96.エロ本飛行機
危機的状況の中、オレは起死回生を図るために、エン魔に借りた緊縛鬼地獄――要はエロ本で紙飛行機を作ってほしいと夢野に頼んだのだった。
夢野は、表紙に目をとめるなり顔を真っ赤にして、雑誌から目をそらし渋い表情。
エン魔もまた涙目で苦い表情を浮かべる。
「ソースケ、また破くのね。破くんでしょ。」
多少のいざこざはあったものの、なんとかエロ雑誌で作られた紙飛行機が完成したのだった。
夢野が不本意ながらも、顔を真っ赤にしながら紙飛行機を折ってくれたのだ。
その間も、肉列車の暴走は止まらず、夢野はそれをかわし続けなければならなかった。
エン魔に矢筒から例の赤い破魔矢を引き出してもらう。
破魔矢と言うにもかかわらず、エン魔は何という事もなく矢をつかむことができる。
オレはと言えば、悪霊ポイントをかなり持っていかれ、20ポイントあるかないかという状態だ。
次に破魔矢を触れたときには、即消滅してもおかしくない。
オレは、肉列車鎮圧計画――言うほどたいそうなモノでもないが……をエン魔に耳打ちする。
今まで傍観者を気取っていたロリエン魔が、突如、瞳を輝かせツルペタの小さな胸を大きくそらせる。
「フフッ。やっぱり、最後はわたしの力が必要なようね」
すべてのものの行ないに関わらないと言っていたはずのエン魔が、水を得た魚のように活力をみなぎらせる。
――おいおいおいおい。
本当は、今まで手を出せることがなくて、ふて腐れていたのではないかとさえ思えてきた。
オレは、エン魔と夢野に目配せする。
計画実行の合図だ。
エン魔と夢野があいづちを返す。
オレは、両手を軽く握ると、視野の中に吹き荒れる風の動きを、意識の中心、そのさらに奥底に描き出すように強く念じる。
夢野は、肉列車の異形に照準を定めて、エロ本製紙飛行機を構える。
悪霊っぽい青黒い炎がオレの身体を包み込み、周囲の空間に異変が生じ始める。
オレは、ひざまずいて低い姿勢をつくると、ちびっ子エン魔に両手を伸ばす。
エン魔は、少し顔を赤らめながら視線をはずすが、素直にオレの手の中に入ってくる。
両手に赤い破魔矢を握るエン魔。
オレは、エン魔をしっかりと抱き上げた。
周囲に生じた微妙な気圧の変化が気流を生み出し、やわらかな風がただよい始める。
「夢野!今だ!」
夢野への合図と同時、オレは地面を蹴る。
夢野が紙飛行機を投げ放った瞬間、包み込むような風が流れ出す。
オレは、エン魔を抱いたまま紙飛行機の上に飛び乗った。
――思った通りだ。
オレとエン魔には、重量がほとんどないうえ、風の抵抗も受けることはない。
紙飛行機が小さすぎて片足立ちの姿勢だが、疲れることのない霊体のオレには何の問題もなかった。
肉列車の腕の間を縫うように進む紙飛行機。
肉列車の腕は、オレとエン魔をすり抜けていくので、紙飛行機にさえ当たらなければ落とされることはない。
そして、最適な強さで吹く風が紙飛行機を肉列車の異形に向かって加速させる。
――高度、方向、良好だ。
「エン魔!」
「ま、まかせなさい」
オレの合図に少しとまどいの表情を見せるエン魔。
オレは、エン魔を紙飛行機に降ろすと同時に、紙飛行機を蹴って飛ぶ。
そして、肉列車の車両上に飛び移ると、すかさずパンタグラフの陰に身をかくした。
紙飛行機には、さすがに二人同時に立つスペースはない。
エン魔は、片足立ちしながらもヨガでもするように低い姿勢をつくり、破魔矢を肉列車の異形に向けて構える。
そのとき、肉列車の腕がかすかに紙飛行機をかすめた。
紙飛行機の進行方向がわずかにずれる。
珍しくエン魔が取り乱し、大声を上げる。
「ソースケ!目でしょ!目って言ったよね!ちょっ、ちょっと、ソース……」
バフッ。
そのまま、エン魔は紙飛行機もろとも肉列車の口の中に呑み込まれていった。
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次回、「97.ウネウネヌルヌル」
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