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79.揺動と霧散

 悪霊であるがうえのよこしまな着想を含んだ妙案を、エン魔に耳打ちし、集めてきたワイヤーロープを手渡すオレ。


 エン魔は、頬をふくらませながらも、しぶしぶ指示通りワイヤーロープの先を持って霧の中に消えていった。

 エン魔に連れられ、けも娘もヒョコヒョコと後に続く。


 オレは、エン魔に渡したワイヤーロープの反対側をしっかりとにぎりしめる。

 こんな状況でなければ、幼子にお使いを頼んだ父親のように見えるかもしれない。


 手元から霧の中へ延びるワイヤーロープに目を落とす。

 今、オレとエン魔は、運命の赤い糸でつながっているわけだ。


 おっと、ロリっ子エン魔を見ていたら、気持ちの悪い想像をしてしまった。

 実際にオレとエン魔が手にしているのは、赤黒い血に染まったワイヤーロープだ。

 しかし、オレの運命を握っているのは、間違いない事実だ。


 オレは、準備していたもう一つのワイヤーロープで輪を作り、床に配置すると檻の柵などにワイヤーを通していく。

 視界の効かない霧の中の作業は、思った以上に手間がかかる。


 ピッ。

『 -5 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 その間も、刻一刻と悪霊ポイントが失われていく。

 これまでに、少なくとも十数回は悪霊ポイントが減算されている。


 ビュビュッ。


 霧の中から、だめ押しとばかりに二本の矢が同時に飛び出し、オレの右肩を通過する。


 ピッ。

『 -20 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 矢の飛んできた方向に目を凝らすと、霧の中に薄っすらと二つの人影が見え隠れする。


 素良と紗羅だ。


 間髪いれずに、次の矢が放たれる。


 ピッ。

『 -20 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 矢は、しつこいくらい正確にオレの右肩を貫いていく。

 オレの肩から、光の粒が霧散し、キラキラと虹色に輝きながら消えていく。


 ――こ、これ、ヤ、ヤバい……。


 オレは、数歩さがって檻を障害にし、矢の射線を切る。

 素良と紗羅の息はピッタリで、二人同時ではさすがに分が悪い。

 二人を引き離すもくろみなのだが、エン魔とけも娘が思いのほか手間取っているようだ。


「ガウ、ガウガウ、ガウ」


 その時、霧の向こうに浮かぶ素良と紗羅の影に、何かが飛びついた。

 霧に同化して、ここからではよく見えないが、間違いなくけも娘の揺さぶりだ。

 やっと、エン魔とけも娘の引き離し作戦が始まったようだ。


 案の定、一人は攻撃対象をけも娘に変えざるを得ない。

 あれは、紗羅の方だろうか。


 けも娘は、野性的な勘でギリギリの間合いを取りながら、誘い込むように檻の向こうに回り込んでいく。

 紗羅は、矢を放ちながらけも娘を追う。

 けも娘と紗羅は、檻の向こう側に見えなくなっていった。


 残った素良は、オレに狙いを定めて、矢を弓につがえながらも一歩また一歩と間合いをつめ、射線を確保しようとする。

 オレは、射線を確保されるのを防ぐため、素良の動きに合わせて回り込み、檻が作り出す死角にゆっくりと移動する。


 移動しながらも、オレは素良をある場所に誘い込もうとしていた。

 あと数歩前に出てくれさえすれば、素良の足がその位置――ワイヤーの輪の中に入りこんでくる。


 ピッ。

『 -5 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 霧は、少しずつ薄くなってはきているものの、依然として悪霊ポイントを奪い続けていた。

 オレは、痺れを切らしエレベーター前まで駆け戻る。


 素良が一歩踏み出し、弓を引きしぼる。


 ビシュッ、ビシュッ。


 正確に射られた二連の矢は、またしてもオレの右肩を寸分たがわず貫通していく。


 バフッ。


 ついに、オレの右肩が悲鳴を上げ、光の粒となって霧散し、肩に大穴が開く。


 ――ひぇーっ!


 と同時に、右腕がキラキラと虹色に輝く塵となって消えていった。


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