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祝いの日

作者: 九条 かな
掲載日:2023/01/23

苦しかった。高校を卒業したらどうするのか、将来なにをするのか、悩みながらも過ぎる日々。


北海道で生まれた私は、ごく平凡と生きてきた。勉強は良くも悪くもなく、友達もいて、彼氏もいる。幸せなんだ、と自分で理解している。けれどなにか足りない。

昔から先のことを考えるくせがあった。明日はあの予定があるからどうするだとか、今日の失敗はどうしたら明日は上手くいくかだとか、そんな先々のことを考えては明日が苦痛だった。嫌でも明日は来ると分かっているけれど。


「明日の学校帰り、一緒に帰ろう」

彼からメッセージが来た。彼はバスケ部のキャプテンで忙しい日々を送っている。そんな中でも部活がない日は私と一緒に帰ってくれる。私の事を大切に思ってくれているのだ。

彼のメッセージに返事をして、私は布団に入った。暗い部屋で考える。私は将来なにをして、誰といて、何を楽しめているのだろうか。“明日”が来ることでさえ怖がっている私に何ができるのだろう。この先、何を目指して努力するのか。いや、努力さえもできないのであろう。


次の日、彼は学校に来なかった。いつもなら休む連絡をくれるのに。家に帰り、彼にメッセージを送る。

「今日はどうしたの?」

それからいくら待っても、返事は来なかった。

“明日は付き合って1年記念日なのに”

その日の北海道は10年に1度の大雪を記録した。



私が彼を好きになったのは彼からの告白を受け、付き合い初めた後だった。それまでの彼氏に振られ、すっかり抜け殻のようになった私はその寂しさを埋めるために今の彼氏を利用したのだった。私がそんな人間だとは知らずにずっと大切にしてくれる彼のことを私は日に日に好きになっていった。ある日私は彼に尋ねた。

「私のどこが好きなの?」

なんの取り柄もない私のどこに魅力があったのか、私にはわからなかった。

「可愛いし素直だし一緒にいて楽しいところだよ」

私はそんなにいい子じゃないのに


2人で色々なところに行った。夏は電車に乗って小樽へ行った。秋はロープウェイに乗って山の上の展望台に行った。冬でも近くの公園でよく長話をした。卒業したら、一緒に東京へ行こうと約束した。もっと沢山色んな所へあなたと行きたかったのに。

彼が自殺した。その前日から続いた大雪がついに止んだ日、彼は1人部屋で首を吊った。その日は私たちの記念日だった。




それから何ヶ月か経っても、私は立ち直れずにいた。現実を受け入れられなくて、ただただ苦しかった。なぜ彼が苦しんでいたことになにも気づかなかったのか。どうして、どうして。


ー私だ、彼を苦しめていたのは、私だ。ー


私は彼を利用していた。何もない自分が嫌で、周りからの目が怖くて、皆に羨ましがられる存在になりたかった。友達もいて、彼氏もいて、なんでもできるような、完璧な人になりたかった。いつの間にか虚の自分を作り出していた。思ってもいない言葉を振りまき、虚の笑みを浮かべ、自分の本音とやらを誰かに話したことなどもちろんなかった。私は彼に、なにかしてあげただろうか。いつも貰ってばかりで、自分のことしか見えていなくて、それでも優しくしてくれる彼に甘えていた。もう一度、彼に会いたい。私は私自信を責め続け、どうしようも無い後悔に押しつぶされそうになっては、手首の上でカッターを動かした。生きる意味を失い、誰かと話すことも困難になった。ずっと後ろを向いているわけにはいかないと誰かは言ったが、私に前などなかった。ただ、ただ、苦しかった。そんな状況で、大学などに進めるはずもなく、ある意味で私は過去の悩みから解放された。大きな苦しみと引き換えに。



春が終わろうとしていた頃、事態は大きく急変した。

あの時、どれだけ探しても見つからなかった“遺書”が見つかった。

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