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77.水と炎

 巨大水槽に亀裂が走っていく。


 二十本近い破魔矢を一斉に放つという素良と紗羅の弓術を、強烈な突風を巻き起こすことによって何とかかわしたオレだったが、なぎ払った矢が巨大水槽の至るところに突き刺さってしまう。


 水の重量が亀裂の入ったガラスに圧力を加え、しだいに水しぶきを噴き出し始め、そこをかわきりにガラスを突き破って大量の水があふれ出す。

 そして、それに呼応するかのように、ありとあらゆる水槽のガラスが砕け散り、洪水のような勢いの激流が押し寄せた。


 激流に足をすくわれたけも娘が流され、檻に身体を打ち付ける。

 しかしながら、それにより流れにさらわれず踏み止まることができた。


 素良と紗羅も、流れに呑まれたのか姿が見えない。


 オレとエン魔は、霊体なので水の影響を受けるわけもなく、水流に流されることもない……。

 はずなのだが、なぜかエン魔は全身に水を浴び、びしょ濡れになっていた。


 ピッ。

『 -20 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 ――なに? なに? なに?


 ピッ。

『 -5 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 エン魔が視線を向ける。


「ソースケ。これ、聖水だよ」


 ――ゲゲッ。


 エン魔の言葉に凍り付く。


 ピッ。

『 -5 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 聖水の深さは、オレの膝の辺りまではある。

 水に浸っているだけにもかかわらず、オレの足からはキラキラと輝く光の粒がただよい出ていた。


 ピッ。

『 -5 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 ――ヤッ、ヤバい。これ、ダメなヤツだ。


 このままでは、足を失いかねない。


 ピッ。

『 -5 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 オレは、檻の柵を足がかりに何とか檻の上までよじ登る。

 足の動きに影響がないことを確認し、少しホッとする。


 続いてエン魔とけも娘も檻を登ってきた。


 ビュッ。

 ビュッ。


 破魔矢の空を切り裂く音。

 素良と紗羅のほぼ同時に放たれた矢が、十字にオレの身体を貫通する。


 ピッ。

『 -10 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 ピッ。

『 -10 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 檻の上に立つオレは、周囲から目立つことこの上なく、破魔矢で射るには格好の的となったようだ。

 さすがのエン魔やけも娘も、どこから射られているのかわからない矢を防ぐことは、簡単ではない。


 ――なにかないか、なにかないか、なにかないか……。


 この危機的状況から逃れるために使えそうなものはないか、目を皿のようにして周囲を見まわす。

 辺りには、檻、ワイヤーロープ、割れた水槽、聖水、ボイラー、炎、亡者、エレベーター。


 ――聖水と炎!!


「エン魔! けも娘とエレベーターの中に避難していてくれ」


 エン魔とけも娘は、檻の上から飛び降りる。


「ソースケ。気を付けて」


 そう言い残して、エレベーターに向かうエン魔に、親指を立てて返す。


 オレは、両手を軽く握ると、視野の中に吹き荒れる風の動きを、意識の中心、そのさらに奥底に描き出すように強く念じる。


 しかし、さすがに今回ばかりは、オレの想像を具現化できるのかどうか不安だ。

 風の動きがかなり複雑なものであるうえ、いくつもの風を操らなければならない。


 悪霊っぽい青黒い炎がオレの身体を包み込み、周囲の空間に異変が生じ始める。

 微妙な気圧の変化が気流を生み出し、やわらかな風がただよい始める。


 ピッ。

『 -10 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 ピッ。

『 -10 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』


 素良と紗羅の放った矢が、オレの身体を貫通する。


 ――くっ……。


 その時、風の勢いが急に強さを増し、四方八方から吹く風が、ある一点に集中する。

 その一点に高濃度に圧縮された空気のかたまりのようなものが、出来上がっていく。

 室内の空気がそのかたまりに吸い上げられ、辺りの空気が薄い。


 オレとエン魔は、まったく問題ないのだが、けも娘の呼吸はすこし苦しそうだ。

 それでも何とか、けも娘が馬鹿力でエレベーターの扉を閉める。


 圧縮空気のかたまりは、吹きつける風力の微妙なバランスによって、ゆっくりと動き始める。

 そして、ボイラー施設の炎に向かって押し流されたかと思うと、その火炎の中に突っ込んで行った。


 ドゥゴォォォゴゥォォォ……。


 猛火がとぐろを巻き、室内に荒れ狂う。

 圧縮空気のかたまりの中に含まれる高濃度の酸素によって、大爆発が起こったのだ。

 吸い上げられていた空気が反動で室内に膨れ上がり、爆発の勢いをさらに増大させていた。


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