022.ただいま
前回のあらすじ。
アイテム袋の中身を見た。
フェイとトーネと酒の勢いでヤった。
翌日、エンバーは目を覚ました。
初めての二日酔いでの頭の痛みに耐えながらも、エンバーはなんとか起き上がる。
昨日のあれは夢だったのではないかと思いながら、エンバーは辺りを見渡した。
「ん、、、んん……」
「んへへぇ……」
そこには、真っ裸で寝そべるフェイとトーネの姿があった。
「マジかぁ……」
エンバーは頭を抱える。
責任……取るべきだろうな。フェイは村娘だからいいものを、トーネに至っては竜だからなぁ。親御さんへの挨拶とか大変だぞ……。などと考えるエンバー。
取り敢えず、エンバーは服を着てから二人を起こすことにした。仮に今、リリアンとシエスタが起きてしまったら変な誤解……いや、実際に事後であるが、言い訳が大変なのは代わりないだろう。
「おい。おい……フェイ。トーネ」
「ん、、、あと、、ちょっと……」
「ちょっとじゃない。起きてくれって」
「んー。何よ……いいじゃな--って、エンバー?」
異変に気が付いたフェイが目を擦りながらムクリと起き上がる。暫くボーッとしていると頭がクリアになっていき、回りのことを気にする余裕が出てきた。
やがて、フェイは妙に肌寒いと感じて下を向く。
「……裸ッ!? なんで--って、そっか。昨日エンバーとノリでヤッたんだっけ」
「なんでそんなに冷静なんだ……?」
この年で経験の差が……? と口に出しかけたが、それを聞くのは野暮だろうと思い口には出さずに、エンバーはトーネへと向き直る。
エンバーはフェイが着替えているのを横目に、未だに眠っているトーネを揺らした。
「トーネも起きろ。ってか服を着ろ」
「んー。あと五分……」
「その五分が惜しいんだよ。起きてくれって」
トーネをゆっさゆっさと揺さぶるが、起きないという意思は揺らがない。が、その固い意思とは裏腹にそれなりにある双子山がぷるぷる、たわたわと揺れる。
一瞬、それに釘付けになったエンバーを、フェイは見逃さなかった。
「んー? なーにを見てるの~?」
「うぇ!? い、いや……なにも!?」
着替え途中であったため素肌ではなく下着付きであったが、エンバーの背中にたゆんとしたのが当たる。
「あ、当たってないか……?」
「ふふふ……当ててんのよ」
などと話ながらも、二人はトーネを起こしながら帰宅の準備を進めていく。
やがてトーネも起床し、あとはリリアンとシエスタが起きるだけという状態になった。
三人は手持ち無沙汰となったために、円になって雑談を楽しんでいた。
「え? 避妊の魔法なんてのがあるのか?」
「ええ。無属性魔法にね。あたしの家じゃ、いの一番に教わる魔法ね」
「因みに、私も使えるよ?」
それを聞き、あからさまにホッとするエンバー。
それを見たフェイはニヨニヨとしながらエンバーへと詰め寄る。
「あれ? なに? いっちょまえに責任を取ろうとか思ってたりしたぁ?」
「ぐっ。う、うるせー」
「んー? 照れてるぅ! かわいー!」
「む、むぅ……」
エンバーの頬をツンツンとつつくフェイ。
なんてことを話していると、テントの中から呻き声を上げ地を這いずるシエスタが出てきた。どうやら、二日酔いで頭がやられているようである。
「うぅ……。頭が……。あ、エンバーさん、トーネさん。おはようございます」
「おはよ。シエスタちゃん」
「ああ。おはよう。大丈夫か? 水要る?」
「はい。いただきます……」
シエスタは渡された水をコクコクと音を上げながら体内へと含ませていく。
因みに水事情だが、今回はフェイがウォーターの魔法を使えるため、フェイの魔力が続く限り水は使い放題だ。
「ふぅー……。美味しかったです」
「ああ。お粗末様」
「……水を出したのあたしなんだけど?」
「ハッハッハ。細かいことは気にするな」
フェイはジト目でエンバーを睨むが、エンバーはどこ吹く風か。手元にある水を口に含ませる。
「ふふ……。仕返し!」
「ブフォッ」
エンバーが口に水を含んだ次の瞬間、口の中の水が勢い良く飛び出した。
これは水属性魔法の技術の一つで、一度出した水属性魔法の水は、少し魔力が嵩むが暫く操作可能であり、今のは口に入った水をフェイが操作し、エンバーに吹き出させたのだ。
ケホッケホッと咳き込む姿を見て、フェイは堪えきれずに腹を抱えて大笑いする。
「ハハハハハッ! やーい、きったなーい」
「てめッ。子供みたいなことしやがって!」
エンバーは手に持つコップの中身をフェイに放る。
「ふふん。甘いわ!」
その中身の水はフェイに飛び掛かる--ことなく空中で止まり、放った水は放った本人であるエンバーに飛び掛かった。
「うわっぷ」
「水を出した相手を考えることね」
フェイは立ち上がり倒れたエンバーの横に立つ。
「ふふん。勝った」
「うぅ……負けた」
フェイは仰向けに倒れたエンバーの腹を踏み、勝ち誇った笑みを浮かべ、エンバーはぐったりと倒れる。
「……二人とも、仲良いね」
「はい……。何かあったんですか?」
いつの間にか起きていたリリアンと、最低限身だしなみを整えたシエスタが二人を怪しむ目で見ていた。
エンバーは目を反らすが、フェイは腰に手を当て勝ち誇ったような笑みで言い放った。
「まーねッ!」
「「………」」
シエスタとリリアンは顔を見合わせる。「何があった?」とでも言いたげな表情である。
「はいはい。根掘り葉掘り聞くのは後にして、今は帰りの準備を急ごうね。三人はともかく、エンバーさんはクランに所属してるんでしょ? 心配してるんじゃない?」
「そ、そうでした!」
「い、急がなきゃ」
二人はテントに戻り、急ぎ身支度を始めた。
エンバーは立ち上がり、トーネへと近寄って耳打ちする。
「お前はこれからどうするんだ? 俺の護衛をするとか言っていたが……」
「もちろん、エンバーさんのいるクランに入るつもりだよ。無理なら無理で物陰から護衛かな。元々あの森にいたのも、君のいる町まで行くための過程だったし」
ふーん。と、ボソッと呟くエンバー。
エンバーはトーネがクランへと入れるのかと考えるが、恐らく入れるだろうと結論付ける。
アイリスの態度や言動を考えると、どうも強い人物を求めているように見える。それを考えれば、竜であり、人型でも恐らくゴードンより強いトーネは魅力的に映る筈だ。
「あらなに? 内緒話?」
「まぁ、そんなところだ。話に入りたいなら共鳴の方舟に入ることだな」
「無理でしょ。あんたにすら勝てないのに」
まあ、俺で最弱だからな。と苦笑するエンバー。
実際、エンバーはフェイの限界を知っている訳ではないが、入れるかと聞かれればお世辞でもそれは難しいだろう。
「でも、共鳴の方舟絡みってことはトーネさんも共鳴の方舟に入るの?」
「ええ。話を聞いてたら面白く感じてね。まあ、試験を突破できるかは分からないけど」
「いや……。出来ると思うが……」
というか、トーネであればゴードンくらいであれば簡単に倒せるだろう。
暫く雑談を続けていると、テントの中から昨日と同じ服を着たリリアンとトーネが出てきた。
二人--というよりエンバーも、昨日は突発的に町から出てきたため替えの服は持ってきていなかった。しかし、エンバーの場合は服に『防汚』の付与がされているため臭いも汚れも付かなかったが、二人はそうはいかない。
実はこっそり、テントの中で互いに臭わないかを確認していたりしている。
二人がテントから出てきた後はテントを畳んでアイテム袋に仕舞う。
この時、手伝いは大丈夫と断ったが申し訳なさそうにシエスタとリリアンが手伝ってくれた。どうやら、準備に時間を取ってしまったことを若干負い目に感じているようだ。
そうして、五人と一匹は漸く準備が整い野営地から立ち去るのだった。
* * *
五人と一匹は一時間ほど歩き、漸く町にたどり着くことが出来た。道中は特に印象に残ることはなく、群れからはぐれたのであろう単体のゴブリンが出現したくらいである。
一行は心配していたという門番の騎士に謝罪をしつつ、町へと帰り着いた。
エンバーたちは町中を歩き、冒険者ギルドの前で止まる。
「それじゃ、ここでお別れだ。俺たちはクランハウスに向かうから」
エンバーは振り向き三人娘を見る。
「ええ。今回はありがと。必ず借りは返すわ。トーネさんも、また会いましょう」
「この借りは、絶対今度返すから!」
「ありがとうございました。また今度、一緒に依頼を受けましょう」
三人はそれぞれエンバーへと感謝し、フェイたちの寝床である馬小屋へと帰って行った。
そうして、エンバーとトーネは三人に手を振り、共鳴の方舟のクランハウスへと向かうのだった。
* * *
三人娘と別れたエンバーとトーネは共鳴の方舟のクランハウスの前に立っていた。
相も変わらず無駄に大きいクランハウスを見上げるエンバーと、初めて人の作った建造物に入ると胸をときめかせるトーネ。
エンバーたちはこれからクランハウスへと帰る訳だが……絶対にアイリスにからかわれるだろうなと覚悟を決めるエンバー。何せ、『朝帰り』『女連れ』などというからかうのに持ってこいな内容である。まだ短い付き合いではあるが、これだけは自信を持って断言できる。
「ふぅ……。それじゃ、入るか」
「なんでそんな覚悟してるの……?」
エンバーはトーネの言葉を話し半分で聞き流しながら、クランハウスの扉を開けたのであった。
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