73.エレベーターダイブ
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かご室は、地下の最下層で停止したようだった。
けも娘が無理矢理こじ開けたエレベーター扉の向こうをのぞき込む。
夢野を連れ去ったかもしれない怪しげなホテルワゴンを追って、オレとエン魔とけも娘は、このエレベーターホールにたどり着いたのだった。
三階から見下ろす最下層は、とてつもなく遠くに見える。
――た、た、高い! ま、また、下りるのかよー。
ほんとに今日は、登って、下りて、おまけに落ちての繰り返しだ。
さすがのエン魔もニガ虫をかみつぶしたような表情。
「ちょっと、ソースケ。こんなのカベ伝いに下りてたら、日が昇って、そしてまた暮れていくわ」
クルクル回って楽しそうなのは、けも娘だけだ。
一刻も争う状況なのに、日が昇って暮れては、問題外だ。
オレは、何か良い策はないものかと頭をひねる。
エン魔は、ムッとした表情で、何やらブツブツとつぶやいている。
こんな状況にもかかわらず、いたって楽しそうなけも娘。
ふとオレの頭の中に、悪霊であるがうえのよこしまな着想を含んだ妙案、というか企みが浮かぶ。
「風を起こすから、合図したら、中に飛び込んで」
下層から強風を立ち上がらせ、その風に凧のように乗って下りていこうという作戦だ。
ここから飛び降りるのは、血の気が引く思いだが、迷っている余裕はない。
――まあもともと、血も涙もないが……。
エン魔がこれ以上はないといった疑いの目でオレをにらむ。
「だ、大丈夫なんでしょうね? ホントに、ホントよね?」
「ミーギャッキャッ」
けも娘は、意味が分かっているのか分かっていないのか、至ってルンルンだ。
オレは、両手を軽く握ると、吹き荒れる風の動きを、意識の中心、そのさらに奥底に描き出すように強く念じる。
悪霊っぽい青黒い炎がオレの身体を包み込み、周囲の空間に異変が生じ始める。
微妙な気圧の変化が気流を生み出し、エレベーターの下層からやわらかな風がただよい始める。
エレベーター扉の開くその先、エレベーター乗り場のへりに立つ。
――これ、思ったよりヤバい……。
オレは、グッと恐怖を押し殺すと、けも娘の見本になるように大きく手足を広げ、エレベーターの下層に向けて飛び降りる。
と同時に、下層から駆け上がって来ている強烈な突風の勢いが、空気の振動となって伝わってくる。
「エン魔、けも娘。今だ!」
オレは、空気の圧力を下方に感じながら、いろいろな意味で絶妙といえるタイミングを見計らい合図を送る。
そして……。
――フッフッフ。
オレは、身体を反転させる。
要は、背中から落ちていく格好だ。
上方では、ロリエン魔がチョンと足場を蹴って飛び降りるのが見える。
続いて、けも娘がオレの見本どおりの見事なジャンプ。
オレの背中側から強烈な突風が、狭いエレベータートンネルの中を嵐のように駆け上がっていく。
オレは、口角をあげてほくそ笑む。
――オレのもくろみ通り。
「キャー。ソースケ、わたしは閻魔よ。冥界の王なの。いやー! やめてー! こんなはずかしめ……」
エン魔は、スカートを両手で押さえ足を折って、少しでもオレの視線を避けようと試みるが、もはや、「何とかかくして尻かくさず」だ。
それどころか、強風はエン魔の上着もめくり上げ、ツルペタの胸からはブラさえもずれ始めている。
――ロリエン魔の純潔、潔白、白パンツもロリかわいい。
白パンツのお尻に赤鬼さんの絵でも描いてやりたくなる。
ピッ。
『 +20 アクリョウポイントガ、カサンサレマシタ』
『ポイントノゴウケイハ500デス』
けも娘はといえば、両手両足を思いっきり広げ、満面の笑顔で風を受けて降下している。
「ミーギャッキャッキャ、ミーギャッキャッキャ」
強い風で全身の体毛が後方に流され、真っ白な体毛に包まれてよく見えなかった胸やら何やらがあらわになる。
胸の丘の先端には、やっぱり桜色のつぼみ……。
思いっきり広げた両足のその根元には、もはや映像的にはNGとなるだろうあれやこれやが……。
さすがのオレも直視にたえない。
しかしながら、当のけも娘は、まったく気にかけていないようだった。
ピッ。
『 +20 アクリョウポイントガ、カサンサレマシタ』
『ポイントノゴウケイハ520デス』
夢野のことを思えば、不謹慎極まりないのだが、オレが悪霊である以上やむを得ない。
しかも、オレはただ悪霊の本分としてのよこしまな考えだけで、こんなことをしたわけではない。
風の勢いで落下の速度を下げることにより着地の衝撃を最小限に抑え、最下層にあるエレベーターの上に穏やかに降下することが目的なのだ。
――ん? えっ? そ、速度、落ちないぞ。
見ると、けも娘は、はるか上のほうで風を全身で受け、ゆっくりとエロかわいく降下して来ている。
――しまった!
霊体であるオレは、身体に気体が通過してしまうため風の影響を受けることなどないのだった。
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次回、「74.餓鬼の牢獄」
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