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67.ゆがむ空間

読みに来ていただきありがとうございます。

今回も、お付き合いよろしくお願いします。

 けも娘に振り回されてたどり着いた先は、ゆがんだような空間だった。


 周囲の状況に戸惑いながら立ち上がると、あの白い煙の闇に包まれた空間が目の前に広がる。


 ピチャピチャ。


 混乱するオレの脳裏に響く水音。


 音のする方に目をやると、けも娘が白い闇の空間とゆがんだ空間の境界部分で水しぶきを上げながら犬かき――猫かきといった方が合っている、をするような格好でオレの周りを回っている。

 いや、猫かきをするような格好ではなく、実際に猫かきをしているのだ。


 霊体のオレは、当然、水の中でも呼吸の必要がない――いや、もともと呼吸などしていない、そのうえ身体は水を素通りする。

 この感覚に慣れていないオレは、状況の認識に混乱をきたしたのだった。

 今のオレの状況を整理すると、ただ単に水から肩辺りまでを出して、水底に立っているというだけのことだ。


 状況を認識するや否や、手足が水の抵抗を感じ取る。

 オレの感覚は、状況認識に左右されるということなのだろうか。


 けも娘は、水の中にもぐったり回転したりしてはしゃいでいたが、しばらくすると水から上がり、「ブルルルルル……」と身体を揺する。

 けも娘の体毛を濡らす水が、水しぶきとなってはじけ飛ぶ。


 散乱する水しぶきに思わず目をふさぐ。

 どうしても霊体になる前の反応から抜け出せない。

 改めて目を開くと、そこには、赤黒い血を水で洗い流し、雪のように真っ白に戻ったけも娘がシッポをクネクネさせているのだった。

 けも娘は、身体を洗い流すためにここに来たのだろう。


 先ほどとは打って変わり、大きな青い瞳を輝かせながら、けも娘は満面の笑みをオレに向ける。


「ミィギ、ギ、ミィギ、ギ」


 ご機嫌に辺りを駆けまわるけも娘。

 俊敏な動きで白い闇に同化していく。


 結局最後には、けも娘の行方をオレは見失ってしまった。

 気を取り直して、冷静に辺りを見まわしてみると、ここはホテルに併設された室内プールのようだった。

 しかし、天井は崩れ落ちているようで、最早、室内なのか野外なのか分からない状態だ。

 であれば、白い煙の闇が入り込んでいるのも当然のことだろう。


 オレは、まったく視界の利かない白い闇を進むよりは、少しでも視界の効く水中を進む方がまだましと考え、いったん息を吸って呼吸を止めると、一気に水にもぐる。


 ――だから! 呼吸止めなくていいし、呼吸していないだろ!


 自分に向かって悪態をつく。

 どうしても生前の感覚から抜け出せない。


 身体は、水中でも浮いてこないので、水底を進むには都合がいい。

 建物があるだろう方向にしばらく進むと、プールの壁に突き当たる。

 壁が直線的でなく、アーチ形をしているところを見ると、競技用のプールではなく、レジャー用のもののようだ。


 水面から顔を出してみると、やはり辺りは真っ白で、そこを進むのはリスクが高い。

 どうしたものかと、すこし思い迷っていると、水底付近の壁に外れかけた鉄格子が目に付いた。

 その鉄格子は、水の配管をふさいでいるもので、その配管はけっこう大きい。


 オレは、イチかバチか配管の中を進むことにした。

 配管は、建物内に続いているだろう。

 万が一そうでなくても、戻ればいいだけのことだ。


 さすがに歩いて進むことはできないが、騒霊化のおかげで、手足には水の抵抗を受けることができるため、推進力を得ることができる。

 身体を浮かせる方向に水をかかなければならないため、少し戸惑ったが徐々にコツもつかめてきた。


 オレは、ゆっくりと薄暗い配管の中に入って行った。

 初めは気にもとめていなかったのだが、先に進むにつれ思いのほか真っ暗で長い配管に、すこし気がおかしくなりそうになる。


 それでも、何とか気を落ち着かせ進み続けると、少しずつ光が差してきて視野が開けた。


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よろしくお願いします。


トンネルを抜けると、そこは……。

次回、「68.水中の影」

お楽しみに!!

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