけど、あれれ?」

クムサス「さて、どっちでしょう?わかるかなぁ?」

オロン「えぇ?!なにこれ身体が入れ替わっちゃってる!?守護神ウィンディア様に相談しないと…!!」

リアナ「ウィンディア様が関係あるの?」

オロン「詳しくは言えないんだ。もしかして僕のせい??」

クムサス「違うよ。こないだの精霊式からおかしくなっちゃったんだ。」

オロン「そうなんだ。僕、ちょっと聞いて来てみるね!!」

リアナ「よく分からないけど、宜しくね!オロン。」

オロン「クムサスは、まだ夜が怖い?」

クムサス「怖いんだけど、何だろう…。ねぇ、オロン?」

オロン「なぁに?」

クムサス「僕が暗がりが怖い時、お前がまたそばに居てくれる?そうしたらなんだか怖くなくなるような気がするんだ。」

オロン「ぼくと精霊契約するってこと?」

クムサス「精霊契約?」

オロン「うん。精霊契約。ぼく精霊契約についてもウィンディア様にちゃんと確認してくるね!今度は間違えないように!」

クムサス「僕も精霊契約について先生に確認しておくよ。今度は間違えないために!だってこの体はリアナだからね!」

リアナ「おにいちゃん、ズルい~!」

クムサス「オロンにぴったりな名前を考えておかないとな!」

少し懐かしんだ話をした後、オロンは帰っていった。この頼りない精霊オロンが兄妹2人の救世主となることはまだ誰も知らない…。

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