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95.怒りと哀しみ

 けも娘は、オレと夢野を窮地をから救うため、自らに課した禁忌を破って餓鬼に喰らい付いた。

 けも娘の姿が餓鬼へと変貌し、共喰いする餓鬼の中に消えていった。


「くーっ、うっうぁー」


 気づくと、オレはうなり声を上げていた。


 ゴッ、ゴゴゴゴ、ゴォー。


 そして、その叫び声と共に、地面が大きく揺れ始めたのだ。


 ピッ。

『オンリョウ、フルブーストデス』


 ピー。

『ケイコク、オンネンボウソウシマス』

『ケイコク、オンネンボウソウシマス』


 床に亀裂が走り、天井からコンクリートブロックが落下する。

 怒りと哀しみに打ち震える感情が世界を揺るがしていく。


 しかし、オレ自身何が起こっているのかまったくわからない。


 夢野は、低い姿勢で身構え、落下物に警戒する。


 エン魔は、相変わらず列車の上に腰かけ、パッと開いた手を顔の前にかざすと、瞳に涙をため暇そうにあくびをしている。

 列車は激しく揺れているのだが、まったく気にとめていないようだ。


 しかしながら結果的に、オレは、オレの起こしたであろう衝撃で、失いかけていた自分を取り戻すことができた。


 ピッ。

『オンネンボウソウノ、シュウソクヲ、カクニンシマシタ』


 ――くーっ、な、なんてこと……。


 しかし、肉列車の異形は、哀しみに浸っている余裕すら、オレたちに与えてはくれない。


「あーぁ、めんどくせー。餓鬼どもがいなくなってまった」


 瓦礫にうずもれた腕をなんとか引きずり出し、闇雲に振りまわす肉列車の異形。


「めんどくせー。めんどくせー。動くのもめんどくせー。喰うのもめんどくせー。生きるのもめんどくせー」


 エン魔が瞳を細め、苦い表情を浮かべる。


「惰眠の闇ね」


 大蛇のような六つの腕が、夢野を捕らえようと同時に襲い掛かる。


 夢野は、肉列車の腕を十分引き付けると、つかみかかる直前で飛び上がる。

 そして、腕をかわすと同時にその腕の上に飛び乗った。


「あっ」


 夢野は、呪符を貼ろうと考えたのか袴をさぐるが――実際は袴風スカートなのだが、呪符を使い切ったことに気付き慌てて腕から飛び降りる。


「くうぅ。めんどくせー。めんどくせー。めんどくせー。めんどくせー。めんどくせー。」


 夢野をつかみそこなった肉列車の異形が狂ったように腕を振りまわし、列車、柱、ホームの床、あらゆるものを破壊していく。

 オレの起こした地震によって、ただでさえもろくなっている天井や柱が崩れ落ち、このままではすべてが崩壊し埋もれてしまうことにもなりかねない。


 肉列車を止めるためには、やはり何とかして破魔矢を使うしか考えられる方法はない。


 しかし、悪霊ポイントが限界に近い今のオレが破魔矢を持てば、肉列車に近づく前に消滅してしまうだろう。


 エン魔なら破魔矢を持って肉列車に近づくことができるかもしれないが、ホームをさらうかのように動き回る肉列車の腕に、エン魔はともかく破魔矢が弾き飛ばされかねない。


 もちろん、夢野は問題外だ。


 もっと速く、そして肉列車の虚をつく方法はないものか。


 ――んっ!!


 危機的状況の中、オレの頭の中にイチかバチかの策が浮かぶ。


「エン魔、緊縛鬼地獄、貸してくれ」


 地獄という言葉に引かれて、エン魔が参考にするといって持っている雑誌だ。

 エン魔は気付いていないようだが、いわゆるエロ本というやつだ。


「な、なによ、急に」


 エン魔は顔をしかめると、胸元を押さえて後ずさる。


「オレに考えがある。お願いだ、閻魔様」


 ここぞとばかりに、様付で訴えるオレ。


「か、貸すだけだからね。絶対、返してもらうから」


 不満そうな顔で、緊縛鬼地獄を差し出すエン魔。

 エン魔から雑誌を受け取ると、今度はそれを夢野に差し出す。


 なにげなく雑誌を受け取った夢野だったが、その表紙に目をとめた瞬間、顔から火が噴き出すのではと思うほどに顔を真っ赤にして、雑誌から目をそらす。


「キャー。セ、センパーイ。こんなときに、な、何なんですかー?」


 まるで気味の悪いものにでも触れるかのように、雑誌のかどを指でつまみ遠ざけようとする。

 オレは、いたって真顔で夢野のうるんだ瞳に目を合わせる。


「夢野、それで紙飛行機を作ってくれ。」


「うぅー」


 渋い表情の夢野。


 エン魔もまた涙目で苦い表情を浮かべる。


「ソースケ、また破くのね。破くんでしょ。」


 あんなエロ本がそんなに大切なのだろうか。

 ちなみに、「また破くのね」の「また」には、閻魔帳の件が含まれているのだろう。


 ――エン魔、ごめん。破きます。


 そうこうしたあげく、エロ雑誌で作られた紙飛行機が完成したのだった。


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