81.悪霊の罠
オレの巻き起こした強烈な突風が素良に向かって吹き付け、素良が風の圧力に打ち勝とうと、足を踏んばり前方に態勢を傾ける。
とほぼ同時にいきなり風がなぐ。
風の抵抗に負けまいと前のめりになっていた重心がくずれ、素良は前につんのめる格好となった。
そして、転ぶのをさけるための一歩が、前に踏み出される。
ワイヤーの輪の中に……。
「素良ちゃーん、こーちらー、手ぇーの、鳴ぁーる、ほーぉえー」
突然の悪霊モード全開に、わけがわからず唖然とする素良。
オレは、手元のワイヤーを、エレベーターの四角い肉の異形、その大きく開かれた口の中に放り込む。
肉の異形がそれに反応して、まぶたをめくり上げ、ギョロリとした眼球をむき出しにする。
口に入るものを与えられた異形は、飢えのあまり狂ったようにそのワイヤーをむさぼり食う。
異形の異常に大きくごつい腕が、ものすごい勢いでワイヤーを口の中にかき込んでいく。
そして、それは一瞬の出来事だった。
素良の踏み込んだワイヤーの輪がまたたく間に縮まり、素良の右足にからみつき縛り上げる。
と同時にワイヤーが猛烈な勢いで引っ張られ、縛られた足はもちろんのこと、素良の身体ごと強引に持ち上げられ、宙吊りになる。
片足を思いっ切り引っ張り上げられたことにより、不意を突かれた素良は、大股開きで逆さ吊りになった。
その反動で、巫女装束の袴がはだけ、素良のしなやかな脚線があらわになる。
突然の出来事に、何がどうなったかわからず、思考が止まったかのように目を丸くする素良。
「いっ、いやー」
身をくねらす素良。
しかし、暴れれば暴れるほど、袴ははだけていく。
――おっ、おやっ。思いのほか可愛らしい、淡い桜色……。
オレの視線に気付いた素良が、脚をピッタリと閉じ、手を腿の間に突き上げるようにして、必死ではだけた袴を押し上げる。
「くぅっ……」
涙目でにらみ付ける素良。
吊り下げられたワイヤーのねじれで、素良の身体が回り出す。
――何とかかくして、尻かくさずだ。
残念なことに、回転する素良は、お尻パンツ丸出しだった。
ピッ。
『 +40 アクリョウポイントガ、カサンサレマシタ』
素良は、吊るされたまま、成す術もなく唇をかみしめる。
実は、オレは、餓鬼を捕らえるために仕掛けられていたビル周辺の罠を参考にして、ワイヤーを引っ張ることで、足を縛り付け吊り上げられるように、檻の柵などを利用してワイヤーを室内に張りめぐらせたのだ。
そして、そのワイヤーを引っ張る動力源は、あのエレベーターを動かす肉の異形だった。
奇しくも素良は、自らが利用していたモノによって、捕らえられた餓鬼同様に吊るされているのだ。
その時、ワイヤーが二度リズムよく引かれた。
エン魔に手渡したもう一つのワイヤーだ。
オレは、それを合図に、もう一方の肉の異形が開く口の中にワイヤーを放り込む。
肉の異形がギョロリとした眼球をむき出しにし、ものすごい勢いでワイヤーを口の中にかき込んでいく。
霧の中に延びるワイヤーがピンと張られる。
「キャー」
霧の彼方から響きわたる悲鳴。
なおもワイヤーが引かれると、霧の中からスラリとした脚が突き出てくる。
はだけた袴から色白の太ももをのぞかせながら、素良同様に逆さに吊り上げられる。
「いやー! なに、なにこれー! 降ろしてよー」
エン魔とけも娘の揺動に引っかかり、輪の中に足を踏み入れてしまった紗羅だった。
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次回、「82.双子の決意」
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