76.破魔の乱舞
ビュッ、カッ。
破魔矢がオレの肩辺りを通過し、背後のカベに突き刺さる。
ピッ。
『 -10 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』
けも娘のいたずらによって動き出したエレベーターの作動音で、ここへの侵入を悟られてしまったようだ。
矢の飛んできた方向に目を向けると、次の矢がオレの顔面に食い込んだ。
ピッ。
『 -10 アクリョウポイントガ、ゲンサンサレマス』
矢はオレの頭を通過してカベに突き刺さる。
顔面に何かが突き刺さる瞬間が目に入るのは、オレにとってはかなりの精神的ダメージなのだが、身体的にはまったく痛くもかゆくもない。
ただ、悪霊ポイントは確実に減っていくわけでこのまま放っておくことはできない。
よろけながらも、視線を先に向けると弓を手にした巫女装束の少女二人。
よくよく見ると、巫女装束の少女は、なんと素良と紗羅のようなのだ。
とはいっても、足の細工をはずし、巫女装束を着た二人は、どちらがどちらなのか見分けがつかない。
始めてみる二人に戸惑うエン魔。
「紗羅がふたり?」
オレは、二人の動きから目を離さず、声を潜める。
「ひとりは、素良。いや、素義だ」
エン魔が目を丸くする。
「双子だったの?」
――そう、そして、レズビアン。
心の中で付け加えるオレ。
右側に立つ巫女が女性であればしっくりくる高い素義の声を発する。
どうやら、こちらが素良らしい。
「高槻さん、知らない方が幸せなことってあるんですよ」
オレは、素良の言葉を受け流し、語気を強める。
「ゆ、夢野は?」
少し肩を落とした紗羅が割り込む。
「ごめんなさい。シオリっちに頼むしかなかったの」
素良が強い意志を持った瞳を向け、冷静に言葉をつなぐ。
「かりそめの平穏を享受しようと思えば、少なからず犠牲は付きものということよ」
素良の凛とした表情に、悔しい気持ち、残念な気持ち、悲しい気持ちが入り混じった複雑な感情が影を落とす。
「どちらにしろ、ここに来てしまったら最後、もう平穏な世界に戻すことはできないわ」
言うが早いか弓矢を引きしぼり、オレに向けて矢を放つ。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
紗羅も素良にならうように弓を引く。
けも娘が大きく飛び跳ね、矢をたたき落とす。
エン魔もオレの前に割って入ると、何気ない表情で平然と矢をつかむ。
「べっ、べつにソースケを助けようとしているわけじゃないからね。この世のためよ。この世のため」
お約束のようなツンデレ風セリフを吐きながらも、勢いよく飛んでくる矢をやすやすとつかんでは捨ていく姿は、今のロリっ子エン魔状態でなければ、閻魔大王様の風格と言えるところだろう。
そのうえ、たとえ矢が当たろうが、エン魔自身には何の問題もない。
エン魔と対峙できる者がいるとしたら、見てみたいくらいだ。
このままではマズいと判断したのか、素良と紗羅はお互いに目配せすると、十本近い矢を片手に握る。
二人は息を合わせると、左右のカベを蹴って跳ねあがり、棒高跳びの背面跳びさながらの姿勢で矢を連射する。
瞬時に、二十本近い矢が鋭い音と共に、オレとその前に構えるエン魔とけも娘に襲いかかる。
そのまま、宙で一回転し低い姿勢で降り立つ素良と紗羅。
さすがのエン魔とけも娘も、二十本の矢を同時に受け止めることなど出来はしない。
愕然とするエン魔の髪を緩やかな風が揺らし、縮こまるけも娘の毛並みが波打つ。
次の瞬間、エン魔とけも娘の背後から強烈な突風が吹き抜け、二十本の矢がなぎ払われた。
オレが巻き起こした突風だ。
ちなみにエン魔のスカートも後ろからまくり上がり、ロリエン魔のお尻パンツでポイントも地味に回復した。
測ったような手際の良さに、自画自賛で勢い付くオレの耳が、不穏な音を捉える。
ピッ、ピシッ、ピシシッ。
音の先を見上げると、突風でなぎ払った矢が水槽の至るところに突き刺さっていた。
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次回、「77.水と炎」
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